日本人の起源 最新の古人骨DNAが示唆すること
。NHK-BS1のFrontiersを観た。日本の古人骨のDNA解析の最新情報を紹介していた。備忘のため書き留めておく。劣化の兆しのある記憶に間違いがないことを祈る。
通常われわれは日本人の起源は縄文人でありそこに弥生人のDNAが重なった二階建て構造であると理解しているのではないか。ところがそれが覆されたのである。
縄文人のDNAの特異性・孤立性はつとに有名だが、それが説明できるようになった。およそ6万年前にアフリカを出たホモサピエンス。なかで東に向かった集団のうち最初期に極東に到達したグループから「最東端=今の日本列島」に広まったのが縄文人の祖先だった。その後氷河期の終焉とともに日本列島が大陸から分離したため、こなたには縄文人のDNAが永く保存され、大陸では後続グループに駆逐されて激減し、ごく一部に局在するのみとなったという。(タイだったかミャンマーだったかの山奥に住む当該極少数種族を訪ねる決死のロケ映像が流れた。)
1万年余続いた縄文末期に多くの渡来人がありそれが弥生人のDNAをもたらし日本人のDNAは二階建てとなる。ここまでが通説。このときの渡来人の出自は多く大陸北東部であるらしい。
ところで最近、弥生時代に続く古墳時代の古人骨が採取解析された。結果は瞠目すべきもので、DNAは二階建てどころか、「縄文+弥生」分は合わせても3割から4割程度で、残りは新しい渡来人由来だったのである!! サンプル数が少なすぎるとの反論もありうるが、この遺伝子プロフィールは現代日本人と近似しているのである! なお、新しい渡来人の出自は大陸東南部であるらしい。
こうした新しい知見によって何が期待できるかといえば、日本史の空白と呼ばれる古墳時代の解明、具体的には主要古墳の発掘への道が開かれることである。古墳発掘の必要性は見識ある少数の学者によって細々と発せられてはいたが、反主知主義的な宮内庁史観(「陵墓参考地」などというフィクションと憶測に飾られたレッテル)によって阻まれてきた。この点、強く抵抗しなかった日本史学界、考古学界の長年の弱腰には不信感しかないが、こうして新たな分野からの知見が突破口を開くことを期待してやまない。
なかんずく、個人的な関心は言語問題である。そもそも在来の原日本人と大量の渡来人のあいだのコミュニケーションはどのようにして可能だったのか? 遺伝子プロフィールが示す通り「縄文+弥生人」が少数派だったとして、いかにしてどの程度原日本語が保たれ、他言語のどの要素が加わって今の日本語に収斂していったのか、等々。
ほかには、〇岡山県の巨大古墳のなぞの解明。〇教科書的な古墳分類には出てこない、山陰北陸にのみ見られる四隅突出型方形墳のなぞ、など。
思い切って言えば、邪馬台国問題は古墳時代の解明という大きな図柄のなかのひとつの系、もしくは挿話にすぎないと推測する。