第九十五話:祝いの品と不可思議な夢
「あのですね、パサランを見てもふもふするのは構いませんが、私まで一緒にもふる……というか触るのは禁止です!!」
五人を正座させてお説教する。
「と言うかアルバートとカルミネはかなり悪意ありましたよね?! 私の股間を触って!!」
「あれま、バレてたか」
「やはりバレてたか」
「分かるに決まってます!!」
勃起しなかった私は偉いと思う。
「あの子は私達を癒すために贈られた子なのです。分かったら次はそういう事はしないでください、いいですね!!」
「「「「「はい……」」」」」
反省したようだ、ちゃんと。
「分かってくださったならいいです、次からは交代で、もしくは一緒にゆっくり休ませてもらいましょうね?」
そう言うと五人は頷いた。
「パサランくん、すみませんね」
「ぱさぱさ」
「……そう言う鳴き声なんですね君。でも怒らないでくれて有難うございます」
「ぱさぱさぱさぱさー」
「ふふふ、はい、大事にしますよ」
私は笑ってパサランを撫でる。
「……エドガルドさん、何言ってるか分かります?」
「いや、さっぱりだ。クレメンテ、お前は?」
「私もです……エリアは?」
「ぼ、ぼくもさっぱりです……」
「私もわからないなぁ」
「俺もさっぱりだ」
五人の話声が聞こえるが、どうやら五人には何を言ってるかさっぱりわからないようだ。
「仲が良さそうですね、良い事です」
「フィレンツォは分かるのかい?」
「いえ、全く」
フィレンツォの言葉に、ずっこけそうになる。
「ですがダンテ様の様子を見ればなんとなく分かります」
「そ、そうかい……」
「しかし、パサランのような私達の言語をしゃべれない妖精とも会話ができるとは……流石はダンテ様としか」
「そ、そうか?」
――これ神様からのチートな気がするんだけどなぁ――
『当たりだ、感謝せよ』
――ありがとうございます――
神様からの加護に感謝しつつ、私はパサランを撫でる。
「しかし、ずっと私の部屋に居てもらうのもなぁ……」
自室でセックスすることもあるので、そうなるとパサランが気まずいだろう。
「ぱさぱさぱさぱさぱさぱさぱさぱさ」
「呼び出し?」
そう言うとパサランは消えてしまった。
「……パサラン?」
そう言って手を叩くと、再び姿を現した。
「ぱさぱさ?」
「なるほど……」
とは思いつつも、これでもちょっと見られたらという考えはなくはないので、私はパサランにお願いをする。
「でも普段はここでゆっくりしててくれますか?」
私は居間をパサランの定位置にしてくれないかと提案する。
「ぱさぱさー」
「有難うございます。では、ゆっくりしていってくださいね」
そう言って私はパサランを撫でてから五人を見ると、エリアはまぁ虐待行為の所為で慣れていたっぽいが他の四人は足を痺れさせて悶えていた。
「み、みなさん、だいじょうぶ、です、か……?」
「あ、足が……!!」
「何でプリマヴェーラ王国の老人はこれが平気なんだ本当……!!」
「あぎゃ! カルミネ今私の足つついただろ!!」
「先につついたのはお前じゃないか!!」
姦しいとはこういう事かと明後日の方向に考える。
「皆さん、もう正座はいいですから、あと足がしびれてるならつつかないように」
遅い発言とは分かっているがちゃんと言っておく。
足のしびれがなくなったらしい四人はソファーでぐったりしていた。
正座はなれないと、きついから分かる。
「しかし、どうして今頃祝いの品を?」
私は疑問を口にする。
あの守護者たちが来たときに渡さなかった理由が知りたかった。
「ああ、それは……ネーロ様曰く、他の三名が好き勝手してるのを止めて余計な恥をさらさせるのを辞めさせるのに必死で忘れていた、と」
――なんじゃそりゃ――
「なんですかそれ」
思わず口に出してしまう。
「その言葉通りかと……」
――確かにネーロ様以外の三名は好き勝手にしてたが、それがある意味恥さらし的行為にネーロ様には見えたのだろうか?――
などと考えてみる。
『その通りだ、ネーロは四大守護者で最も永く存在している、故にそういう所に厳しい』
――なるほどー―
神様の言葉に納得してから、私は「戻って」息を吐いた。
「とりあえず、今日はゆっくり休ませていただきます。疲れましたので」
「施設へ行かなくても良いのですか」
「今日は施設ではなく――」
私はパサランの中に体を埋めた。
もふもふとした毛と柔らかい感触、温かさ。
心地の良い空間で目を閉じる。
「ここで休みますので起こさないでください」
そうして目を閉じた。
『これがサロモネ王の後継者か』
――ん?――
――誰だこの声?――
聞き覚えの無い声がした。
『そうだとも、サロモネの後継者だ!! しかしあの事件以降、サロモネの後継者が出るのに400年以上もかかるとは、時間がかかりすぎじゃないかい?』
『それは同意するが、それだけサロモネの力が強かったのだ』
『確かに』
――いや、この二人だれ?――
『で、聞こえているんでしょう君』
――げ――
夢かと思っていたら、夢に干渉しているものだと気づかされ、その上相手はこっちに気づいているという。
(ええ、まあ気づきましたよ……)
『そっか、じゃあ二学期の召喚基礎の講義で僕等は待ってるよ』
『ああ、サロモネ王の後継者よ』
『『彼らを赦したまえ、救いたまえ』』
「……」
目を開けて、パサランの中から起きて伸びをする。
周囲――ソファーでエドガルド達が眠っていた。
「ダンテ様、漸くお目覚めになりましたか!!」
フィレンツォが駆け寄ってきたのと、言葉に嫌な予感がした。
「あの……何日寝てました?」
「三日ほどです……それほど疲れていたとは……」
フィレンツォは額に手を当てて嘆いている。
「それだけじゃないんだけどね」
「どういうことですか?」
「実は――」
私は夢に干渉してきた謎の存在二名について話し始めた。
「……もしかしたらその方々は……」
「フィレンツォ分かるかい?」
「いえ、推測なので今は言わない方がよいと思いますので……」
「分かった。どっちみち真実なら二学期の講義で分かるだろう」
「はい」
「それはそれとして――」
「ん?」
フィレンツォはにっこりと笑っていった。
「ダンテ様は皆様に甘すぎですね、連日夜伽は控えるように皆様にも口酸っぱく言いましたので、ダンテ殿下も疲れているなら断ってくださいね?」
「はは……そうするよ」
フィレンツォの言葉に私は渇いた笑いを浮かべた。