ハレの日のユニバーサルレストラン
明けましておめでとうございます。本年も、藤沢市市民活動支援施設をどうぞよろしくお願いいたします!
※本記事は、藤沢市市民活動支援施設情報誌「F-wave」2024年1月号の特集記事を転載したものです。紙面全体は以下のリンクよりご覧いただけます。
「子どもと一緒に外食したことがない」と聞き…
クリスマスを間近に控えた12月の日曜日、藤沢駅から程近くにあるNico's Kitchenで「ハレの日を楽しむユニバーサルレストラン」が開催されました。
以前にも取材で伺った店内(2022年4月号をご参照ください)はクリスマス向けの特別な飾り付けがされ、机の配置もパーティーらしく一直線になっていました。
参加者はバギー等に乗った障がい児者とそのご家族で、参加者に向けて「障がいなどで嚥下の難しいお子さんとご家族が、クリスマスやお誕生日などハレの日に、外食のご希望があるのではないかということで、このような企画を実施しました」と語るのは、NPO法人laule'aの若林さん。
このイベントは、NPO法人湘南食育ラボとNPO法人laule'aによって実施されました。
嚥下が難しい場合、ペースト食の持込み許可を求めることや食品をミキサーにかける必要があるなど、外食をすることに様々な壁があります。
湘南食育ラボの黒川さん曰く「この事業を始めたとき、10歳くらいのお子さんを持つ方から、子どもと一緒に外食したことがないと言われてすごく驚いた」とのことで、イベント参加者の明るい笑顔や談笑する声からも、ハレの日の食事を楽しんでいることが伝わってきました。
ハレの日に、家族で同じコース料理を食べるということ
お料理の提供はコース形式になっており、最初にテーブルに載っていたのは前菜にあたるプレートとポタージュでした。
お子さんの前に置かれている料理についても、ポタージュはそのまま。前菜はペースト状でしたが、メニューの段階で色合いも工夫されており、どの料理かわかるようになっていました。
特別な日に家族で同じコース料理を食べられることは当たり前のように思いますが、今回の参加者にとってはとても貴重です。
黒川さん曰く「事前に連絡をしても入店時に断られたり、お子さんの分だけ市販のペーストにしようとしたら持込みをとがめられた経験がある方もいます」とのことです。
参加者の方からも、「外食で同じ料理を一緒に食べられるということが本当にないので、すごくいい機会をいただけたと思っている」という感想がありました。
laule'aでは放課後等デイサービス「遊びリパークLino'a(リノア)」を運営しており、湘南食育ラボはコロナ禍が始まってからの長期休校中、保護者の負担軽減のためお弁当提供の事業を始めるなどの協力関係がありました。
そうしたつながりの中で食に関する悩みの多さに気づき、藤沢市ミライカナエル活動サポート事業の協働コースに申請、採択されました。
この日のイベントは2年間の助成期間の集大成にあたります。2年間の助成事業の中で、リノアに通うお子さんの保護者の方からご家庭での対応を聞き、県外からペースト食に関連する団体をお呼びして学ぶなどもしてきました。
ペーストにしづらい料理も… 試行錯誤でイベントを開催
当日の調理を担当していた湘南食育ラボの菊池さんによると、「日々の調理の中でペースト食に向く、向かないを考えるようにしていました。介護食としてペーストの食品は売られていますが、子供向けが少ない。唐揚げなど油の多い食べ物をいかに自然にするか、油選びから考えたりもしました」とのことです。
コースの主菜にはステーキも含まれており、こうした繊維が強い食品はペーストにするのが難しいそうです。そうしたメニュー開発や店内の飾り付けも含め、開催までの様々な試行錯誤がイベント中に活かされているのを感じました。
普通の飲食店でもペースト食が食べられるようになったら…
今後について黒川さんは、「助成期間が終わった後、どのように続けていくかが課題。今回のように決まった時期のイベントで、5家族くらいを対象に続けていくのが現実的な方法かと思っています」とのことです。
また、「今日来られているようなご家族は食の選択肢が少ない。普通の飲食店にも、ペースト食に関して少しでも取り組んでほしい」と語りました。
* * *
今回のイベントの中では、参加者の明るい表情が最も強く印象に残りました。これまでの積み重ねと2団体の良好な協働関係が、参加者の幸福や満足を強く意識した、素敵な場づくりにつながったことを感じました。
団体紹介
NPO法人 湘南食育ラボ
設立: 2013年6月
代表: 原田 ゆう子
WEB: http://www.shonan-slab.com/
NPO法人 laule'a
設立: 2015年8月
代表: 横川 敬久
WEB: https://linoalaulea.cocotte.jp/
※運営施設「遊びリパークLino'a」
ハレの日を楽しむユニバーサルレストラン
加齢による嚥下障害については知られていますが、食べることに困難さを抱えている子どもたちがいることはあまり知られていません。
ラウレアさんとのやり取りの中で嚥下に障がいのあるお子さんが外食時、中でも七五三やクリスマスなどの”ハレの日”にも家族で同じものが食べられなかったり持込も拒否されたりすることがあるということを知りました。
今回の事業を通してそれらの悩みを軽減することを目的とします。「ハレの日を楽しむユニバーサルレストラン」を協働事業とし、家族で楽しめるハレのディナーのランチ、ディナーの宅配とともに、食形態に関わらず家族で同じ食事が楽しめるユニバーサルレストラン等をプロジェクト化し障がいによって嚥下の難しいお子さんとご家族が笑顔で食生活を送れる為の活動を推進します。
2年間の実施期間があるコースなので食事を提供する場を作るだけでなく、広報活動なども行い、広く市民の方に利用していただける場所づくりを進めていきます。
※藤沢市ミライカナエル活動サポート事業 協働コース資料より