Spinoza Note 40: 神と存在(第1群-1)

定理23から20までをひとまとめにし、「神と存在」とラベル付けした。徐々に抽象的になってきて、信仰宣言みたいだ。定理23はほかの定理を支えることがない。孤立している。定理22と21に言及するのでこれらをまとめているのだろう。定理20は定理21で言及されている。4つの定理間の関係はそんな感じだ。定理19が定理23と定理20で言及されているから、定理19もこのグループに入れた方がよかったかもしれない。後で考える。

定理23からはじめる:

Omnis modus, qui & necessariò, & infinitus existit, necessariò sequi debuit, vel ex absolutâ naturâ alicujus attributi Dei, vel ex aliquo attributo modificato modificatione, quæ & necessariò, & infinita existit.

Eliot訳:Every mode the existence of which is both necessary and infinite must necessarily follow either from the absolute nature of some attribute of God, or from some attribute affected by a modification, the existence of which is necessary and infinite.
Elwes訳:Every mode, which exists both necessarily and as infinite, must necessarily follow either from the absolute nature of some attribute of God, or from an attribute modified by a modification which exists necessarily, and as infinite.
高桑訳:必然的にそして無限に存在するあらゆる様態は、必然的に、神のある属性の絶対的本性から生ずるか、それとも必然的にそして無限に存在する様態的変様に様態化した神のある属性から生じてこなければならない。
佐藤訳:必然に、かつ無限なものとして実在するいっさいの様態は必ず、神の或る属性の無条件な自然の性からか、あるいは必然かつ無限なものとして実在する変容態に様態化した或る属性から出てこなければならなかった。

短いが込み入った文章だ。これが Spinoza の世界観を言い表している。Spinoza 存在論の核といってよい。佐藤訳を元に分解してみる:

  1. 様態 mode は無限であり、必然的に存在する

  2. 様態は必然的に神の属性に帰属する摂理により生ずるか、あるいは

  3. 変容態に様態化した属性から必然的に生じる

必然的という表現がいたるところに出てくることに戸惑う。必然的に起きることを前提に、表現から取り除くと少しわかりやすくなる:

  1. 様態は無限だ

  2. 様態は神の属性に帰属する摂理により生ずる、あるいは

  3. 様態は変容態に様態化した属性から生じる

第1の様態が無限であることは神の無限性から導ける。第2の属性との関係は、属性から様態が産み出されることを知っていれば特に問題なく受け入れられる。第3が難しく、様態から様態が生じることがあるという説明だ。Spinoza の存在論のなかでも一番わかりにくい点だ。この点は次の定理22で説明がある。

Quicquid ex aliquo Dei attributo, quatenus modificatum est tali modificatione, quæ & necessariò, & infinita per idem existit, sequitur, debet quoque & necessariò, & infinitum existere.

Eliot訳:Whatever follows from any attribute of God, in so far as it is affected by a modification which in virtue of the same attribute has a necessary and infinite existence, must also have a necessary and infinite existence.
Elwes訳:Whatsoever follows from any attribute of God, in so far as it is modified by a modification, which exists necessarily and as infinite, through the said attribute, must also exist necessarily and as infinite.
高桑訳:神のある属性が、その属性の故に必然的にそして無限に存在するような様態的変様に様態化するかぎり、この属性から生ずるすべてのものは、同様に必然的にそして無限に存在しなければならない。
佐藤訳:神の或る属性を通して必然に、かつ無限なものとして実在するような変容態に様態化した限りでの当の属性から出てくるものは、何であれ、やはり必然に、かつ無限なものとして実在しなければならない。

定理22は定理23とほとんど同じにみえる。「属性が変容態に様態化する」と定理23でも言っているし。定理22を書いてみて、わかりにくいかなと気になって定理23を書き足したのだろうか。「属性から出てくるものは」と書いているが、それが様態だと明記していないので、定理23でその表現を具体的に書き改めたのかもしれない。

続いて定理21をみる。これが定理22で引用されているので続き物だろう。

Omnia, quæ ex absoluta naturâ alicujus attributi Dei sequuntur, semper, & infinita existere debuerunt, sive per idem attributum æterna, & infinita sunt.

Eliot訳:All tllings which follow from the absolute nature of any attribute of God, must exist always and exist infinitely; in other words, in virtue of the same attribute, they are infinite and eternal.
Elwes訳:All things which follow from the absolute nature of any attribute of God must always exist and be infinite, or, in other words, are eternal and infinite through the said attribute.
高桑訳:神のある属性の絶対的本性から生ずるものはすべて、常にそして無限なものとして存在しなければならない。あるいはその属性によって永遠・無限である。

「属性から生ずるものは無限だ」ということだろう。特に問題ないので定理20に進む。

Dei existentia, ejusque essentia unum & idem sunt.

Eliot訳:The existence and essence of God are one and the same thing.
Elwes訳:The existence of God and his essence are one and the same.
高桑訳:神の存在と本質は同一である
佐藤訳:神の実在と神の有りかたは一つの同じものである

佐藤訳で証明をみよう:神と(定理19より)そのすべての属性は永遠であり、つまり(定義8より)その属性一つ一つが実在を表現する。だから(定義4より)神の永遠な有りかたを説明する神の当の諸属性が同時に神の永遠な実在を説明する。つまりは神の有りかたをつくり成すそのものが同時に神の実在をつくり成すわけで、よってこの実在と神の有りかたとは一つの同じものである。

「神の有りかたをつくり成すそのものが同時に神の実在をつくり成す」ということでよさそうだ。ダイナミックな見方だが、これが存在に対する Spinoza の見解である。

当初の計画を翻し、定理19をこのグループに入れる。定理20で参照されているからだ。

Deus, sive omnia Dei attributa sunt æterna.

Eliot訳:God, or all the attributes of God, are eternal.
Elwes訳:God, and all the attributes of God, are eternal.
高桑訳:神あるいは神のすべての属性は永遠である
佐藤訳:神、言いかえれば神のすべての属性は永遠である

神と神の属性を等しくみているが、神は絶対一者であり、神の属性は相対的一者である。同じだが状態が違う。それはともかくとして、そんなこととは関係なく、神は永遠である。

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