利他の友愛、利己の恋愛(スキップとローファー感想11)
28話は志摩くんのみつみちゃんへの気持ちに焦点が当たる回
「今年お世話になったみつみちゃんにプレゼントをあげたい」とハンドクリームを選ぶ志摩くんを迎井くん達は止める
なんだかいまいち釈然としてなさそうな志摩くんを見て向井くんは思う
なんでヘタクソなのかを考えると、志摩くんは色々な女の子に好かれて「どうかわすか」の処世術には長けてるけど、(友愛であれ恋愛であれ)好きな人とのコミュニケーションとか「どう関わるか」についての経験値がないから急にみつみちゃんに関してのことになるとびっくりするほどウブになってしまうということなのかなと…
しかも志摩くん自身この時点ではみつみちゃんのことを好きだという気持ちだけがあって「どのように関わりたいか」の答えが自分でもわかってないように見える
その答えが自分でわかってるならどう行動しないといけないかはそんなに悩むことでもなく、仮に末永く良い友達で居続けたいのなら、勘違いさせるような行動はするべきじゃない
それに尽きる
男女の友愛が難しいのってそういうところなんだろうな
自分自身は「ただ好きなだけで特に何も相手に望むことはない」と思ってても
「あなたはそうだとしても、じゃあ相手がもしあなたと付き合いたいと言ったらどうするの?」という問題が絶えず付きまとい続ける
それが現実に起こった時、イエスと答えたら二人の関係はたちまち恋愛と呼ばれるものに変容してしまうし、ノーと答えればそこまで培ってきた友愛まで損なってしまい得る
そうやって「お互いの利己はお互いの利他と一致するのか?」という命題が始終つきまとってしまう、その点においてどうしても利害がある関係になってしまう
(異性愛者の)同性の友達はその検討をしなくていい前提があるから、ピュアに利他な友愛の関係を築きやすいっていうのはそれはそうだ
そしてまさにその友愛について描かれているのが前回のnoteでも触れた26話と27話だ
だから27話でまことちゃんとゆづちゃんのあまりにも美しい友情関係を描いた直後にこの志摩くんの内面や志摩くんみつみちゃんの関係性に焦点を当てた話が出てくるっていうこと自体が…かなり残酷…じゃない!?!?
27話のゆづちゃんと28話の志摩くんは対比の構図になってる
ひとつもそうするメリットはないのにただただまことちゃんのために神保町にまでいきなり来るゆづちゃん、一方志摩くんは「本当にみつみちゃんのことを思うなら良いこととは言えないかもしれない」と散々迷い、それでも結局「みつみちゃんにプレゼントをあげたい」という自分の気持ちの方を取ってプレゼントを渡す
そのせいでみつみちゃんとの純粋な友愛の関係性が壊れてしまうかもしれないリスクを承知の上で
渡した後の
という志摩くんのモノローグ
「完全な利他でいられなくなってしまったらそれはもはや恋愛のはじまりだ」
ということがここでは示されていると思う
少女漫画的な感覚で言えばこのシーンは本来は「志摩くんの恋心の目覚めが描かれた胸キュンシーン」として回収されるのみのところだけど、やっぱりあの27話でのあまりにも美しく素敵な友愛の物語を見た後だと特に、志摩くんのこの「利己の感情」がほんのりとグロテスクなものであるように感じてしまう
みつみちゃんの方は25話時点で「今はこれでじゅうぶんだなぁ」って言ってたのに
だからこれは
ここからみつみちゃんと志摩くんが幸せな関係を築いていくためには、「友愛以上の友愛としての恋愛関係を築いていく必要がある」ということの示唆であるようにも思った