せんす インタビュー「ミスiDってもがけばもがくほどチャンスをもらえる場所だと思うので」
声優でメイドのせんすちゃんを最初に知ったきっかけは、去年友達に「今度初めてフェリシー(正統派メイドリフレクソロジィ)に行くんだよね」と話したら、「せんすちゃんっていうめっちゃ可愛いメイドさんがいるよ」と聞いたことで、そしてその初めてフェリシーに行った日がたまたまミスiD2020のセミファイナリスト発表の日でした。だからせんすちゃんは去年のミスiDがはじまった最初から私にとって印象が強かったです。
せんすちゃんは二次元から飛び出したような線の細く可愛らしいルックスとは裏腹に、負けん気が強い一面があったり、でもだからと言って虚勢を張らずに率直に自分の内面を語れるような強さも同時に持ち合わせていたり、そういうところが強く可愛く、そして大阪育ちを感じさせるサービス精神旺盛なコミュニケーションのスタイルや、意志を感じる綺麗な声も魅力的です。そんなせんすちゃんに正統派メイドリフレクソロジィのフェリシーで働くようになるまでのことや、ミスiDを経ての今日までのことについてお話を伺いました。
正統派メイドリフレクソロジィ「フェリシー」で働いている理由
藤林檎 せんすちゃんが、正統派メイドリフレで働くようになったきっかけについて教えてください。
せんす 理由の半分は、大阪に住んでいた頃に、専門学校の友達から「メイドリフレ」ってところがあるから来ない?っていう誘いがあったことです。もう半分は「こういう場所があるんだ」と知った後にメイドリフレについて調べていたら、とあるお店の公式HPで所属メイド一覧を見た時にすごく顔が好みの女の子がいて「なんだ?この可愛いおなごは。…ここだ!」と言って、そのままそこで働き始めました。笑
藤林檎 なるほど。笑 メイドとかそういうコンセプト系のお店って、整体やリフレよりも飲食系のお店の方が断然メジャーじゃないですか。そこでせんすちゃんが飲食系じゃなくて整体とかリフレとかの方向でメイドとして働きたいって思ったのは他に何か理由がありましたか?
せんす 元々私は大阪の児童養護施設にいて、そこの保母さんがバリ式のマッサージができる人だったんですよ。その人が私の師匠なんですけど。施設にいる時にみんなの身体をほぐしてくれたり、ストレッチしてくれたりしてたその人にそれを習って、私自身も地域のボランティアとしておじいちゃんおばあちゃんのハンドマッサージをするって経験とかがあったんです。だから「ああ、じゃあやってみたいな、メイドリフレクソロジィ」って思ったっていう理由もありました。
藤林檎 そういう理由もあったんですね。そしてそうやってそのお店で働き始めて、その後せんすちゃんは声優になるために上京するんですよね?
せんす そうです。専門学校に在学している時に声優事務所のオーディションを受けて、東京のとある事務所にお世話になることが決まったんです。でもさすがに最初からそれだけでは生きていけないのは分かっていたので、「何かしら別の仕事もしないといけないな。だったら大阪で手に職を付けたメイドリフレを選びたい。メイド、好きだし。」と思って上京前に、今もお世話になっているフェリシーにメールをして「4月から上京する予定でして、面接を受けさせていただきたいんですけれども、ご都合いかがでしょうか。」ってやりとりを事前にしていた、という流れでした。
藤林檎 ではもうほんとにしっかり最初からフェリシーを探し出してた訳ですね。
せんす そうですね。フェリシーは、大阪でも結構有名でしたし、元々その大阪のメイドリフレで働いていた頃にお客さんからも話を聞いていたので。「フェリシーってところがめちゃめちゃ健全で良いらしい」と。
藤林檎 うんうん。正しい情報ですね。
せんす 「じゃあそこだ!もしそこの面接に落ちたら別のところにしよう」と思ってフェリシーを受けて、そしたらそのまま働けることになりました。
藤林檎 上京してからこの2年、フェリシーで働いてみての感想としてはいかがですか?
せんす ほんとにめちゃめちゃ世話になりすぎて、もはや身体の一部と化してしまっていると言っても過言ではないところがあります。
藤林檎 コロナのフェリシーへの影響はどうですか?
