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【ラジオ原稿】富士山自然図鑑⑫「高いところはなぜ寒い?」※無料

green&brownをお聴きの皆さま、こんにちは。富士山五合目図鑑を担当します富士山ネイチャーツアーズの岩崎です。

今回は、今年の夏、富士登山ツアーに参加してくれた中学生からの質問「標高3776m、太陽に近づいているのに何で寒くなるの?」についてお話しします。
うん、たしかに・・・おもしろい質問です。
当たり前のように思っていることほど、きちんと考える機会は少ないですよね。今回はこの素朴な疑問について考えてみましょう。

未明の富士山頂、雲海の下から太陽が昇った瞬間、その熱に照らされて、思わず「あたたか~い」と声を上げてしまう光景を良く目にします。太陽は私たちに熱を届けてくれる必要不可欠な存在です。そして、その熱がなんと1億5千万キロメートルも先から発せられていると考えるとすごいパワーですね!

富士山頂から望むご来光

でも、ちょっと待ってください!1億5千万キロも離れているんです!ってことは、たとえ富士山頂だとしても海抜0メートルからたった3.7キロしか太陽に近づいていないわけで、ほんの誤差の範囲なので標高差に起因する気温差というのは、全く生じないのです。

実は、この気温差を生み出しているのは気圧差なんです。
富士山の上でお菓子の袋がパンパンに膨らむ様子を見たことがあると思います。このことから高所の気圧が低いことは理解できます。ということは、逆に私たちが暮らす平地は富士山頂に比べて気圧が高いことになります。空気は圧力がかかると分子の密度が高くなり圧縮熱という熱を発しますので温まります。加えて太陽の熱エネルギーで温められた地表面の熱を吸収してさらに温まった空気は軽くなり上昇していきます。上昇するにつれて気圧は低下し、空気の密度は低くなり圧縮熱の発生が抑えられるので気温が下がるというわけです。

平地の気圧で封されたポテチの袋は気圧の低い富士山頂では膨らんでしまう

一般的に100m上昇すると気温は0.6℃下がるとされています。海抜6mのラジオFのスタジオが気温20℃の場合、海抜2400mの富士宮口五合目は約5.6℃、海抜3776mの富士山頂は約-3℃ということになります。

科学で自然を理解すると、新たな自然の楽しみ方の扉が開きますね。

それではまたお会いしましょう、富士山ネイチャーツアーズ岩崎でした。

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