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LUCASインタビュー/わずか1年で急成長を遂げた「光れない光」の創造の源泉

独自の世界観が確立されたご自身の姿やMVや曲であったり、「VRoid製にはとても見えない」と言われる、VRoidモデルの依頼制作であったり、アーティストやクリエイターとしての印象が強い「光れない光」ことVTuberのLUCAS(りゅか)さんに、VTuberを初めてからこの約1年間の急成長について、今回はお話を伺いました。

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「ペンタブすらVRoidをはじめてから買ったぐらいだったんです」ーVRoidからはじまったVTuber活動


藤林檎 最初、VRoidのことはどういう流れで知りましたか?

LUCAS 1年前のある時に突然「VTuberになろう」と思い立ったんですけど、そこで自分の身体を何で制作しようかと考えた時に、Live2Dだとそれを作れる人を探さないといけないし、そうじゃない自力でできそうなツールが他に何かないかなと探していたらVRoidを見つけたんです。そしてその4日後の9/11にぱっとデビューしちゃって。だから初期のモデルは今見るとほんとにひどいものなんですけど。

藤林檎 でも実際私もVRoid Studioに触ってるから思いますけど、LUCASさんのモデルは一番最初の段階でもご自身の個性がちゃんとモデルに出ててすごいなと思いました。LUCASさんは絵は元々描ける方だったんですよね?

LUCAS 元々絵は描いてました。

藤林檎 そこはやっぱり強いですよね。前にインタビューさせていただいた砂鳥れんちゃんも「VRoidはやっぱり絵が描ける人に向いたソフトだと思う」ということをおっしゃってましたし。

LUCAS そうですね、ただ自分の場合は絵を描いてたと言っても、デジタルイラストは全く描いてなくて、ペンタブすらVRoidをはじめてから買ったぐらいだったんです。でもVRoidは絵がそんなに上手くなかったり、顔の左右対称のバランスが自分で取れなかったりしても綺麗に作れるので、塗り絵みたいな感覚でやれてます。



歌に限らず、配信も動画制作もデザインも、元々の経験は何もなかったので

藤林檎 「歌をメインにやっていこう」ってなったのは、どういうタイミングからだったんですか?

LUCAS 元々ゲーム配信の片手間ぐらいの感覚で歌ってみたは出してたんです。ただ「ボッカデラベリタ」の歌ってみた動画をUPしたらその再生数がすごく伸びて。そこでやる気が出ちゃったんですよね。笑


藤林檎 どういう理由で再生数が伸びたのかとかの心当たりはありますか?

LUCAS 本家の動画が出てからすぐにUPしたので、投稿日が他の人の「歌ってみた」が出るよりも早かったのかな?たぶん本家が出てから4日後ぐらいに出したんですけど、そしたら順調に伸びて、そこで「自分の歌、聴いてもらえるんだ」となって。笑

藤林檎 VTuberを始める前の段階では歌の経験はありましたか?

LUCAS 全くなかったです。歌に限らず、配信も動画制作もデザインも元々の経験は何もなかったので、VTuberはほんとに手探りでやってる感じなんですよね。

藤林檎 ではそこまでは「VTuberの活動の一環」ぐらいの感じで「歌ってみた」をやってて、そこで予想以上にたくさん聴いてもらえたから、「じゃあ歌も行けるかも」という感触があって、そこから力を入れ始めたと。

LUCAS そうですね。

藤林檎 例えば絵が描けるとか、自分の中で「これは出来る」ってものがあればあるほど、新しいものを始めるハードルってすごく上がっちゃうじゃないですか。「このぐらいできるようになるためには、おそらくこのぐらいの鍛錬が必要」って始める前からなんとなく分かっちゃうから。だからLUCASさんがそこで絵が描けるって武器をすでに持っている状態で、歌を歌うという新しいことに飛び込めたことが、まず単純にすごいなと思います。

LUCAS そうですね、元々歌なんて自分にとっては恥ずかしくて絶対できないことだったんですよ。笑 配信をやることとかも、VTuberを始める1年前ぐらいの自分だったら想像もついてない感じで。だからほんとにどれもVTuberになったからこそ始められたことですね。

藤林檎 映像制作に関しても、VTuberになってからはじめたってことですか?

LUCAS そうですね。それこそボッカデラベリタまではスマホで編集していたので。

藤林檎 そこから1年足らずであのクオリティの動画が作れるようになるのがにわかに信じがたいんですが、そこからどうやって今のような動画が作れるようになっていったんですか?


