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債券投資の発行体選びのポイントは?【お客様からの質問シリーズ⑤】

こんにちは。
ウェルスパートナー(https://wealth-partner-re.com/)で富裕層向けIFAをしている藤村大星(https://twitter.com/wp_fujimura)と申します。

クレディスイスの件もあり、債券投資をするにあたり発行体が大丈夫なのか心配になる方が増えているように感じます。
今回は、少し長いですが発行体選びの際に注目すべきポイントをまとめておりますのでご参考にしていただければ幸いです。


(1)発行体格付け

発行体格付けは企業の信用力を示すバロメーターのようなもので、S&PやMoody'sなどの格付け会社が付与するものになります。
一般的にBBB−(Baa)以上が投資適格・BB+(Ba)以下が投機的格付と言います。以下の図は国と企業の発行体格付の一覧になります。
投資したことがない方でも知っているような大企業の方が格付けが高いことが多く、債券投資では、倒産確率が低いとが大切なので成長が期待できる企業よりも財務等が盤石で格付けが高く倒産しなそうな時価総額が大きい成熟企業の方が適しています。

国と企業の発行体格付け一覧(Moody's)

以下は格付けごとの累積デフォルト率のデータになります。赤で囲っている箇所に注目してください。
投資適格格付けのBaa(BBB)の5年間のデフォルト率は1.23%、10年間のデフォルト率は3.09%に対して、投機的格付けのBa(BB)の5年間のデフォルト率は5.65%、10年間のデフォルト率は12.22%になり、投資適格と投機的格付けでかなり大きな差になります。更に期間が長くなるほどデフォルト率が高くなるので、発行体選びはより慎重に行う必要があります。
発行体の信用リスク分散の観点からも、発行体格付がBBB以上を中心に据えるべきです。

格付けごとの累積デフォルト率(1990年〜2020年)
出典:MOODY,S INVESTORS SERVICE

(2)債券格付

債券格付けは「発行体の信用リスク」+「債券種類のリスク」を指し、債券自体のリスク度合いを示したものを債券格付けと言います。
債券の種類に普通社債・劣後債・永久劣後債・CoCo債がありますが、以下の図は、債券種類ごとの債券格付け例になります。

債券種類ごとの債券格付け例

発行体格付けが同じでも、債券のリスクが高くなると債券格付けは低くなります。債券で一番リスクが低いのが普通社債で下に行けば行くほどリスクが高くなるため一般的に債券の格付けも1ランク程度下がることが多くなります。
発行体格付が高くても債券種類によって債券格付けが異なるので注意が必要です。銘柄選定の際は発行体格付けではなく債券格付けを見てください。

(3)時価総額

会社の規模を表す時価総額も「格付けを補完する役割」としてとても参考になります。
格付けはタイムリーに変動しませんが、時価総額は毎日変動しますので、発行体の規模感や成長性をタイムリーに把握できます。
株式投資は、企業の成長性が重視されるので格付けよりも時価総額の方が大切ですが、債券投資は、成長性よりも倒産確率の方を重視するので時価総額も大事ですが格付けの方をチェックしましょう。あくまでも時価総額は格付けを補完するツールとして活用しましょう。
利回りや格付けが同じくらいの債券があり、どちらに投資した方がいいか悩んだ際には時価総額が大きい発行体の債券を選ぶと良いです。

(4)貸借対照表

貸借対照表とは、会社の調達した資金(負債・純資産)の使い道を表したものです。一定時点における会社の財務状況を知ることができ、会社がどのくらい安定しているかの参考にもなります。
現金及び1年以内に現金化できる資産である流動資産等の数年間の推移は見ておくべきかと思います。

(5)損益計算書

損益計算書とは、一定期間における会社の経営成績を表す収支報告です。会社がどれだけの利益を上げ、損失が生じたのかが分かります。債券投資においては、業績が伸びているかではなく、倒産しないかの見極めが重要になります。3年間程度の本業の利益を指す営業利益や最終的に会社に残る利益の当期純利益の推移は注目するべきかと思います。一期だけではなく連続して赤字が拡大していき、純利益が減少している場合は気をつけましょう。

(6)銀行の場合はCET1比率

CET1比率とは、CoCo債を発行する金融機関の自己資本の中で、株式で資金調達した資本や内部留保などの純粋な資本だけを指します。
このCET1をリスクアセット(保有資産額に対して資産のリスクごとに決められた割合を掛けて算出する)で除した数値をCET1比率と呼びます。
CET1比率が高いほど安定感が増すので、なるべく高い銀行を選びましょう。

出典:https://finance-gfp.com/?p=5602
ファイナンシャルスター


(7)保険会社の場合はソルベンシーマージン比率

ソルベンシー・マージン比率は、保険会社の健全性を測る指標で「支払い余力」ともいいます。
保険会社は、予測不可能な戦争が災害が発生した場合にも自己資本や準備金などから保険金を支払う必要がありますが戦争や災害などで、保険金の支払いが増加したり、相場環境が悪化するなど、当初の見積もりが大きく外れることもあります。 こうした想定外のリスクに対して、保険料収入や責任準備金以外に、どれくらい余裕資金を持っているかを測る指標がソルベンシー・マージン比率で200%以上が健全性の目安とされています。しかし、過去には200%以上あったのに破綻した保険会社もあります。
そのため、この指標だけで保険会社の健全性を判断することはできませんが、参考指標の一つとして確認してください。

(8)まとめ

今回は債券の発行体選びの際のポイントでした。債券投資においては業績が伸びているかは関係なく、倒産しなければ良いです。投資対象として面白くない企業の方が債券投資においては安定しているということですね。

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