せんす 感染者数の数に応じて、お客さんが増えたり減ったりって感じです。やっぱり美容室とかもそうですけど、リフレって、人に触れるってところで警戒されがちじゃないですか。だからまず感染症対策を万全にして、その上で「感染症対策をきっちり行っています」ってことをしっかり伝えつつ、どうしたら今のご時世であっても安心してリラックスできる場所をご提供できるかっていう所をみんなで模索している最中です。
藤林檎 せんすちゃんから見てフェリシーのオーナーの光(あきら)さんってどんなリーダーですか?
せんす 光さんはもうほんとにめちゃくちゃがんばってて、大好きなんですよ。笑 すごく一人一人に親身に接してくれてるっていうこともあるし、経営者ですけど現場に出ているメイドでもあって、働いてるみんなの気持ちも最大限汲み取ろうとしてくれてます。経営に現場にと大変なのに、さらには事務仕事もしっかりこなしていて。こんなにホワイトなところで私は今まで働いたことなかったです!
藤林檎 私も一回だけ光さんに施術していただいたことがあって、その時に光さんからフェリシーの成り立ちとか今日までに至るまでのお話を伺ったんですけど、そこからして光さんの人柄をとても感じて、すごいなと思いました。
せんす でもそうやってみんなのためにお店を作りつつも、自分自身もそこでちゃんと楽しもうとしてるところが私は一番好きかなと思います。笑
藤林檎 ああ、なんかわかる気がします。笑 光さんのSNSを見てても、他のメイドさんと一緒にお仕事できることを光さんご自身がすごく楽しんでいらっしゃるように見えます。
せんす なんか「人のために」ってずっとし続けると疲れちゃうじゃないですか。
藤林檎 何事もそれだけではずっとは続けられないですよね。
せんす そこのバランスをちゃんと取ってるのは、精神衛生上もすごくいいことだと思います。笑
ソロアイドルの松林てろるさんを好きになるまで「初恋の話をしてるみたい」
藤林檎 せんすちゃんと言えば、ソロアイドルでミスiD2018ファイナリストの松林てろるさんの大ファンっていうイメージもすごく強いですが、元々その前から女性アイドルはお好きだったりしたんですか?
せんす それまでに一度もアイドルという存在を推したことがないんです。推したアイドルは人生でてろるさん一人だけです。
藤林檎 ちなみにてろるさんのことは最初どういうところを好きになりました?
せんす 最初は完全に見た目でした。私はたぶん気の強そうな見た目の女性が好きなんですよ。笑 だからてろるさんの見た目も、気が強そうだったり人に頼るのが苦手そうだったりする感じがすごく好きです。そこからてろるさんを知って行く内に、見た目だけじゃなく中身も結構ほんとにそんな感じなんだってことが分かってきて。
藤林檎 なるほど。最初見た目から入って、そこからさらにどういう風にてろるさんのことを好きになっていきましたか?
せんす 実はその後てろるさんと同じ職場でアルバイトをしていた時期があって、てろるさんは先輩にあたるんです。一緒に働いていた時期に後輩って立場からてろるさんを見た時にも、すごく仕事に対してストイックな姿勢で取り組まれてて、そういうところも尊敬できるなっていうことと、「自分はこういうことがずっとやって行きたいんだ」っていう芯がてろるさんにはあって、その芯の部分のお話を聞かせてもらった時に「だから私はこの人を好きなんだ」と改めて思いました。
藤林檎 ではてろるさんをより好きになる最初の流れとしては、SNSでの発信とかてろるさんがやってるアイドル活動を通してというよりも、そういう風に同じ職場の同僚って間柄でお話してる内により好きになって行ったって感じです?
せんす そうですね。あとは活動の範囲を広げようとがんばっている姿を見たりとか、その後もたまに一緒にごはんに行かせてもらったりしている中で、「好きだ!」って。笑
藤林檎 なるほど。そういう流れなんですね。
せんす めっちゃ恥ずかしい。初恋の話をしてるみたい。笑
ミスiDへのエントリーのきっかけ「どうしたらいいかわかんないけど、それでもあがきたい、チャンスが欲しい」
藤林檎 せんすちゃんがミスiDにエントリーしたのは2019年に開催されたミスiD2020で、これは上京してフェリシーに入店した1年後ってことになるんですよね?
せんす そうですね。
藤林檎 ミスiDを最初に知ったのはやっぱりてろるさんがきっかけって感じですか?