LUCAS 最初は絵に文字を入れたMVを作ってただけだったんですけど、春頃に炎炉晴丸ってVTuberと仲良くなってですね、あの人MMDが出来る人なんですよ。その人にMMDを教えてもらってそこでMMDを理解して、そこからキネクトを買ってモーションを撮るようになって、それをフィモーラで編集してるぐらいです。だから全然しっかりした知識がある方ではないですね。結構力技で素材を入れて、画像を無理やり入れて文字入れてみたいなやり方してるので、ほんとに付け焼刃みたいなやり方です。笑

藤林檎 なるほど。では基本的に撮影に関してはMMDの技術を使って撮影をしていて、それを映像編集ソフトを使って編集しているってことなんですね。MMDに関してもご本人のモーションは自分で作っているけど、その他のステージや色んなアイテムは他の人が作られたものをお借りしていて、みたいな。

LUCAS そうです。お借りしたものですね。

藤林檎 それにしてもすごいなと思うのは、MMDを使ってご自身で撮影とか編集されるようになってからは半年ぐらいかと思うのですが、みんながみんな半年やってもここまでできるようにならないですよね。

LUCAS 確かに自分でもスピード感は早かったなあって思いますね。今年はかなり勉強した年だったので、そういうところの影響もあるのかなと。デザインに関しても全然よくわかってなかったところから始まったので。

藤林檎 えっ、デザインもやったことなかったんですか?

LUCAS はい。最初はサムネのデザインとかから勉強して。ほんとに何も知識とかがなかったし、フォトショとかイラストレーターとかはいまだに持ってないので。

藤林檎 では今LUCASさんがご自身の活動の中でやってることに関して、LUCASさんがその前から元々持ってた素養としては、「絵を描く」ということだけがあったってことですか?

LUCAS そうですね。ただ絵も一応描けてはいたけど、元々は下手な方だったしデジ絵に至ってはそもそも全く経験もなかったところから始めたんですよね。絵に関してもVTuber初めてから今年1年でだいぶ上達しました。

藤林檎 VTuberを始めたことが、画力の向上にも繋がったってことです?

LUCAS 繋がりましたね。VRoidだけじゃなくて若干Live2Dとかにも手を出してた時期がありますし、それでデジタルで絵を描くこともできるようになってきて、みたいな。

藤林檎 そんなに1年間で色んなことができるようになれちゃうんですね…。それだけVTuberの活動が刺激的で面白いってことなんでしょうか?

LUCAS 純粋に視野が広がった感はありますね。一口にVTuberと言っても、色んな人がいるじゃないですか。種類としても、活動としても。デザインに関しても今まで1mmも触れたことなかったけど、VTuberを初めたての頃宍戸あくろさんに一目ぼれしちゃって、そこから色んなデザインを意識して見るようになったんです。それまではほんとにデザインってものを日常で意識したことすらなかったんですよ。デザインって「デザインとして見るぞ」って思わないとそのすごさがわからないじゃないですか。広告とかもそうだけど。でもそれが見えるようになってから楽しいなって思うようになりました。

藤林檎 デザインを学びたいと思った時に、具体的にどういうものを見て学びましたか?

LUCAS 全部ネットからですね。グラフィックデザイン関係は見るし、3DCGも見るの好きだし、とにかくおしゃれなものは全部意識して見てます。だから今もなんですけど、「このデザインの技法の名前は」とかは1mmもわからないです。理論も用語もわからないけど、見たものを吸収して、そこで吸収したものを自分の作品に生かして行ってる感じですね。

藤林檎 ではもうほんとにそこは感覚でやっていらっしゃるんですね。

LUCAS はい。たぶんデザインが本業の方に見られたら怒られちゃうようなものなんだろうなと。ほんとに見栄えさえ良ければなんでもありだと思ってやってるので。



VRoidモデルの依頼制作が結果として自身のモデルのクオリティ向上にも生きている


藤林檎 VRoidに関してここまで色々できるようになったのも、完全に独学ですか?

