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【原文】富士下山ガイド「高鉢駐車場~中宮八幡堂跡」

割引あり

高鉢駐車場から500mほど富士スカイラインを下ったところに登山道の入り口はある。今回は高鉢駐車場から富士山修験道の肝要地の一つ「中宮八幡堂跡」を目指す下山ハイクである。「富士宮口五合目~高鉢駐車場」の続きでもあり、今の世も修験者が行き交う信仰の道だ。

スタート地点の高鉢駐車場 トイレも整備されている

スカイラインのやや急な法面から下草に覆われた岩場を下りてその道は続く。標高1600m付近は亜高山と山地帯の境界であるため、落葉広葉樹と針葉樹が混在する混交林が形成されており、とても多様性に富む。林内には倒木が何本も確認できる。天然林の中のこうした風倒木は、分解され土に還っていく過程で菌類やバクテリア、多くの昆虫などの棲み処となり、コケやシダなどが活着することで土壌の乾燥を防ぐ。小動物や小鳥たちが餌を求めて訪れることもしばしば。当然こうした小動物や小鳥を狙って中型の肉食獣がやってくることもあるだろう。倒木は森を看護する役割を担っていることから「ナースログ」と呼ばれる。自然に無駄なものは無いのだとあらためて思う。

ナースログ 森に点在する倒木

背丈ほどの谷の底を進む。頭上に横たわる倒れかけたイタヤカエデが印象的だった。若木のうちに倒れたものの、根が谷の斜面に残っていたため枯れずに生き延びた結果、上を向いた枝が光を求めて幹のように生長している。光合成によってエネルギーを作り出す植物の生存本能の強さに心動かされる。
春、若葉が生えそろったばかりの林内はとても明るい。柔らかな若葉色の中に朱華色(はねずいろ)したアセビの若芽、ミツバツツジの鮮やかな躑躅色(つつじいろ)がアクセントを添えている。

5月中旬 ツツジが新緑に色を添える

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