せんす はい、てろるさんがエントリーしたことをきっかけに知りました。
藤林檎 そこからどうして自分もミスiDにエントリーしてみようってなりました?
せんす 上京してからしばらく声優事務所でお世話になって、レッスンを受けたり色々してたんですけど、諸事情によりそこを離れざるを得なくなってしまったんです。でもそこでフリーで活動していくっていう頭にもなれないぐらいちょっとそのことがショックで「どうしよう」ってなってしまって。でもどうしたらいいかわかんないけど、それでもあがきたい、チャンスが欲しいと思って、絶対落ちるけどミスiDに応募してみるかって思ったのが一番大きいです。あとは友達からの勧めもあって。
藤林檎 声優業にちょっとでも繋げたいっていうのが大きな理由だったってことですね?
せんす そうですね。自分的には年齢も年齢だしと思ってたので。
藤林檎 てろるさんが先にミスiDを受けていて、結果としてその後に自分もミスiDを受けるという状況になってしまった訳ですけど、そこで遠慮というか、迷いみたいな気持ちはその時抱かなかったですか?
せんす てろるさんを変わらず「好きだ」と言い続けることに対しての迷いはなかったんですけど、「実際どう思ってるんだろう」っていうのは気になってました。でもカメラテストを受けたぐらいのタイミングでてろるさんに連絡を取ってミスiDにエントリーしたってことを伝えた時に、「ほんとに応援してるよ」ってことを直接言ってもらえたのがすごく大きかったです。「私にできることがあればやるからね」っていう風に言ってもらえたり、「チアーズはこんな感じでやったらみんな見てくれると思うよ。」っていうことまで教えてくれたりして。だからあまりそれ以降は悩まなかったです。
藤林檎 そんなアドバイスまで。優しい。元々てろるさんと直で連絡が取れて率直に話が出来る間柄だったってことはほんとによかったですよね。
せんす よかったです。
今までそれを話すことによってよくないことしか起こらなかったんですよ
藤林檎 ミスiDにエントリーしてみて、エントリー期間中は何か変化がありましたか?
せんす それまで私は声優業との兼ね合いもあってネット上にちゃんとした顔写真をほとんど上げていなかったんですけど、ミスiDを受けるならネット上にちゃんと自分の顔をUPしようと思って、ツイッターとかで顔出しをし始めたんです。それでそれは自分としては、変化、ど変化って感じでしたね。
藤林檎 それまで顔出ししたことがなかった人からしたら、それはめちゃくちゃ大きな一歩ですよね。顔を出す前と後で何か変化はありましたか?例えばフォロワーの人の反応とか。
せんす それまでずっと顔出ししてなかったところに急に顔出しし始めたけど、意外と受け入れてくれたなっていう。
藤林檎 そこは不安があったんですか?
せんす やっぱり不安はありましたね~。「イメージと違う」とか、「ブスだな~」とかって反応があるだろうなと思っていたので。
藤林檎 せんすちゃんもそんなことを考えるんですね。
せんす いやー結構、ネガティブです。笑
藤林檎 ミスiDのプロフィールに「外見の良さを活かしていきたいと思います。」と書いてあったから、全然抵抗がないものかと思ってました。
せんす そこに関してはほんとに、書類選考用のプロフィールを出すときに「絶対落ちる」と思ってたんですよ。でもそうは思いつつも「ここはマジで振り切ろう!」と思って書いて。笑 っていうのと、あとは完全に自己暗示的な意味合いもあったので。
藤林檎 そこはそう書くことで選考委員の人に「会ってみたい、カメラテストに呼んでみたい」と思ってもらうためのせんすちゃんなりの戦略の一つでもありましたか?
せんす そうですね。それもあります。まあほんとにマイナスの部分は出さない方がいいじゃないですか。
藤林檎 「マイナスの部分を出した方がいいのか、出さない方がいいのか」に関しては、結構ミスiDに置いては「こういう家庭環境で」とか「こういう病気を持っていて」みたいなことを前面に出して臨む人も多いけど、そんな中ででもせんすちゃんはそういう風な戦い方はしたくなかったってことですよね?