LUCAS そうですね。ただ元々模写はすごくやっていた時期があったので、VRoidの依頼制作でやっているように、他の人の絵を真似するだけならそんなに難しくないかなあって感じです。逆に自分の姿に関してはデザインの原案みたいなのがなくて、VRoidの元の素体を変型させていたら出来た偶然の産物なんですよ。だから依頼制作とかで、イラストレーターさんに描いてもらってる人の絵を元にVRoidモデルを作ると、自分でイチから作るモデル以上に出来がいいものができるんです。その依頼制作での学びを自分のモデルにも生かしていて。それを繰り返した結果で今この顔になってるって感じなんです。笑

藤林檎 そういう依頼制作が結果としてご自身のモデルのクオリティ向上にも生きてるし、ただLUCASさん自身のお姿は、元々立ち絵があってそれを元にVRoidで制作して…って流れで出来た姿ではなかったってことなんですね。でもその流れでちゃんと独自性のある姿に仕上がってるのはさすがです。VRoid Studioは活動を初めてから今までにどのぐらい触ってますか?

LUCAS 自分のと依頼制作含めるとこれまで4~50体分の制作のために触ってますかね。特に最近はほとんど毎日のように依頼制作のためにVRoid Studioを触ってますね。

藤林檎 VRoidの依頼制作でしっかり収入が立ってるってお話もツイッターとか配信でされててそれもほんとにすごいなって思うんですけど、でも最初の頃はめちゃくちゃ安い金額で請け負われてたんですよね?

LUCAS はい。笑 最初スタート時点は1万円で受注してたんですけど、周りに怒られて。「あ、ヤバい!これは相場を荒らしてるんだ」と思って、次は2万円に上げて「いやまだ全然安いよ」って言われて。笑

藤林檎 それはほんとにそうだと思います。笑

LUCAS VRoidって自分の中ではすごく簡単なものなんですよ。笑 絵を描くよりも簡単なものだから、そこで「絵よりは安くしないとなあ」って発想から最初1万2万って金額が出てきちゃって。でもそこから実績が増えるごとに少しずつ金額を上げて行って、最終的には今ぐらいの金額になってます。上達するたびにこだわるところが増えて制作時間も長くなってしまって、値段を上げざるを得ない状況になってしまったっていう事情もあったりするんですけど。

藤林檎 「VRoid大変、VRoid全然上手く触れない」という人が私も含めてたくさんいる中で、「VRoidは簡単」と思って色々作れちゃうのはシンプルに才能だなと思います。LUCASさんが依頼制作されたモデルを見てると、どれも全然ご自身の絵柄に引っ張られてないからそこがすごいですよね。

LUCAS そうですね。一切引っ張られてないから、そこがやっぱり依頼してもらえるポイントにもなってるのかなと思って。やっぱり元の姿って愛着が湧くものだと思うし、なるべくそのまま再現したいんですよね。

藤林檎 そういう考え方を元に制作されてるんですね。



VTuberをはじめてから創作に前向きになれた


藤林檎 LUCASさんの「光れない光です」という自己紹介を初めて聞いた時に、でも結構LUCASさん自身は結構元から自分の作るものに自信がある印象だから、「光れない光」という言葉から連想されるイメージとはちょっとギャップがあるなっていうのが私の印象だったんですけど、ご自身的にはいかがですか?

LUCAS 元々の自信はあんまりなかったですね。笑 VTuberを始める1~2年前に1回ばっきり折られてて。その時はメンタルずたずたでほぼ鬱みたいな状態だったんです。それで「じゃあVTuberでもやるか」って気持ちになって始めたっていうのがあります。ゲームや配信をしつつ、ゆったり動画を作りながら活動できたらなと思ってたんですけど、結局がっつり色々創作し始めちゃった結果、「いやこれそんなゆったりやる感じのやつじゃないな」となってきているのが今なんですけど。笑

藤林檎 この1年やってきて、感想みたいなものって何かありますか?

LUCAS いや~…、初めてのことばっかりすぎて、なんとも言えない1年だったんですけど。笑 楽しかったこともあるし、勉強になったこともあるし、でも大変なことも多かったかなあっていう1年でしたかね。ただここに来て、年末を良い状態で迎えられてるんじゃないかなと思ってますね。

藤林檎 どのへんに「良い状態だな」っていうのを感じますか?

