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【モノなし生活53〜62日目】 これが究極のシンプルライフかもしれない


こんにちは。所持品0でスタートして100日間1つずつアイテムを取り出す生活も半分を過ぎました。


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【53日目】スキニージーンズ

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今週はいよいよ服を充実させていこう、と意気込んでいる。まだほぼパーカーワンピとパジャマしかない。毎日のように公園に行くので動きやすいジーンズを選んだ。公園ではいつも小さい丘を駆け下りたり木にぶら下がったり吊り橋でおしりを振ったりしている。スキニーだとパーカーワンピの下に合わせることもできていい。しかし、ちょっと久しぶりに履いたらウエストがかなりキツかった。履けるけど、息止めないとボタンが閉まらない。なんてことだ、油断していた。この2、3ヶ月で太ったようだ。この生活で初めて、アイテムの選択をミスったかも……と思った。でも選んでしまってもう後に戻れないので痩せるしかない。100個しか選べないのに、思ったよりキツかったからもう一本ジーンズ、とかアホらしすぎる。世界観壊れる。背水の陣だ、運動しよ。


【54日目】パーカー

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パーカー好きすぎる。パーカーワンピ→パジャマ→ジーンズ→パーカー。いや、でも自分なりに結構考えた結果ではある。この一週間、ぼんやりとどんな服を取り出そうか考えていて、服が少ないということはタフに洗濯できるアイテムがいいな、と思い至った。本当だったらこの時期はだいたいいつもセーターを着てる。でも毎日ドラム式でニット洗ったら100日目にはkidsサイズになる。白汚れないかなーと思ったけど何色でも汚れたら嫌なのは一緒だし、もし大変なことになったらあとで漂白剤か何か投入しよう。それが白のいいところ。別に無理していろんな服を持たなくったって、自分が好きで、しっくりくる服だけ持っててもいいな。


【55日目】Oculus Quest

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スキニージーンズがスキニーすぎる事件から2日。急いで元の体型に戻すべく、VRセットを取り出した。シンプルライフを始める前は、VRのボクササイズのアプリで夜な夜な運動していたのだ。バーチャル空間に広くておしゃれなジムがあって、そこで音ゲーで遊ぶようなノリでしっかり汗をかくことができる。かつて家から30秒のジムに入会していたこともあったけど、ジムっぽい服に着替えるのが面倒で全然続かなかった。家から30秒でも社会は社会、誰も見てなくてもかっこつけちゃう。いちいちこのTシャツ着て行くのはダサすぎ……? とか悩んでしまう。それに対して、家にジムを出現させるという手段はかなりよかった。続けられる。

ジーンズを無駄にしたくないという思いがけない理由で取り出してしまったVRセットだが、大発見があった。もしかしてこれが究極のシンプルライフだったのかもしれない。だってほとんど空っぽみたいな部屋に住んでいるのに、VRでの私のリビングはこう。

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ソファ、暖炉、間接照明、本棚……なんでもある。たかがゲームなんてことはなくて、本当に没入感がすごいからこの空間にいるとちゃんとリラックスできる。時間が経つとヘッドセットがちょっとしんどくなってくるけど。大げさに言えば、世界をもう一個手に入れたようなものかもしれない。映画館、遊園地、街そのもの、宇宙、ぜんぶある。

ジムのあと、チェルノブイリに行った。廃墟になった学校の、ひび割れたプールの真ん中に立ち尽くした。画像を見るとか記事を読むとかとは全く違って、やっぱりこれは一種の体験だ。英語の説明を聞きながら、でもその瞬間どこを見るかは自由で、廃アパートに落ちているお金を数えたり、モニュメントを見ずに空の端っこを眺めたりしたっていい。それがその場に行くということの凄みであり、空気、言葉にできないものを持ち帰ること、心をその場にピンで留めることだった。たった8分間のチェルノブイリの旅は、ちゃんと旅だった。これは2018年にはもう話題になっていたやつだけど、VRで世界を旅するって本当に2020的。パスポートはおろかカバンも持っていないシンプルライフでも遠いところに行けた。

