大江光さんの音楽

 作家の大江健三郎さんの息子である大江光さんは作曲家だ。そして、ぼくと同じように(正確にいえば知的障害)、精神に障害を抱えている。図書館で大江光さんのCDを借りて大江光さんの音楽を聞いた時に感じたことは「なんと磨き抜かれた音の粒たちなんだろう!」ということであった。ぼくも一時期、作曲家を目指していたが作曲のわざがないのであきらめた。それよりもむしろ「文字を書く職人」になることにした。

 病院に入院していた時、その才があったおかげで、多くの患者仲間と交換日記をして心と魂の交流をはかることができた。後ろ向きになりやすいぼくの性格を大江光さんはまさしく光のごとく照らしてくれる。一曲、一曲が生活に根ざした音楽なのだ。何度聴いても一音、一音が無垢なのに努力の結晶なのだ。それでいて、感情をしっかりと表現できていることが凄みを増している。

 ぼくは眠る前に大江光さんの音楽をじっくりと聴きながら眠ってみた。するとすっと眠りにつくことができた。「音楽はなんてすごい魔法なんだろう!」と感激した。

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