LUCAS 最初の頃はかなりくすぶってたんですよね。笑 でもオリジナル曲出すようになってからなんだかんだ上手く行って。最初の頃は結構ふらふらしてたけど、でも今は活動方針というか、「これから何をやっていこうかな」っていうところがしっかり固まった状態で年末を迎えられてるのかなと。

藤林檎 状況的にもだし、気持ち的にもポジティブな状態になれてるっていうところなんですね。

LUCAS そうですね。かなり創作に前向きになれたんじゃないかなと。それまでは相当鬱々としたネガティブな感情があったり、周りへの劣等感の気持ちが大きかったりしていたので。でも今は創作をしている人間として自分のことを誇らしく思いながら活動できていますし、何より自分でいいもの作れたなって思えるようになったので、「VTuber活動、最高!」って感じです。




VTuberをやるにしても、映画や小説に触れた方が絶対良いと思ってます。

藤林檎 私が配信アーカイブを拝見していて印象的だったのが、炎炉晴丸さんとのマシュマロ読み配信の時に、マシュマロに寄せられた「創作の源泉はなんですか?」というような質問に対して、「とにかく良いものにたくさん触れて吸収すること」ってお話をされていたことでした。LUCASさんの場合は具体的にどういうものに触れてますか?

LUCAS 一番見ているのは、映画と小説です。本に月4万使ってます。あと文字を読むペースがかなり早い方なので、ひたすら文字入れて、デザインも見まくって、で映画も見るみたいな。映画は週3本以上は見るようにしてます。結局、行き詰っても色んな作品を見てれば「あ、これだ」っていうのに出会う瞬間が絶対あるので、その快感を求めて作品に触れまくってます。感覚的に「これだ」と思う創作物に触れて、その影響で自分で何か作って、で作り終わってちょっと虚無感を覚えてる時にまた人の創作物を見まくって、また作る、みたいなのを永遠に繰り返してますね。

藤林檎 漫画もよく読まれるっておっしゃってましたっけ?

LUCAS 漫画も読むけど、やっぱり小説の方が多いのかな。そもそも自分の絵を描く時に人の絵を見ると、それに影響されすぎちゃってちょっとよくないので。

藤林檎 やっぱり自分自身がやる創作からは少しズレてるものに触れた方がいいよっていうことなんですかね。

LUCAS 別のものを輸入してこないといけないんですよ、絶対に。

藤林檎 それはほんとにそうかもですね。

LUCAS だからVTuberをやるにしても、他のVTuberを見る以上に、映画や小説に触れた方が絶対良いと思ってます。

藤林檎 どんな小説が好きですか?

LUCAS 小説は最近中国の作家の三体っていう小説を読んでます。面白いです。SFとか、ディストピア系がなんだかんだ好きなところがあります。でも一番好きなのは恩田陸の「蜜蜂と遠雷」ですかね。長いし淡々とコンクールが進んで行くだけなのにこんな面白いことがあるんだと思って。

藤林檎 では必ずしもSF系だけってことに囚われず、そういう話題作もチェックするような感じで。

LUCAS はい、そうですね。

藤林檎 本の選び方とかはどうしてます?

LUCAS 帯見てる。笑

藤林檎 ネットよりも、本屋さんで選ぶ方ですか?

LUCAS 本屋さん、大好きです。入り浸り気味です。古い作品を見る時はアマゾンだけど、やっぱ新作は本屋さんで本を見て、表紙の良さとフィーリングで「あ、これ今読みたいな」と選んで買ってますね。

藤林檎 なるほど。映画に関してはどんな選び方をしてますか?ネトフリとか?

LUCAS ネトフリとフールーを入れてますね。あらすじを見てなんとなくで選んでるかな~。

藤林檎 映画館よりもサブスク派ですか?

LUCAS 映画館にも見に行きます。話題になってる新作とかはもう映画館で見ちゃうし。フランス映画が結構好きなんですよね。ああいう画が綺麗で、終わり方が曖昧なものがいいですね。

藤林檎 音楽についてはどうですか?

LUCAS 自分で歌を歌い始めるまで、歌詞のある歌を全然聞いてこなかったんですよ。映画のサントラとかが好きで、あとエピックミュージックみたいな、映画の予告で使われるような曲が好きなんですけど、Two Steps From Hellとかがめちゃ最高なんですよ。自分にとって音楽は気分を盛り上げるために聴くものだったので、とにかく歌詞がないものを聞いてました。VTuberになってからはEDMをよく聴くかな~って感じですかね。あと他のVTuberさんの曲チェックしたり、流行ってるボカロ曲をチェックしたりもしてます。



作詞未経験の状態から一人で歌詞を書き上げたオリジナル曲「創造」


藤林檎 音楽完全未経験の状態で、そこから初めてご自身がオリジナル曲を作ろうと思った時に、どういう制作の仕方で進めて行ったんですか?

