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コールスキップの具体的な事例を教えてほしい【お客様からの質問シリーズ⑩】

こんにちは
ウェルスパートナー(https://wealth-partner-re.com/)で富裕層向けIFAをしている藤村大星(https://twitter.com/wp_fujimura)と申します。

前回、コールスキップについて書きましたがコールスキップの具体的な事例を教えてほしいとの声があったので今回はコールスキップの事例について書こうと思います。併せて以下記事もご覧いただくと理解が進むと思います。


(1)コールスキップの主な事例一覧

ハイブリッド社債のコールスキップの要因には経済合理性のものもあれば、世界経済全体の影響を受けたものまで様々なものがあります。

・2009年みずほ永久劣後債
要因:リーマンショックの影響で、新たな債券の発行が難しくなった。

・2016年スタンダードチャータード銀行永久劣後債
要因:経済合理性

・2019年サンタンデール銀行ユーロ建てCoCo債
要因:経済合理性

・2020年ドイツ銀行米ドル建てCoCo債
要因:コロナショックによる経済不安で、新たな債券の発行が難しくなった。

(2)経済合理性のよるスキップについて

・2016年スタンダードチャータード銀行永久劣後債スキップについて深掘り

2009年のみずほや2020年のドイツ銀行は、イレギュラーな経済不安が理由なのでなんとなく理解はできますが、経済合理性でスキップと言われてもピンとこないと思います。
今回は、経済合理性で2016年にコールスキップされたスタンダードチャータード銀行米ドル建て永久劣後債について深掘りしていこうと思います。

【スタンダードチャータード銀行永久劣後債の条件】

  • 発行日:2006/12/8

  • 期間:満期はなし、繰上償還日は2017/1/30、2027/1/30、2037/1/30、2047/1/30

  • 利率2017/1/30まで6.409%2017/1/30以降 3ヶ月Libor(ロンドン銀行間取引金利)+1.51%

ポイントは発行日と利率です。2006 年12月のアメリカ政策金利は0.75%・アメリカ10年国債利回りは約4.7%・3ヶ月Liborは約5.3%という特殊な状況だったので利率は6.409%になりました。発行体にとって高金利の厳しい状況で債券が発行された(投資家にとっては良い)ということになりますね。

繰上償還は「コールスキップした場合の利率」と「償還し新たに債券を発行した場合の利率」を比較し、経済合理性の高い方を選択します。

発行体の信用リスクが一時的に高まっている場合などは、新しく債券を発行しようとしたら高い利率でなければ、資金を集める事ができません。
そのような場合はコールスキップする可能性もあるかもしれません。

コールスキップ後の利率の決まり方は、発行時に大体決まります。コールスキップすることにより、償還させて新しく発行するよりも利率が大きく下がる場合があるため、そのような場合はコールスキップする可能性があります。
しかし、わずかな条件の変化であれば、評判が下がり今後の債券の発行に悪影響が出るのでファーストコールで償還される可能性があります。

上記債券がコールスキップの判断をした2016年11月のアメリカ10年国債利回りは約2.3%で、スタンダードチャータード銀行が同じような債券を発行した場合は約4.5%の利率水準でした。
そしてコールスキップ後の利率は3ヶ月Libor+1.51%です。3ヶ月Liborは当時0.9%ほどまで下落したためコールスキップ後の利率は約2.4%になります。
約4.5%と約2.4%なので、これだけ利率違うとコールスキップをした方が発行体にメリットがあるので経済合理性からコールスキップしても納得がいくと思います。
コールスキップ後の利率が変動+固定なのはOKですが、この債券のコールスキップ後の固定部分の利率は+1.51%でとても低いです。念の為、固定部分が2%後半の債券を選びましょう。

(3)まとめ

今回はコールスキップの事例について深掘りしてみました。繰上償還時が低金利である等で投資環境が悪い場合は、経済合理性からコールスキップされる可能性があるかもしれないので注意が必要です。

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