せんす 私自身もそういう話題があるっちゃあるけど、自分からそういう話をしたい訳ではなかったので。元々暗い話で場が暗くなるようなことが苦手なんですよね。あとそういうことを話して何かメリットがあるなら全然話すんですけど、でも私今までそれを話すことによってよくないことしか起こらなかったんですよね。声優事務所のオーディションでめっちゃ良い感じに進んだのに、児童養護施設でうんぬんとかを話したことによって落ちてしまった、っていう経験も実際にあったりして。
藤林檎 ではそういう事務所での面接の感触などもあって「自分の生い立ちの話はしないようにしよう」と思うようになったってことですね。
せんす そうですね~。マイナスなことは言わないように。あと必ずしも「ミスiDではマイナスのことを話した方が」っていうものではないことをみんなにわかって欲しいって気持ちもありましたね。
藤林檎 ただ私がなんとなく思ってたのは、メイドさんが公の場に出る時って、キャラクターとしての自分の像を守りたいがゆえに、自己開示を嫌がる人が多い印象が漠然とあったんです。だからせんすちゃんもどちらかといえばそういうタイプの人なのかなあと思って最初の頃は見ていて、でも去年の吉田豪さんMCで胃下舌ミィさんとハ息子(ハムスターの息子に産まれて良かった)さんとやられていたトークショーを見たらすごくせきららに自身の生い立ちのことを話されてたじゃないですか。「あっ、そういう自己開示もやれる女の子なんだ!」っていうのがすごく意外だったし、鮮烈に感じたんですよね。
せんす いや~あれはかなり迷って。迷って迷ってギリあそこまで出しちゃったって感じです。笑 別に全然話すこと自体は良いんですけど、あの時期は自分の生い立ちを自分の中で上手く噛み砕けてなかったので。あとそれまでそういう話を人に話す機会も全然なかったですからね。友達にすらあんまりそのへんの詳しい話はしたことないので。親がこういう人で、うんぬんかんぬんで~みたいな。なんか、怖くて。笑 「こいつ可哀そうな奴」って目に変わるのが怖くて。
藤林檎 そうそう、だからこそそういうせんすちゃんがあそこでああいう風に話せたことがほんとにすごいなあって思ったんですよね。でもあれって事前に「こういう話をしましょう」って打ち合わせてた訳じゃないんですよね?
せんす 直前に楽屋で言われました。それで「マジ!?みんなそんな感じで話すの!?どうしよう~~~~~~ウオーーーーーー話すか!!!!」ってなって。笑 でも結果的にはみんないい方向に私の話を捉えてくれて。すごく安心したんですよ。
藤林檎 「率直な話をしているこのメンツの中で、自分だけ上っ面の話をしてたら変な感じになるかも」的な職業意識みたいなものが土壇場で無意識に働いたりもしてたんでしょうか。
せんす それもありますね。笑 さすがにね!それだけめっちゃすごい話を周りが話してたので。笑 でも私もほんとにめっちゃ迷ったんですよ!あの場でああいう話をするかどうか。でもあれでもまだマイルドに話した方なんで。話してて泣きそうになりつつそれを堪えながら。笑
藤林檎 ちなみにあのイベントはなんでやろうってなったんですか?
せんす 元々は胃下舌ミィさんとそのお知り合いのイベンターの方の間で、「気になる人を呼んでトークイベントをやりませんか?」って話になったところから始まったらしいんですよ。
藤林檎 せんすちゃんは完全に呼ばれる側だったんですね。
せんす そうです。ハ息子&せんす&豪は。笑
藤林檎 「豪は。」笑 めちゃめちゃ良いメンツでしたよね。
せんす めっちゃよかったですね。ほんとに。私があそこまでがせきららに話せたのも、一緒に出たのが胃下舌さんとハ息子さんの二人だったからっていうのは大きいですね。二人のお話も、ほんとによくここまで生き延びてきたなあって思うような話なのに、二人ともすごくそれをさっぱりと話して「それよりも今を楽しんでる」みたいな感じだったじゃないですか。それで「そうだよな、大事なのは今だよな」って、そういうメッセージを二人から受け取って、だから私もちゃんと話せたっていうのはありますね。吉田豪さんもほんとに良い方で、私がああいう風に話せたのは吉田さんのおかげでもあるっていうのももちろんですし。
藤林檎 せんすちゃん的にはあのイベントはそういう感じだったんですね。それ以外にエントリー期間中に思い出深いこととか、あります?
