大阪芸大の文芸学科卒業生のリアルな就職事情

今回は、卒業後の進路について書こうと思います。

文芸学科だからといって、必ずしも「作家」になるひとばかりではないのです。

大阪芸大の文芸学科を卒業した友人たちが、20年ほど経ったいま、どうしているのか、リアルな就職事情をお伝えしましょう。

私(藤野恵美) 大学在学中からライターをしており、卒業後もそのままライターをつづけ、グルメ本の出版企画が出ていたタイミングで、ジュニア冒険小説大賞を受賞して、自分が本当に書きたいのは「物語」だと意を固め、ライターの仕事は断って、小説家の道を進むことに。その後、児童文学だけでなく、ミステリや青春小説など一般向けの作品もいろいろと書いて、大学で教える仕事もはじめることになりました。

Mちゃん 新卒で出版系の会社に入るものの、すぐに作家デビューが決まり、退職。本人が素性を明かしていないので、大学側も、作家になったことを知らないと思う。20年以上、専業作家をつづけてる。

Aちゃん 新卒で採用試験に合格して、市立図書館の司書になるものの、育児のため退職。現在は専業主婦。

Kちゃん 新卒で学校図書館の司書教諭に採用されるものの、小学校で働くうちに、自分も担任を持って、クラス運営をしたいと思うようになり、教員免許を取って、採用試験を受け直して、現在は小学校の先生。

Tちゃん 司書としてさまざまな経験を積み、万博記念公園内にあった国際児童文学館に就職が決まるが、大阪府が進める財政再建のため、統廃合されることになり、失職。その後も、図書館学の研鑽を重ね、現在は大学図書館の司書をしながら、K大で非常勤講師として、司書課程を教えている。デジタルアーカイブについて学ぶため、大学院にも通いはじめた。

Kさん 新卒で事務職。勤続20年以上で、気づけば職場の古株となっており、頼られる存在だが、本人は部下とか欲しくなくて、新人を指導する立場は苦手とのこと。自分がローンを組んで、母と妹が同居する一戸建ての注文住宅を建てたほど、社会的信用がある。

Kちゃん 新卒で事務職。趣味に生きるというか、ひとり暮らしながらも3LDKのファミリーマンションを買い、二部屋に天井まである本棚を配置して、図書館みたいな空間を作り、好きなものに囲まれて暮らしている。

Tやん 卒業後は地元の関東に戻って、派遣の事務などをやっていたが、腰痛を患い、デスクワークではない道を模索している。農業関係の仕事も視野に入れ、関西移住を計画中。

Rちゃん 新卒で郵便局に就職したものの、やっぱり作家になりたいということで、退職して、貯金を食いつぶしながら小説賞に応募するが、落選して、デビューならず。その後、交流が途絶えてしまったけれど、共通の友人の話によると、現在はアルバイトをしつつ、布小物のハンドメイド作家をしているらしい。

Yさん このひとは同期のなかでも、わりと異色で、高校卒業後にしばらく働いて自分で学費をためて入学してきたという、社会人経験のある大学生でした。在学中からアイヌ文化が研究テーマで、卒業後は出版社の編集を十数年して、現在は漫画原作者、アイヌ文学研究者、専門学校の先生。

先輩A 在学中から古本屋でアルバイトをしていて、卒業後もつづけていたが、大学時代の友人の紹介で、九州のゲーム会社に就職が決まる。しばらく働いたが、遠い地でのひとり暮らしがさみしくて、会社を辞め、地元である関西に戻ってきて、現在はフリーランスのゲームシナリオライター。

後輩M 新卒で古本屋に就職するものの、数年で辞めて、バーテンダーをやったり、シナリオライターをやったりしたあと、会社を作り、現在はシナリオ制作会社の代表。

こうやって、あらためて見てみると、大学時代の友人で、専業主婦をしているのはたったひとり、というのに、驚くというか、時代を感じますね。

私が子供のころは、働く女性のほうがめずらしくて、母親といえば専業主婦というイメージがありましたが……。

あと、新卒で入った職場で、ずっと変わらずに働きつづけているのも、二名だけ……。

私が卒業したのは2000年で、いわゆる就職氷河期と呼ばれる時代でした。

親の世代とはまったくちがう世界を生きているなあ、という気がします。

友人各位
もし、こちらの記憶ちがいなどで、経歴に修正すべきところがありましたら、ご連絡くださいませ。(追記。Tちゃん、Yさん、情報ありがとう。最新の情報に更新しておきました)

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