LUCAS 自分でオリ曲を出そうと考える前に、まず「VTuberオリ曲コンピ」っていう、150人ぐらいでオリ曲のコンピを作ろうって大きい企画があったんです。

歌唱を担当するVTuberさんと、作曲家として楽曲を提供してくださる方とがいて。その企画でりゅかも歌唱を担当するVTuberとして選んでもらえて、オリジナル曲が出せるよってなった時に、めちゃめちゃテンション上がって、そのまま「企画の進行が待てないからもう先に自分でもオリジナル曲出しちゃお」ってなっちゃったんですよ。笑 だから早く曲を出したかったので、音源をすぐ作ってくれる人に制作をお願いしたかったんです。それで阿部直樹さんて方に「こういうEDMの曲が欲しいんですけど」って頼んだらその次の日の朝に音源が出来てました。

藤林檎 早いですね。

LUCAS めちゃくちゃ仕事早かったですし、しかもその時点でリテイクも全く必要ない状態に仕上がってたんです。そこから自分で作詞して、「創造」って曲が出来たんですけど。だからあんまりいつも「コンセプトこれです」みたいな発注はしてないですね。しっかりそういうとこまで伝えて発注したのは「再起」が初めてなのかな。

藤林檎 阿部さんのことはココナラで見つけてっていう流れでしたか?

LUCAS はい、ココナラで見つけました。

藤林檎 ココナラに出品されてる作曲家さんて、言い方は良くないと思うんですけどほんとにピンからキリまでって感じだと思うんです。よく最初からストレートに良い作曲家さんと巡り合えましたね。

LUCAS そこはもう、曲をひたすら聴き比べて。そこで阿部さんを見つけて「この人めっちゃ良いEDM作る!絶対この人だ!」と思って、その場でぱっと依頼しちゃいました。

藤林檎 なるほど。ご自身が作詞を担当される時、曲と歌詞はいつもどちらが先ですか?

LUCAS 曲が先ですね。それまで作詞をしたことがなかったので、最初の「創造」もメロディもらって、どうやるんだろうな~と思って、一か月くらいかかって作った感じだったんですけど。

藤林檎 作詞したことない状態から自力で一人で書いたんですか?

LUCAS 自力で書きました。作詞できる友人とかもいなかったので、自力で作るしかないなと思って。

藤林檎 メロディを見ながら「このように歌詞があれば、このように歌える」みたいなのを自力でひとつひとつ考えていったってことですか?

LUCAS はい、メロディに合わせて文字を入れていけばいいのかな~と。笑 そんな感じで作ったので。

藤林檎 それでできちゃうのはすごいですよ。歌に関してもほぼ完全未経験のところから始まって、そこからほんとに上手くなられて行ってる感じしますよね。

LUCAS 上手くなってますね、たぶん。

藤林檎 そうですよね。そこは何か練習したりとかはあったんですか?

LUCAS あんまり練習してないですね。笑 練習してないからいまだにこのレベルなんだと思うんですよ。曲を録る時にしか歌わないですし。ほんとに作品を作るために「自分が歌わなきゃオリ曲出ないからなあ」と思いつつ歌ってます。



視聴体験がいいものでないと曲を聴いてもらえない時代

藤林檎 配信アーカイブで「今は、曲が良いだけじゃダメで動画がいいとかモデルのビジュアルがいいとか、そういう視聴体験そのものが良いものじゃないと聴いてもらえない時代なんだ」ということをおっしゃっていて、ああそれはほんとにおっしゃる通りかもなあと思ったんです。

LUCAS しっかり歌が上手い本物の歌手なのに、数字が伸びないって人を一杯見てきてるんです。そこでさらにそもそも自分自身は歌が上手くないので、そうなるとやっぱりなるべく自分を選ぶ間口を広くするしかないというか、「ここが良い」って思ってもらえるようなポイントを増やすしかないのかなと思って。モデルが良いだとか映像が良いだとか、歌詞が良いだとか。あとはできるだけコンセプトを固めた上で、それプラスフルトラの技術も使って、なるべくちゃんと動くMVを作ることですかね。今イラストで一枚絵のMV出すよりも、3Dを使ったMVを出すか、ガチでイラストの良い、絵がしっかり動くMVを出すか、その二択が一番映像の視聴体験として良いものになると思ってます。そこに関してりゅかは自分でやれる部分が多いので、だから見てもらいやすいのかなと。