せんす 思い出深いことは、私、さっきもお話しした通り、可哀そうな目で見られたりとか、今まで自分に向けられてた目と違う風に見られるのが嫌っていうのがあって、あんまり自分の生い立ちについて誰にも詳しく話したことがなかったんです。でもミスiDって、色んな女の子が自分の生い立ちを話したりとか、これから自分はこうやって行きたいんだ!っていうのをバーンとぶつけてるじゃないですか。
藤林檎 確かに。
せんす それがすごく心地よかったんです。今まで声優のオーディションとかを受けてる中では、「周りはみんな敵」って感じだったので、そうじゃないものに参加したのって考えてみれば初めてでした。ほんとに他とは違うオーディションだなっていうことを感じましたね。
藤林檎 すごく少ない限られた席をめちゃくちゃ大人数で争うという意味で、熾烈な戦いがあるであろう声優の世界に身を置いていたせんすちゃんが、「自己開示はしない方が良い」って考えになっていたことはすごくわかる気がしますし、でもミスiDを経たせんすちゃんはそこで自己開示への抵抗感が薄まっていったことなのかなと思って。
せんす そうですね。自分の思ってることや自分の過去をちゃんと話すのはそんなに怖くないなって思わせてくれたっていうのはあると思います。
藤林檎 それが出来るのは強いなと思います。自己開示を恐れないこと。
せんす でも女性声優さんは特にだと思うんですけど、あんまり自分のしんどかったこととか、生い立ちとかは話さないような感じなんです。さっき言った事務所うんぬんのこともありますし。コンテンツとして生きて行く上で、あんまりそういう風に見られないようにしないといけないんだなっていうところは実際あるとは思うので、難しいところです。
藤林檎 「言えるけど、言わない」ができるのはそれはそれでやっぱり強さだなと思います。声優ってお仕事を含め、やっぱり演じることって自分自身を隠すことのように見えて、でも実際は自分の一番見せたくない内面すらさらけ出す覚悟を持っていないと出来ないことですよね。
せんす それはほんとにそうです。演技って自分の持ってる引き出しから出てくるものなので、それをちゃんと表に出せないと出来ない仕事ですよね。
声優のせんすちゃんから見たVTuber
藤林檎 特に企業所属のVTuberの方々を見ていると、やっぱりVTuberって声優志望の人や新人声優さんの新たな職みたいな側面もなんだかんだでかなり強いんだなということを思うんですけど、せんすちゃんは今までに「VTuberやりませんか」と誘われたことはないですか?
せんす めちゃめちゃあるんですよ。バーチャルYouTuberって存在が全然有名じゃない頃に、とある企画のオーディションを受けないかって言われて、私も全然何をすればいいものなのかよく分かってないままそれを受けて、結果ダメでした。ただ、今となっては確かにVTuberは声優がやったらウケるコンテンツだなっていうのは思いますね。私もいまだに結構誘われます。
藤林檎 その後は断ってるんです?
せんす 「ちょっとこれは自分がやりたいこととは違うな」と思って。
藤林檎 なるほど。それでそういう若手の声優さんとか声優志望の人の立場もわかってるせんすちゃんからは、VTuberってどう見えてるのかなっていうこともちょっと聞きたかったんです。
せんす アバター的な位置付けだと私は思ってるんですけど。でもアバターとして使ってる人と、そのキャラクターを演じてる人との両方がいるし、見る側の二分化もありますよね。「バーチャルアバター姿の人はみんな、キャラクターを演じてくれるはず」と思ってる人が、純粋にご本人のアバターとして存在しているバーチャルの人を見ると「なんか違う」って感じ方をきっとするじゃないですか。そこらへんが難しいコンテンツだなとは思いますね。
藤林檎 ではせんすちゃん的には「VTuberは声優向きの仕事ではあるかもしれないけど、声のお仕事とは思っていない」って感じです?
