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「プロジェクト」を磨き込む5つの視点

2024年11月17日(日)に東海学生アワードが開催されます。東海地区を中心に若者の挑戦を応援するプレゼンテーション大会である同時に、半年間に及ぶ伴走支援を通して若者育成を行うプロジェクトです。筆者は、3年前から、最終発表前日の合宿にメンター役として関わり、これまでの活動の総仕上げを担当しています。総仕上げといっても、プレゼンテーション技法にこだわるのは稀で、その内容のほとんどが企画内容やメッセージのの磨き込み、すなわち、「最も伝えたいこと」の磨き上げです。

半年も情熱を持ち取り組んでも「最も伝えたいこと」が曖昧とは残念だとの批判も考えられますが、むしろ、この半年間があるからこそ、その自分なりの考え、社会へのメッセージが形成され、一つ一つの良いパーツが揃いつつある印象です。ここまでに至るには、自分自身に向き合い、社会との関わり方を考え、問題意識を深掘りしながら、なにをしたら良いかを模索する下準備が必要です。(そして、その伴走を担われている大人の皆さんに敬意を表します)

その下準備を行なってきた人が最後に取り組むのが磨き込み。そこで必要なのは思考力。メッセージを再整理、情報のデザインです。このnoteでは、去年のフィードバックや経験則等から、私が考える必要な観点、ポイントをいくつか提示することを通して、今年の人たちへのエールを送ります。なにか皆さんの参考になれば幸いです。

1、問題提起をはっきりさせる

良いプレゼンには、良い問題提起があります。問題提起には、これこれが課題だという問題意識を語ることもあれば、こんなに面白いものがあると興味関心を語ることもあります。そのいずれも、他者に対して、これに注目してほしいと問題提起することが出発点と思います。

ぜひ問題提起は、自分の言葉で語りましょう。これまでのいろんな興味関心や問題意識を持っているはずです。それが自分の過去の体験や、誰かに起きた出来事でも、最近注目している話題でも、読んだ本でもなんでも構いません。それらを人の言葉の受け売りではなく、自分の言葉で、自分が納得する言葉で語れるようになれば、力強い問題提起に繋がります。

そして、問題提起の取捨選択をしましょう。言い換えれば、最も強い問題提起はなにか、をはっきりさせましょう。いろんな関心や問題意識にも優先順位があるはずです。あれもこれも興味がある、あれもこれも問題意識があるでは、ピントがボケてしまいます。目指したい状態は、自分は「この現状をこうしたい」とシンプルに語れるようにすることです。

加えて可能ならば、その問題提起がなぜ重要なのかも語れるとさらに良いです。こんな人が困っているでも良いですし、こんなわくわくする未来が開かれる。その意義、問題の重要性、魅力を語り、なぜ注目してほしいのかを語ることを目指しましょう。

必ずしもその問題提起が、他者から評価されるとは限りません。共感して応援してもらえることもあれば、全然理解してもらえないこともあるかもしれません。たとえ自分では100点で全力でプレゼンしても、ファイナリスト等に選ばれることもあれば選ばれないこともあり得ます。それは会場やオーディエンス次第でもあります。

ですが、それ以上に大切なのは、自己評価です。言い換えれば、納得感とも言えますが、自分の経験や考え、知識を総動員して考えた結果として、これだと問題提起をすること。それにみなさん自身が最も共感して納得できる時間になれば、すごく良い時間だったと言えるのではないかと思います。そんなみなさんの語りを楽しみにしています。

2、受益者(顧客)を語る

社会的な活動には、必ず受益者(顧客)がいます。逆に言えば、受益者が自分しかいない活動は、個人的な活動にすぎません。自分達が行う活動が、誰にどう貢献するのか、誰にどう幸せな気持ちを届けるのか、誰にどう苦しい気持ちを和らげることができるのか、を語りましょう。

そのためにも、ペルソナをはっきりさせることが重要です。自分たちの活動のメインターゲットはどんな人でしょうか。想像でも良いですが、あの人とあの人とあの人と具体的にイメージできる方が、説得力も増してくるはずです。時には、かつての自分や今の自分がターゲットになっても良いと思います。ペルソナがはっきりすれば、その分だけ、具体性や意義が増すはずです。

なお、受益者を意識することは、将来のキャリアや仕事にも繋がります。自分で起業するだけではなく、企業団体等で働く上でも顧客が存在し、行政で働く上でも受益者が存在し、その人達への貢献活動に従事することが仕事とも言えます。通常、仕事では顧客等への価値提供を数値目標として成果を定義もしますが、根本的には、受益者や顧客がどう幸せになるのか、どんな価値提供したのかが重要です。主には大学生(高校生)のみなさんが、これから社会に出る際にも、受益者を意識することは大切に思われます。その契機にもなればと感じています。