藤林檎 元々自分の作ったものに自信がある方ではなかったとおっしゃってましたけど、でも今はそういう姿勢で作られたご自身のモデルとか動画とか曲とかに関してはちゃんと自信があるっていうことなんですよね。

LUCAS はい。

藤林檎 どのぐらいのタイミングから、自分の目指すところに自分の技術が追いついてきているという感覚が得られるようになりましたか?

LUCAS うーん、春頃に春服のモデルにチェンジした時ですかね。反響が大きくて評判もよくて、その頃ぐらいからフォロワーも丁度増えはじめてきたし、デザインのこともちゃんと理解しはじめた頃だったのかな。たぶん。

藤林檎 ではそのへんから自分の目指すところに自分の技術が追いついてきて、かつそこにしっかり評価もついてくるようになってそれが自信に繋がっていったってことなんですかね?

LUCAS はい。そうですね。




「ああ、こういうのやりたかったんだよな~」ー引退を考えた時期を越えて


藤林檎 最初の頃にLUCASさんが主宰として3名で組まれていたVTuberユニットは上手く行かなかったってことなんですよね?

LUCAS それはもう。笑 「他のVTuberがグループをやってたり魂募集してたりするのがうらやましい」みたいな感じでメンバーをツイッターで公募して始めたんですけど、メンバーに渡したモデルが規約に違反した扱いをされたり、それ以外にも色々あったりしてこれから一緒にやっていくのはしんどいだろうなと思って、解散してしまったんですよね。そのユニットのメンバー募集をした頃って自分もVTuber初めたてだったし、今思えば最初の計画の立て方が甘い部分もあったかなと。

藤林檎 でもその時はユニットメンバーの良心を信じてあんまり契約とかで強く縛ったりはせずっていう感じだったんですよね?

LUCAS そうですね。サークル的な感じでやりたかったので。あまり縛りすぎず。3D技術だったりデザインだったり、そういう技術共有がメンバー間で気軽にできる状態にしたかったっていうのもありましたし。

藤林檎 一度VTuberをやめようかなって思われた時期があったのはそれが原因ですか?

LUCAS それはVTuberをはじめた当初から活動が上手く行ってなかったっていうのと、2月頃リスナーさんに距離感を間違えてしまってるような方がいて、それが原因で1回活動休止しちゃったんです。それでずっと「やめるかどうしようか、でもグループ組んでるから今辞めるのはさすがに責任感なさすぎるからな~」って思った時に友達ができて、「もうちょっとがんばろうかな」と思えて。

藤林檎 今はそういう経験を乗り越えて配信活動も楽しくできるような状態になられて。

LUCAS そうですね。今はもうだいぶ強くなりましたね。笑 なるべく距離感があって欲しいんですよ。ガチ恋みたいな感じで来ないで欲しいっていうのがあるし、そもそも性別がない「無性」のVTuberっていうこともあるし。だから今は配信の場だけで交流できる、できるだけみんなにとって友達感覚でいられるVTuberでありたいなと思ってますね。

藤林檎 その辞めるかどうか悩んでた時期にできたお友達っていうのがVTuberの炎炉晴丸さんってことですか?

LUCAS そうですね。

藤林檎 どういうきっかけで仲良くなったんでしょうか?

LUCAS 炎炉晴丸がデビューした時にツイッターに上げてた動画がめちゃめちゃ上手くて。「新人なのにめちゃくちゃレベル高い動画作ってる人がいる!」と思ってフォローして、でその後自分が雑談配信で好きな個人VTuberさんを何人か紹介してたんですよ。「この人いいんだよね」みたいな話をして。その中で炎炉の名前を出したらその配信を本人が見てたらしくて、炎炉の話が出てた部分の切り抜き動画を作ってくれたんですよ。そこから「ディスコードのIDを交換しませんか?」みたいな感じで仲良くなって。ディスコードのIDを交換したその日に「今電話していいですか?」って聞かれて。そこから今もほぼ毎日通話してますね。

藤林檎 かなり仲が良いんですね。

LUCAS はい。

藤林檎 そこから仲良くなって炎炉さんに動画制作をお願いしたり、動画の作り方を教わったり、みたいな。

LUCAS そう、その代わりに自分が炎炉のモデルを作ったりとかして、お互いに技術交換してる感じです。

藤林檎 なるほど。今一緒にユニット「LUMINOX」をやられているPolaris Noxさんとはどんな感じで仲良くなっていったんですか?

