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禿頭のすゝめ

「禿頭(トクトウ)」
 ハゲアタマとも呼ばれ、頭部の一部または全体の毛が抜けるなどして皮膚が剥き出しになった状態を指す。
 
 現代にみられる禿頭はそのほとんどが男性ホルモンの過剰分泌で起こるAGA(男性ホルモン型脱毛症)によるもので、故意に髪を剃り上げて禿頭にしている人は、ほぼいない。

 しかし、その高い芸術性と利便性から世界中で取り入れられてきた歴史的・文化的なヘアスタイルである。

 禿頭は大まかにO字型、M字型、U字型の3種類に分けられる。

 O字型は、前から見るとなんの変哲もないが、後方もしくは上空からみると頭頂部がひっそりとくり抜かれている。

O字型

 その代表として鉢巻を巻いたような形状に髪を残す「トンスラ」がある。トンスラはカトリック教会の修道士が行なっていた髪型で、イエス・キリストが磔刑に処される際に被せられた「いばらの冠」を模したと言われている。かの有名なフランシスコ・ザビエルの頭髪もこのトンスラだ。俗人身分から聖職者身分への移行の象徴であり、俗世と決別した聖職者たちのアイデンティティとして機能していた。

 また、逆O字型の形態をとる髪型として、中国の辮髪(べんぱつ)がある。辮髪は頭髪の周囲を全て剃り上げ、中央に残った少量の長い毛を編んで後ろに垂らしている。漫画「キン肉マン」に登場するラーメンマンがこれに該当する。そのデザインは時代によって変化していたようだが、その始まりは、戦の際に着用する兜を被りやすくするためであったと言われている。辮髪は一見奇抜な髪型のようにも思うが、利便性を追い求めたコンビニエンスなヘアスタイルなのだ。

 U字型は、M字型からさらに無毛範囲が進行し、額から頭頂部までホワイト企業の上司と部下の関係のごとく開通しているのが特徴であり、丁髷がこのU字型に分類される。

U字型

 丁髷は辮髪と同様に、兜が起源となった髪型で、前頭部から頭頂部にかけての頭髪を剃り上げ、残りの髪の毛を結った髪型のことだ。武士が兜をかぶる際に、蒸れないよう兜の通気口に合わせて頭頂部を剃るようになったことがはじまりで、戦のために最善を尽くす誇り高い武士の象徴であった。

 M字型は前額部の生え際が後退し、額に広大な領地を有している。

M字型

 広い前額部を呈する動物として、ウアカリがいる。ウアカリはブラジル・コロンビアなどの南米に生息する小型のサルで、成熟するにつれて禿げ上がる前額部と、赤い顔が特徴だ。ウアカリの頭が禿げていく理由として、一説では健康度を示す赤い顔をメスに見せつけるためと言われている。つまり、ウアカリのオスは禿げれば禿げるほどモテるのだ。

 禿頭の原因となる、男性ホルモンには、骨を強くし筋肉量を増やす他、精子を作り性欲を高める効果がある。つまり、人間においても禿頭は、力が強く、繁殖力の高いオスを見分けるバロメーターとなるのだ。

 このように禿頭は深い歴史と、利便性、デザイン性を兼ね備えたファビュラスでコンビニエンスなヘアスタイルである。今後、禿頭を広く導入することは、深刻な人口減少や風通しの悪い職場環境改善への手掛かりとなるだろう。
 

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