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"純粋でまっすぐに"な主人公でいられなくなってしまった女の子を、物語から排除しないということ(スキップとローファー感想4)

今回は第8話について

クラス優勝を目指すみんなのために、運動が苦手なみつみちゃんがバレーの練習をがんばる回!
と同時にミカちゃんが"そうなっていった"理由について触れられる回でもあります

ラッキーだったね岩倉さんは
そのまんまで受け入れてもらえて

私みたいに食べたいもの我慢して
キラキラした部活に入って
キラキラしたグループに入って
そんな努力しなくてよかったんだもんね

そして体育館の使用ルールを無視した男子の先輩に遭遇し、それに抗議するみつみちゃんが先輩たちに無視されるのを見て、ミカちゃんの頭には「過去のトラウマ」が頭をよぎる
でも別の先輩が

1年女子相手に恥ずかしくねーんか

と先輩たちを注意をしてくれて事なきを得る
ミカちゃんが内心怒りに震えつつ「心の許さじノート」にしかと嫌な先輩たちの名前を刻んでいる間に

でもあの福田さんって先輩はかっこよかったよね
バシッと注意してくれて

とけろっと話すみつみちゃん
そのみつみちゃんの様子を見て

知ってる人だったの?

と聞くミカちゃんに

ううん
靴に名前があったから

と返すみつみちゃんにミカちゃんは内心ショックを受ける

きっとこういうところだ
私がムカつく奴の名前をふたつ覚えてる間に
岩倉さんは親切にしてくれた人の名前をひとつ覚えるんだろう

とびきりの美人でもなければ
純粋でまっすぐにもなれない
私を一体誰が選ぶ?

そしてなかばその鬱憤を晴らすように、ミカちゃんはみつみちゃんに「バレーの指導をして欲しいということをなぜ村重さんではなく自分に頼んだのか」と卑屈っぽく聞く

なんで私に頼んだの?
私岩倉さんにやな奴だったもんね
迷惑かけやすかった?

ミカちゃんの言い方そのものはほんとにほんとによくないけど、自己防衛的だったミカちゃんが本心の言葉を初めてそのまま口にした瞬間ってここだったんだな
と読み返していて気づいた
この場やこの人をどうしたいという作為に基づいた言葉じゃなくて、ただ100%相手に答えをゆだねる言葉
(志摩くんとお近づきになりたいミカちゃんが、ここでみつみちゃんに嫌われるかもしれないことを言ってしまうのは本来別に1mmもメリットがないわけで…)

みつみちゃんはミカちゃんの問いかけを否定した上でこう続ける

…ちょ
ちょ~~~っと当たり強いかな?
と思ったことはあったんだけど
でも私なりに思い返してみて
言い方はキツかったけど
嘘ついたりはしてないよな
って

バレー教わるんだったら
江頭さんのほうが忌憚ない意見を言ってくれると思って

ものを教えるってね
問題に答えるより難しいんだって
実際わかりやすかったし
すごく練習してじょうずになったんだなってわかるよ

とびきりの美人でもなければ純粋でまっすぐにもなれない私を一体誰が選ぶ?

いたじゃんか!!!!ここに!!!!ねえ!!!

純粋でまっすぐにいられなくなった人を、「王道の物語」たちはよく、責める。
最終的には物語から排除されてしまうことも多い
純粋でまっすぐにいられなかった、色々な事情があって苦しかったとしても「純粋でまっすぐに」の立場を守りきれなかった人たちに、厳しい

でも「スキップとローファー」の物語は、みつみちゃんは、純粋でまっすぐにいられなくなったがゆえのミカちゃんの努力を肯定した
(思えばみつみちゃんは、映画館にみんなで行った時にミカちゃんの私服のこともすごく褒めていたよね)

その上で、そこから急に明け透けに本音で喋り出したミカちゃんのことを、誰も否定しなかった
みつみちゃんも結月ちゃんも誠ちゃんも、そして、志摩くんも
(みつみちゃんは「人格的には褒めてないよ?」とざっくり一刀両断はしていたものの!!)

仮に今後みんなと疎遠になっていってしまったとしても、高校1年生でそういう経験が得られたこと、きっとこの後の人生でミカちゃんにとってかけがえのない財産になるだろう

(一番よくないのは"本音の嫌味"を上手に使うことで、周りを自分の思い通りにしようとするのが常態化した大人になっていってしまうことだけど、ミカちゃんならきっと大丈夫)


がんばれ

ってなんだろう

きっと、手放してしまった素直さを、もう一度取り戻すこと





追伸:
ミカちゃんの「心の許さじノート」が好きすぎる


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