LUCAS 基本的に自分は物を作ってる人が好きなふしがあって。Polaris Noxもコンセプトを大事にしながらしっかりものづくりができるタイプだってことは元々知ってて好きだったし、自分で絵描いてMV作れるところは好感度が高いっていうのもあって、そういうところをきっかけに仲良くなっていきましたね。

藤林檎 そこでさらに一緒に歌をやりたいとなったのはどういう理由だったんでしょうか?

LUCAS 一度二人で一緒に歌った時にあまりに声の相性がよくて、「あ、こんなに声の相性がいいことあるんだね」と2人で言ってて、それがきっかけですね。

藤林檎 最初のユニットでやりたくてでもできずに終わってしまったことが、今は炎炉さんやPolaris Noxさんと自然とできている感じですか?

LUCAS そうなんです。自然に仲良くなって、自然に技術共有ができている状態が生まれたので「ああ、こういうのやりたかったんだよな~」と思って。そういうとこ含めてなのかな。今年の締めくくりが良く感じるのは。

藤林檎 ほんとにそれはすごくいいなと思います。




才能のキメラ、VTuber


藤林檎 最新のオリジナル曲「再起」については、キメラをテーマに制作されたってことなんですけど、「才能のキメラ」ってLUCASさんに限らず、VTuberはじめバーチャルの人達全体に似合う言葉だなって思ったんです。私自身もヘアメイクは砂鳥れんちゃんにしてもらったものだし、お洋服はBOOTHで購入したものだし、「色んな才能が複合してできた存在だな」っていうのは自分でもすごく感じるところですし。

LUCAS ですよね。V界はその感じ強いですよね。基本的にオリジナル曲を作る時はいつもV界ありきのものとして作ってるところがあるので、「再起」に関しても、だからこそ生まれた曲なのかなっていうのは思ってます。ただ純粋にシンプルな歌をやるならVTuberじゃなくても良い気はするし、VTuberを絡めた状態の歌詞を作りたいなとは思ってますね。

藤林檎 3曲とも「クリエイターとしてのLUCASさん」っていうことを感じる曲だったので、今のお話を聴いてなるほどと思いました。今後の曲の方向性としても基本的にはそこからブレずに行きたいって感じですか?

LUCAS 次に出す曲はちょっと違うものかもしれないです。再起でそれはやりきった感があったので。

藤林檎 Polaris Noxさんとのユニット「LUMINOX」の活動については今後の展望はありますか?

LUCAS お互い来年は忙しくなりそうなので、ペースは落ちるかもなんですけど、辞めるつもりは毛頭ない感じなので。元々こんなに高い頻度でやる予定じゃなかったんですよ。ちょっとゆるく二人でやっていけたらいいねみたいな感じで始めたのに、割と月イチで出しちゃってるので。二人で「がんばってるね~」って言いながら。笑

藤林檎 LUCASさんみたいなものづくりがしたいとか、LUCASさんみたいなVTuberになりたいって人がいた時に、アドバイスとして何か思いつくことってありますか?

LUCAS えっ!?りゅかなんてアドバイスする立場にないですよ。笑 でも強いて言うなら、「ソフトを何使ったら上手くなる」ってことは何もないから、やっぱりひたすら良いものを見るしかないんじゃないですかね。他の良いVTuberさんの活動を見て、良い創作物に触れて、モラルのある行動を取るということがVTuberの三大原則だとりゅかは思ってます。笑

藤林檎 最後の一つもめちゃくちゃ大事ですね。笑

LUCAS めちゃくちゃ大事ですほんとにこれ。教訓にして行きたいです。笑 人間でもVTuberでもそこが大事なのは変わらないよっていうことですよね。

藤林檎 これを読んでくださっているファンの方にこれは伝えておきたいみたいなことは何かありますか?

LUCAS これからもみなさんが楽しめる創作をしたいと思ってるので、みなさんにとって楽しいと思える創作をりゅかがしている内はついてきてください。



LUCAS

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Twitter
https://twitter.com/lucas_VTuber

YouTube
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