HPVワクチン、予防接種法と医薬品副作用報告制度
2回のまとめ資料から、再構成しました。
HPVワクチンと他のワクチン、副反応の比較 2023-07-15、
HPVワクチンと他のワクチン、副反応の比較 2023-08-04
予防接種法にもとづいて使用されるワクチンの安全性比較と、副反応報告についてまとめました。
資料は、「第94回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和5年度第2回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)」[1]と、4月の発表。
関連資料は、HPVワクチン東京訴訟支援ネットワーク 書庫で公開しています。[2]報告数の推移は、2023年4月[3]、7月[4]分をまとめています。
[1] 第94回副反応検討部会 資料(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00061.html)
[2] 厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会)(https://sites.google.com/view/hpvv-tsn-archives/gov#h.lo92bfppstc)
[3] HPVワクチン副反応疑い報告(2023-04)(https://drive.google.com/file/d/1nuqoQj00Ugpx1-F-YeokMBvgCj0BQLR1/view)
[4] HPVワクチン副反応疑い報告(2023-07)(https://drive.google.com/drive/u/1/folders/17npvmBpjgAmkIi0JYQaiHl-smRXPHprq)
予防接種法
この法律は、「伝染のおそれがある疾病の発生及びまん延を予防するために公衆衛生の見地から予防接種の実施その他必要な措置を講ずることにより、国民の健康の保持に寄与するとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的」としています。[5]
[5] 予防接種法 e-Gov法令検索(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000068)
疾病を2つにわけて対策を取っています。
第54回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会 資料|厚生労働省
【A類疾病】
主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点。本人に努力義務。接種勧奨有り。定期予防接種の対象。
ジフテリア
百日せき
破傷風
急性灰白髄炎(ポリオ)
B型肝炎
Hib感染症
小児の肺炎球菌感染症
結核(BCG)
麻しん
風しん
水痘
日本脳炎
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症
ロタウイルス
【B類疾病】
主に個人予防に重点。努力義務無し。接種勧奨無し。定期予防接種の対象。
季節性インフルエンザ
高齢者の肺炎球菌感染症
予防接種対象疾病 変更履歴
年 変更内容
1948 痘そう、百日せき、腸チフス等12疾病を対象
1976 腸チフス、パラチフス等を対象から除外し、風しん、麻しん、日本脳炎を追加
1994 痘そう、コレラ、インフルエンザ、ワイル病を対象から削除し、破傷風を追加
2001 高齢者のインフルエンザを追加(二類)
2013 Hib感染症、小児の肺炎球菌感染症、ヒトパピローマウイルス感染症を追加(A類)
2014 水痘(A類)、高齢者の肺炎球菌感染症(B類)を追加(政令改正)
2016 B型肝炎(A類)を追加(政令改正)
2020 ロタウイルス(A類)を追加、新型コロナウイルスワクチンを臨時接種として実施
医薬品の副作用報告
副作用とは
副作用とは、期待する薬効「主作用」に対比する言葉でしたが、有害作用を「副作用」と呼ぶようになりました。国際的にはADR(Adverse Drug Reaction)とよび、医薬品の有害作用であることをはっきり表現しています。
薬との因果関係を証明するには、多数の症例観察や実験が必要となるため、迅速な安全対策として有害事象の把握と分析を厚生労働省がおこないます。その実務は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)がになっています。
日本では市販後安全対策として、医薬品の投与後に発生した有害事象の中で、薬との因果関係が否定できないものを、製薬企業と医療従事者に報告させています。
予防接種分野では、医薬品であるワクチンの副作用だけでなく、接種行為にともなう有害事象を含めて「副反応」と呼びます。
厚労省は、医師・薬剤師に対し、予防接種法[6]での報告を呼びかけています。[7]
[6] 予防接種法(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000068)
[7] 予防接種法に基づく医師等の報告のお願い|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou20/hukuhannou_houkoku/index.html)
業者報告
薬機法[8]では、医薬品の輸入販売業者に対して、重篤な副作用は15~30日以内に報告することを義務づけています[9][10]。
重篤な副作用の定義[11]
(1) 障害
(2) 死亡又は障害につながるおそれのある症例
(3) 治療のために病院又は診療所への入院又は入院期間の延長が必要とされる症例((2)に掲げる事項を除く)
(4) 死亡又は(1)から(3)までに掲げる症例に準じて重篤である症例
(5) 後世代における先天性の疾病又は異常
医薬品副作用報告制度は、薬害の教訓で整備されてきました。[12]
厚労省が厳しく指導[13]しているため、業者は重篤事例の報告はきちんとしています。
[8] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145)
[9] 企業からの報告|独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(https://www.pmda.go.jp/safety/reports/mah/0008.html)
[10] 副作用と有害事象・副作用の重篤と非重篤|日本ジェネリック製薬協会(https://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19351.html)
[11] 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336M50000100001_20230626_505M60000100087)
[12] 薬害事件を契機に 副作用報告制度の見直しへ|温故知新114(https://www.pmrj.jp/publications/02/pmdrs_column/pmdrs_column_114-50_06.pdf)
[13] 医薬品安全対策の 最近の動き|京都府薬務課(https://www.pref.kyoto.jp/yakumu/documents/kouen5-1.pdf)
医療機関からの報告
副作用報告では、医師からの報告が少なく、改善を求める動きが続けられてきました。[14]
[14] 副作用報告、少なさに懸念~医師からの件数わずか1割|読売新聞, 2019-06-21(https://yakuyomi.jp/industry_news/190621a/)
厚労省は、HPVワクチンについて、リーフレット(2023年3月改訂版)[15]で副反応疑い報告を医師へ求めています。
[15] 医療従事者の方へ ~HPVワクチンに関する情報をまとめています~(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901222.pdf)
その中で、HPVワクチンのリスク(安全性)を以下のように紹介しています。
頻度の高いもの:接種部位の疼痛、発赤(紅斑)、腫脹
頻度の低いが重篤な副反応:アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎など
さらに、
何らかの身体症状はあるものの、画像検査や血液検査を受けた結果、その症状に合致する異常所見が見つからないことがあるとして、その症状を紹介しています。
知覚に関する症状(頭や腰、関節などの痛み、感覚が鈍い、しびれる、光に対する過敏など)
運動に関する症状(脱力、歩行困難、不随意運動など)
自律神経などに関する症状(倦怠感、めまい、嘔気、睡眠障害、月経異常など)
認知機能に関する症状(記憶障害、学習意欲の低下、計算障害、集中力の低下など)
副反応報告を増やそう
治療法の開発と、副反応被害の軽減策の推進には、副作用報告の収集が基本となります。また、医師による副反応報告は、被害者が被害救済制度で補償される原点となります。
重い副反応被害を受けた方の救済が一刻も早く進むよう、医師による副反応報告の拡充を期待します。
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