純真無垢でいられなくなってしまったらもうヒロインにはなれない?…「スキップとローファー」感想1・江頭ミカちゃんについて
恋や青春、若さがいかに暴力性をはらんでいるかということに気づいた日から上手く少女漫画が読めなくなってしまったし、恋からも青春からも若さからも降りてしまったという感覚があった
17歳の頃
世は恋愛至上主義時代で雑誌全盛、男性誌女性誌問わず「モテ」という単語の踊る表紙がコンビニに溢れる
クラスメイトが嬉々として語るジャニーズの話にもごくせんROOKIESテレビドラマの話にもなんにも乗れず、学校どころか世界全てからあぶれている心持ちになりながらでもそんなことすらもはやどうでもよく、ただただ毎日眠たくて仕方がなかった女子高生の頃の私に贈りたい漫画、それが
「スキップとローファー」です
そしてそんな高校生が大人になって相変わらずなんとなく青春漫画や恋愛漫画を敬遠し続けていたのに、夢中で全部見てしまった作品、それが
「スキップとローファー」です
(アニメ版も原作の真髄やストーリーを大切にしつつアニメだからこそできる表現によってさらにスキップとローファーの空気感を強く立ち上げてる感じですごくイイ)
そんなスキップとローファーにどハマりしてしまった最近、本作のことを何度かに分けて綴っていきたいと思います
※以下は作品のネタバレを含みます※
江頭ミカちゃんについて
第一話の高校の入学式の日。みつみちゃんはひねたところがなく自分の夢や目標に対してまっすぐで、そして純粋に仲良くなろうと思って後ろの席の子に話しかけられるんだけど、後ろの席の江頭ミカちゃんはみつみちゃんを一瞬見た後、目をあわせずに「うん、よろしく~」とだけ返す
その後、クラス1のイケメン志摩くんとみつみちゃんが仲良くなろうとしてるのを見て、急にミカちゃんは「私にも連絡先教えて」とみつみちゃんに話しかけてくる
これってみつみちゃんの目線からクラスを見ている読者的には「わ~ちょっと打算的でやな奴かも!!」なんだけど、でももし自分がみつみちゃんと本当に何の関係もない赤の他人だったらどうかなというと、まず最初の「特に仲良くしたい理由がない他人に対してむやみやたらに愛想よくしない、でもちゃんと挨拶は返す」ってまあ大人としてはごく普通の(きちんと挨拶を返しているだけむしろまだ誠実な側の)処世術な気もする。
そこから志摩くんに近づきたいがためにみつみちゃんと仲良くしようとする部分だけ抜き出せばやな感じだけど、その後みつみちゃんとミカちゃんがだんだんと普通に仲良くなっていく過程を思えば「まあ、最初はそれがきっかけだったってだけだよね」とも思える
そう、ミカちゃんは高校1年生にして、かなり大人側なのである
とは言っても打算的になりきれず、悪役に徹することもできない、マジで嫌な人達に対して「ああはなりたくない」というプライドもある
だからいつもちょっと割を食ってしまう、しかも「そのために自分が割を食ってしまった」ということにも気づけてしまう聡さがある
大人ほどに要領よくなれず、でも同級生より大人びているがゆえに孤独になってしまう
その不器用さがどこまでも愛おしい女の子なのである
本作のほんとの大人のナオちゃんが、ミカちゃんをほっとけない気持ちがよくわかる
ミカちゃんは「スペック高い彼氏が欲しくて」みたいな能書き付きで志摩くんのことが好きというけれど、ほんとはそんなの関係なくふつうにただ志摩くんのことが好きなだけなんじゃないかという気がする
大人びたところのあるミカちゃんの気持ちをちゃんと見透かしてほんとの意味で理解できるのは同級生で志摩くんだけなんじゃないか、という気が傍から見ていてもするから、本人からしたらもっとだろう
(でも志摩くんサイドからすると、「相手の意図を必要以上に理解できてしまう+相手にも自分の意図を察されすぎてしまう関係性」に感じる億劫さや疲れみたいなものがある気がして、そこが志摩くんがミカちゃんを選ばない理由の一つなんだろうな~~という気がしてそれもまた切ない。もしかしてミカちゃんが志摩くんを好きになる理由と全く同じ理由で志摩君はミカちゃんを選ばない、ということが…)
ちょっと話しが逸れてしまった
つまりそんなミカちゃんが単なるライバル、単なる悪役ではなく、読者(の私)が「どうか幸せでいてほしい」と祈ってしまうほどしっかり作中で内面や過去を掬い取って、本作のメインキャラクターの一人として存在していること自体が救いになっている人は一杯いると思う
純真無垢でいられなくなってしまったらもうヒロインにはなれないのかな
そんなはずないよね
っていう可能性をミカちゃんは私達に見せ続けてくれている