合わせて、会場にいる社会人は、まさに仕事を通して社会的な活動に従事しています。皆さんが社会を語る時には、ぜひ受益者を語り、その人達にどうあって欲しいのか、どうなって欲しいのかを語りましょう。そうすることで、そのプロジェクトがグッと社会性を帯び、社会人からの共感も得やすくなると思います。

3、未来を語る

ぜひ未来を語れるように頑張りましょう。良いプレゼンテーションでは、「未来」が語られます。理想を語れば、それは未来の向かう先を語っていることになります。より良い現状分析を語ることは、より良い課題解決への糸口を語る事に繋がります。聞いている側の高揚感は、未来への期待値だと言えるかもしれません。

未来を語ること自体は、難しいことではありません。そもそもなにかの問題意識や活動を行うこと自体が、今日より明日、明日より半年、1年後を明るくするのだという意思の表れでしょう。誰からなにかを頼まれた訳ではないが、自分なりに良い未来を信じているからこそ、試行錯誤を重ねてながら行動をしているのだと思います。そこに目を向けて、対話を重ねていけば、きっと言語化していけるはずです。

他方で、より良いビジョンを語ることは簡単ではありません。そのためには、その業界の知識や経験が必要なほか、幅広く社会の捉え方(認識枠組み)を問い直していくこと、数年後のあり方を具体的に構想することも必要でしょう。見えないものを描き出す知的体力と創造性の発揮が必要な領域で、決して簡単なものではありません

ですが、すべての事業や活動は、きっとより良い未来を作るために行うものでしょう。いまと全く同じことを行うならば、問題提起も必要ないはずです。そこには、こんな未来が望ましい、その先にはこのような景色が広がる、こんな世界を見てみたい、そのような願いがあるはずです。皆さんのその願いを聞けることを楽しみにしています。

4、解決策を、ネクストアクションで示す

課題解決も未来を作るのも、私たちのアクションです。より良い未来に向けて、自分がどんな一歩を歩むのか、そして周りの人にはどんな一歩を歩んで欲しいのかを示すこと。この知的作業を読者に委ねず、プレゼンター側で考えて欲しいと思います。

プレゼンの中で、聴衆へのお願いを盛り込むこととも言えます。「私は〇〇をしたい。私ではこれを行う。でもこんな制約がある。だからこれをお願いしたい」そのような語り方を考えた例もありました。ここまでの問題提起、理想像に共感しもらった人たちに、こんなことをしてほしいのだとネクストアクションを示すことができれば、グッと目指す姿に近づくかもしれません。

そのためには、そもそも自分の願いはなにかを考えること。そして、自分がどんな行動をすべきなのか。どんな人にどう行動して欲しいのかを考える知的作業が必要不可欠です。正直、面倒な検討でもあると思いますが、この知的作業なくして、物事を成し遂げるのは難しいです。

逆に言えば、そこまで考えていることは、自分の本気度を示すことにも繋がります。頭を使い、なにから行うのか、なぜそこから行うのか、それらがなぜ効果的なのか、を考えていきましょう。

5、プレゼン技法<メッセージ

これは個人的な好き嫌いとして語りますが、私はメッセージがあるプレゼンテーションが好きです。ビジュアルが素敵で作り込まれている演出よりも、マイク一本で語るメッセージがあるプレゼンテーションが響きます。

もちろん、マイク一本で語るスピーチにも表現技法があります。構成、言葉の選び、畳み掛け方、間など様々な技法があります。まさに職業としてスピーチライターが存在する所以です。ですが、それらの表現技法もすべては、聴衆に伝えるメッセージがあってこそです。

どうやら良いプレゼンのために、表現技法やスライドの出来栄えを加筆修正する人がいますが、個人的なおすすめは、メッセージの磨き込みです。この日、その場で時間が与えられたときに、なにを伝えるか。大袈裟に言えば、そこに自分の存在意義をかけたプレゼンテーションの醍醐味があると思えます。

また、メッセージさえあれば、表現技法は後で磨けます。それは自分自身が磨けなくても、得意な人たちやプロの人たちと一緒に磨けます。広告代理店やクリエイティブの方々とご一緒していると、その点が本当にすごいなとも感じます。ですが、プロジェクトを行う立場の人たちが、表現のプロフェッショナルと仕事をするために必要なものこそ、メッセージです。

東海学生アワードは、表現大会ではなく、プレゼンテーション大会だろうと思います。チャレンジングだと思いますが、ぜひ問題提起、受益者、未来、アクションプランを含め、来場者の皆さんにメッセージを届けていただければと期待しています。

以上です。
上記が、アワード大会に参加する皆さん、そして、縁あって本noteを読んでくださった皆さんの参考や励みになれば幸いです

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