(シンプルライフに関係ないけどいまオキュラスクエスト2が出てて、私の持ってる初代より性能上がって価格も下がっておすすめ、VRとか全然知らんって人こそ楽しいはず、もうSFの未来きてるじゃん!って驚く。ゲーム機本体とかPCとかなしでヘッドセットとコントローラーだけで始められる〜おすすめしたい気持ちが止まらない。現代のタイムトラベラーになれる。アンネの日記の世界を旅したり〜はい〜ストップ、続きはまた別のところで)


【56日目】はさみ

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例えばこれが2週間の旅行だったら、はさみは必要ない。もうすぐ2ヶ月が経過しようとしている「生活」だからこそ、必要になってくるものも多い。

はさみを手に入れたことで、切る能力を手に入れたと勘違いしてしまった。半分あっている。いつでも好きなものを切る能力、ではなく権利は手に入れた。

はさみが嬉しくて調子に乗って髪の毛を切った。前髪だけじゃなくて、横も後ろも切った。まず、こういうのは髪を切る用のはさみじゃないとだめ。そしてわしに技術はない。なんとなくうまく行ったように見えたけどよく見るとひどかった。特に翌朝の寝癖がすさまじかった。横髪一同が左にスウィングしていた。スウィングっていうか、スウィンギンッ!って感じ。技術がないならやっちゃだめ、ということはないけど、少なくともはさみを手に入れたことは能力を手に入れたことではないな、と思った。それを勘違いしていろんなものを買いこんで、一瞬の万能感を味わいまくっていた、かつて。


【57日目】アウター

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あったかくて、洗えて、軽くて、リバーシブルのアウター。家では半纏っぽく着てる。やっぱりまず機能性で選んでしまう。でも襟なしのデザインも好き。

裏返すとふわふわ。たまにふわふわな体になるのは結構重要。心がささくれ立ったりギザギザハートになったりしても最低限、体はふわふわ。いらいらしても、ふわふわな物体がいらいらしてるだけ。今年は着ていて落ち着く服がいい。

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リバーシブルはいいなあ(しみじみ)(ジーンズが入らない)


【58日目】本

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以前入手した本、保坂和志『試行錯誤に漂う』(みすず書房) は1日にぐーっとたくさん読める感じじゃなくて、ゆっくりゆっくり読み終えた。結局おわりまで3ページに1回くらい折り目をつけることになった。最後の章がタイムトラベルSFに関する話だったのでテンションがあがった。読んでいる本が自分とシンクロすると超うれしい、でもうれしいのは自分だけなので誰かにシェアできず、鼻息荒く立ち上がってうろうろしてまた座る。おーもしろかったな。これを読んだことで19歳ぐらいのときの感性の毛穴が開いたような気がした。また詩が書けそう。意味以前の場所に行けたというか。言葉によって言葉を剥がすような、そんなモードを得たというか。

それにしてもこれを読んだら誰もがつぎはカフカかベケットか小島信夫か……という感じになるくらいこの3人の作家について何度も言及されていた。芋づる式読書をやりたい私も、後半100ページくらいからカフカかベケットか小島信夫か……となりながら読んでいたが、とうとう最後まで決まらなかったのでその流れは一旦置いておいて前から読みたかった本を出してきた。望月昭秀著/田附勝写真『蓑虫放浪』(国書刊行会)。縄文ZINE編集長の望月さんが、幕末から明治期にかけて全国を放浪した絵師・蓑虫山人を追ったルポルタージュだ。望月さんとは一緒に道南縄文応援大使をやっている大使仲間でもある。一緒にイベントに出演するときはおや大使、タスキを忘れてませんか? わっ大使としたことがー! などと言い合ったりする。シブかっこいい表紙だけど「先輩」に「パイセン」とルビが振られてたりするこの本。縄文ZINEも面白いけど望月さん自体が相当面白い人で、今回も蓑虫山人という全然有名じゃない謎の人物を追ったりしている。望月さんいわく蓑虫山人は「人や文化や珍しいものが大好きなサブカルポップ仙人」とのこと。絵がとても上手いけどゆるいテイストのものも多くてめっちゃかわいい。この絵が好きな人は多分蓑虫山人のことが好き↓

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土偶好きで好きなものをもとめて放浪する人ってところに共感しまくりなので読むのが楽しみ。