せんす そうですね。私は声のお仕事とは思ってないですね。別に声が良いからとか、演技が良いからっていうので成り立つものじゃなくて、完全にその人の人となりで成り立つものだと思うんです。その人の人格や動画の編集センス、やってる企画が面白いとか可愛いとか、そういう能力をより特化させるためのものだなと思います。その能力を世に出すために、自分にとっていらないところを省いたものって感じ。
藤林檎 それはすごく的確な見方かもしれないです。
せんす 声優とバーチャルYouTuberの存在の親和性はすごく高いとは思うんですけど、だからと言って声優じゃなければならないってことはないと思います。むしろそれ以上に色んなやり方の可能性を秘めてるコンテンツだし、「誰にでもそれになれる」ってところがいいですよね。おじさんがお姉さんになってもいいし、お姉さんがおじさんになってもいい訳じゃないですか。そこを見出せたところはすごくいいなっていうか。だから私もアバターとしての憧れはあります。
藤林檎 なるほど。ちなみに普通に視聴者としてVTuberを見ることは日頃ありますか?
せんす 自分が気になる人を探してはちょこちょこ見たりしつつ、結構周りにもVTuberを好きな人が多いので、そこから「そういう人がいいんだね」と知ってちょっと覗いたりもしてます。だから全然馴染みはありますね。
藤林檎 ではほんとに単純に自分の仕事はしようとは思わないってだけで、だからと言って嫌悪感があるとかそういうことではないんですね。
せんす 全然好きです!
最終的にはやっぱり声優としての活動を主にしたい。ほんとにアニメに出たいです!
藤林檎 ミスiD2020で最終的にせんすちゃんは岸田メル賞を受賞して。受賞した時は感想として、どうでした?
せんす カメラテストにも最終選考にもいらっしゃらなくて、一目も会ったことないのに受賞させてもらって、「見てくれてたんだ」っていう。笑
藤林檎 いまだにミスiDの公式HPには岸田メルさんからせんすちゃんへの選評は付いてないですけど、なんで選ばれたかについてはご本人からは聞きましたか?
せんす ツイッターにちょっと書いてくださってました。キャラクターが良いのと、ビジュアルが僕の描く絵に似てるっていうのと、話してる時の顔の筋肉の使い方が僕に似てるっていうのと。笑
藤林檎 あとハ息子さんが一時期毎日のように「岸田メル先生へ せんすちゃんの選評を書いてください♡」とツイッターに書いてくれてましたよね。笑
せんす でも2019年はマジで忙しかったらしく、「申し訳ないです。書きますんで必ず。」ってメッセージはいただきました。笑 ありがとうハ息子さん。笑
藤林檎 そういえばハ息子さんはどうしてあんなにせんすちゃんのことを好きになったのかとか理由を聞いたことありますか?
せんす え、み、見た目だと思ってます…。笑
藤林檎 当時は意外な2人が仲良くなったなと思ってました。笑
せんす ハ息子さんめっちゃ好きですよ。
藤林檎 せんすちゃんはハ息子さんのどういうところがいいなって思います?
せんす う~ん。自己開示できるところ。芯のある人が好きなんですよ。自分がどうにかなりたいって思ってるのを、ちゃんと前に出してて、それが良い!そこが好き。あと女の子にめっちゃ優しいし。
藤林檎 この1年で岸田メル賞を取ってよかったことって何かありますか?
せんす 人脈みたいなところがそこから自然と広がったのかなってことは思います。あとは受賞したっていことを色んなところで書きやすいですね。岸田メルさんはオタクなら誰でも知ってる方ですし、みなさんから「あの岸田メルさんの個人賞!」と思っていただけるのは大きいです。
藤林檎 あとせんすちゃんはミスiDから写真集も出したし、ミスiD公認のYouTubeチャンネルも始まって。まず写真集に関しては、どのお写真もめちゃくちゃ良いんですけど、特に後半のお写真は露出度が高くてびっくりしました。
せんす そうなんですよ。私もびっくりして。笑
藤林檎 あのぐらいの露出度で行きましょうって決まったのは打ち合わせの段階ですか?
せんす 打ち合わせの時に聞きましたね。
藤林檎 ほんとに嫌だったら「嫌です」とも言えたとは思いますが、そこはどうでしたか?
せんす 写真集のお話をいただく前に小林さんとお話する機会があって、その時に「固定概念に囚われず、何でも挑戦してみた方がいい」っていうのをアドバイスしていただいてたんです。私は「声優だから!!大事なのは声だし!!」みたいな感じで、めちゃめちゃ頑固なところがあるんですけど、「そうじゃなくて、最終的にそこに繋げていくつもりで色んな事に挑戦してみた方がいいよ」ってことと、「せんすは意外と3サイズ見ててもスタイルそんな悪くないし、いずれ週プレとかそういうのにも出れたらいいね。」っていうことを言っていただいていたってことがあったので、「やるか!!」となって。
藤林檎 ではやっぱりそこはちゃんと「やるぞ!!」って思わないと出来ないことではあったってことです?
