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そのまま


出会った物を、欲しいと幾ら考えてもどうしても欲しいと恋い焦がれる様な

熱い思い、それはもう遠い昔に置いて来てしまったのだろうか?



掴んだが最後、それを掴んだまま離さず

「それは、何に使う物か知っているの?」「もっと他の物も

見てからにしたら?よく考えてみたら?」「それを買ってしまったら最後

もう他のものは買えないよ。」と立て続けに困り果て言葉を続ける

保護者に耳を貸さず、買ってもらえるまで一言も言葉を発せず、仁王立ちに

なっていた女の子。

ようやく買ってもらえることが決まり「何歳?」と尋ねてみたら

「7歳」と、どことなく怒ったように意思強固な顔で答えていた女の子。

買ってもらった物を片手に持ち、スキップをしながら跳ねていた。



「よし、決めた!」と言うや否や、僅か一瞬の後に「あっ、ダメだ。」と

目の前で、うな垂れてしまった子供。 朝から夕方まで会場を何周も

何周も歩き回り、自分の自由になるこづかいで何を買うのか

ひたすらに悩み、ようやく決まったその後で、それが見込み違いで

手に入らないとわかった途端の落胆。 隣で、どうやらその子の祖父と

お見受けする方は陽気に笑っていたから、他人が口を挟めることではなく

挟むべきでもないだろうと思い、それでも、その動向から目が離せずに

持っているお金で買える範囲の極似た物を教えたら、それを、無事に

購入という事になった。



子供たちが恋い焦がれ欲しい! と願い、そして決めた物

それは、私がかつて作っていた物。

今はもう手元に在庫は無く、この先に又、作るか否かは定かでは無いもの。

おかげさまで人気があったけれど、今は木の物・食器を作る、それだけでも

予定の通りにはいかない様な状況にあるから、又作る、その可能性は薄い。


そのせいだろうか、あんなにも強く激しく欲しいと恋い焦がれてくれた

見知らぬ子供たちの様子が、未だ心に残っている。あれがまさしく

一期一会なのだろう。


金銭の使い道を思う。

欲しいと恋い焦がれものは買えず、迷った挙句に他のものを買っていった

あの少年の置いていった代金は、私の手元の箱に、今なお

そのまま、しまってある。