【59日目】ハンドクリーム

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カサカサ記念日があった。きのう。よーいスタートでカサカサが始まった。それまではなんともなかったのに。乾燥の季節だった。このハンドクリーム、瓶とクリームの色は手作りのマヨネーズに指をつっこむ気分になって好き。匂いはアロマ焚いてくれてハーブティーを出してくれてドライフラワーが飾ってありそうなマッサージ屋さんのBGMが聴こえて好き。ハンドクリームを塗るという日常にすっかり没していた行為がこの生活によってまた発掘されて、自分をいたわっている実感がずっしりあってうれしい。


【60日目】ドライヤー

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夏はいいけどねそろそろ寒いから、絶対に髪は乾かしたほうがいいんだけど。だいたいいつもピンクピン太郎(2歳半)と公園に行く→シャワーを浴びる、という流れで、バタバタッというよりはオリャオリャオリャオリャ!トゥッとなるので自分の髪を乾かす暇がない。落ち着いた…か…な? と思ったら昼寝していたりするのでドライヤーの音で起こしそうだし。でも私の髪の毛は短いのでそんなこんなで気づいたら乾いている。

しかし。数日前はさみを手に入れて調子に乗り、自分で髪の毛を切ってから寝癖がすんごい。ちょっと写真を撮るにも、髪を整えないことには始まらない感じになってしまった。髪を濡らして30秒くらい上からまっすぐな風をあてたくて、ドライヤーにお出ましいただくことになった。


【61日目】バター

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バターってモノなのかな? でも調味料は数えよう、と最初に決めたのでカウントしておく。それにしても、調味料かどうかも曖昧だ。食品かな? 数えるのもへんだけど、数えないのもずるい、みたいな感じがする。ずるいって、だれに対して?

私はいまシンプルライフチャレンジの企画のなかの企画で、つまり劇中劇みたいな感じで、シンプル調味料チャレンジを自発的にやっている。それは、塩と油だけとか少ない調味料で料理をすることによって素材のうまみをちゃんと意識する、という試みなのだけど、これがけっこう奥深い。これまでに塩と油だけのスープをいくつも作ったが、毎日発見があるし味もバリエーション豊かでほかに調味料を追加したいとあまり思わないくらい。適当にドカドカ積んだ土台から始まっていた料理の積み木を、もういちど0からやってみているところ。なので、他の人のシンプルライフチャレンジではバターは数えなくてもいいかもしれないけど、私の場合ちゃんと数える。映画『100日間のシンプルライフ』の主人公にも彼らだけの事情があるし、さらにその元となったドキュメンタリー『365日のシンプルライフ』の主人公にも独自のスタイルがある。日中は会社にずっといるとか、恋愛においてのモノの存在感であったりとか。私の場合、読書や料理を掘り下げようとしたり、ピンクピン太郎がいたりする。わしはわしのシンプルライフをやる。

バターたっぷりのスープをつくりたかった。コーンのスープ、かぼちゃのポタージュ。焦がしオニオンスープは写真を撮る隙もないくらいおいしそうだったのですぐ食べちゃった。

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Adjustments のコピー


【62日目】フォーク

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まだフォークを持っていなかった。フォーク、なくても100日いけるな。ないとまずいものを手に入れるのに必死なフェーズから、より暮らしを豊かにするためにアイテムを選ぶフェーズにうつったのかもしれない。でも相変わらず、急に必要なものが同時に2個現れたらそれだけで焦る。

パスタを巻きつけるのって楽しい。このプリミティブなよろこびを4歳ぶりくらいに味わえてラッキーだ。何かを刺すのもフォークだと若干上品になる。箸だとそうはいかない。なくても100日いけるけど、フォークにしかできない振る舞いがある。

続く

【モノなし生活63〜73日目】 土偶が生活に必要不可欠な理由


この生活も残り1/3になりました。ここまでお付き合いありがとうございます。まだ続きますが、もし応援したい、とか、もうちょっとなにか読みたい、とか、タイムトラベル専門書店ってなに? と思ってもらえたら、作っているZINEを購入していただけるのがいまいちばん嬉しいです。最新4号『mukimuki』が出たばっかりです。1号からでも、4号からでもぜひぜひ。唐突に読んでも全然大丈夫だと思います。あっもちろん記事のシェアや感想もかなーーーり励みになります!


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