せんす ほんとにそうですね。笑 声優さんってまず初めからはあんまり脱がないんですよ。ちょっと売れてからだったらわかりますけど。「脱いだ後に売れる!」っていうのはあんまり聞かないってところもあるので。笑
藤林檎 なるほど。でもすごいですよね。この一年でミスiD事務局経由でYouTubeチャンネルと写真集とって2つも仕事して。
写真集URL https://www.amazon.co.jp/dp/B08HMW284F/ref=cm_sw_r_tw_dp_x_Drc2FbBP86TBR
せんす 写真集に関してはどういう経緯で私に決まったのかは私も分からないんですけど、YouTubeチャンネルに関しては、元々私がツイキャスを勢力的にやっていた時期がありまして、それを小林さんが見てくれてたらしいんですよ。そこから「せんすはアドリブにめちゃめちゃ強いし、すごく可愛いし、なんかやって欲しい」って言ってくださったみたいで、それをきっかけに私に話が来たと聞きました。
藤林檎 YouTubeの動画の方は企画からせんすちゃんがやられているんですよね。
せんす そうなんです。「この部分はちょっとこの方にお願いしたいな~」っていう、企画のところからやりました。
藤林檎 なるほど。そういう流れだったんですね。
せんす そのきっかけになったツイキャス配信に関しては、コロナ禍になってから、家でぼ~っとしている訳にはいかない、なんらか前に出れるようにして行きたいと思って始めたので、それが今に繋がってよかったなって思います。「過去の自分のがんばり、ありがとう」と。
藤林檎 今後の目標はどんな風に考えてますか?
せんす とりあえず今声優の活動をしたいって言いつつ、下準備がほんとにできてないので、YouTubeの企画の編集を一通り終えたら、その下準備をしてYouTubeチャンネルの動画も使って事務所に売り込んだりしていこうかなと思ってます。最終的にはやっぱり声優としての活動を主にしてお米を食べて行きたいです。ほんとにアニメに出たいです!
ミスiDでもがいてよかった
藤林檎 特撮オタクとしても有名な、ミュージシャンの大内ライダーとはどういうきっかけで一緒にイベントやることになったんですか?
せんす あれは、私の配信に大内ライダーさんが来てくださったことがきっかけです!
藤林檎 もしかして「特撮が好きな、ミスiDで岸田メル賞を取った女の子」ってところがフックになって来てくれたんでしょうか。
せんす たぶんそれでフォローしていただいたんだと思います。それでその頃たまたま、「みんなコロナ禍で落ち込んでる中、やっぱりこういう時に元気づけてくれるのは、特撮ヒーローの歌でしょ!」と思って、特撮楽曲DJ配信をやったんです。それを見てくださって「なんだこいつは」ってなったらしく、「特撮のイベントを一緒にやりませんか?」ってご連絡をいただいて。私はずっと特撮が好きですけど、まさか特撮に関わるイベントがやれるとは思ってなかったですし、それも受賞したからこそ声をかけてもらえたことだと思うので、岸田メル先生にはほんとに感謝しないとって感じですね。
藤林檎 ではせんすちゃん的にはほんとにミスiDに出てよかったってことですよね?
せんす そうです!行動する勇気ももらったし、チャンスを掴む力をいただいたと思うんで、もがいてよかったっていう。ほんとにミスiDってもがけばもがくほどチャンスをもらえる場所だと思うので。
藤林檎 私もこれからミスiDで最終審査を受けるので、今日はすごく勉強になりました。
せんす よかったです!ほんとに、みんなに勇気を与えられるような存在になりたいので。
藤林檎 全然すでにそうなれてると思います。せんすちゃんの歩んできた人生の上で、今こういう風に前向きに色んなことに取り組まれている姿はこれからも必ず誰かに勇気を与えると思います。私もその1人ですし。今日はほんとにありがとうございました。
せんす ありがとうございます~!楽しかったです。
せんす
ツインテメイド型新人声優/ミスiD2020 岸田メル賞
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