クレディ・スイスの件はなぜ起きたのか【お客様からの質問シリーズ62】
こんにちは
ウェルスパートナー(https://wealth-partner-re.com/)で富裕層向けIFAをしている藤村大星(https://twitter.com/wp_fujimura)と申します。
クレディ・スイスのCoCo債が全損になったのは記憶に新しいと思います。
なぜあのようなことが起こったのか、解説します。
(1)概要
2023年3月にスイスの金融最大手UBSは同2位クレディ・スイスを買収することで合意しました。ここまでは問題ないのですが、
スイス政府は「クレディ・スイスの自力再建が困難」と判断してAT1債約2.2兆円分の価値をゼロにすると発表しました。
AT1債の弁済順位は普通社債と比べて低いものの、株式よりは高いです。
しかし今回は株式交換でクレディ・スイスの22.48株あたりUBS1株を割り当てました。
クレディ・スイス株の価値がゼロにならないのに対し、AT1債が無価値となってしまったのが大きな問題です。
(1)CoCo債とは
CoCo債は「金融機関の自己資本比率(CET1比率)が、あらかじめ定められた水準を下回った場合などにおいて、元本の一部または全部が削減される、または強制的に株式に転換される」というものです。
詳しくは以下の記事で詳しく解説しています。
(2)特殊な条項がついていた
今回は、クレディスイスのCET1比率が大幅に下落してCETトリガーに抵触したからではなく、別の条項に抵触したため全損になっています。
CoCo債のCET1 トリガーは、「金融機関の自己資本比率(CET1比率)が、あらかじめ定められた水準を下回った場合などにおいて、元本の一部または全部が削減される、または強制的に株式に転換される」というものなのですが、
これはCET1トリガーに抵触していなくてもスイス当局が実質破綻認定したらOUTということです。
今回のケースは買収なので破綻はしていません。クレディ・スイスのCET1比率も問題はありませんでした。
しかし、クレディ・スイスは買収までの間にスイス政府から流動性支援を受けており、スイス政府は「クレディ・スイスの自力再建が困難」と判断したため、この条項が適用されました。
この条項は日本をやスイス以外のヨーロッパ圏の金融機関が発行するCoCo債には基本的にはついておらず、スイス特有の条項になります。
低金利下では必要であればCoCo債へ投資することもあるでしょう。
その場合は、曖昧な条項がついているCoCo債への投資は避けて、債券概要書をしっかり理解した上で投資をしましょう。
以上、クレディスイスの件はなぜ起きたのかでした。
他に資産運用に関する記事を書いています。
以下のリンクが目次になるので併せてご覧ください。
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