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サブストーリーこそ、メインストーリーなんだよ
今回の「生き方見本市」の会場で、だれも知らなかったかもしれないことを共有したい。イベントの本旨とは少しズレるかもしれないけれど、ぼくにとってはとても価値があったと感じている、そんなこと。
たぶん、来た方全員は見ていないように思う。関西大学・梅田キャンパスの8階と4階。2つに分かれていた会場の「メインではない方(誤解のないように言っておくと、イベントにとってはもちろんとっても重要。関わってくださったみなさん、ありがとうございました。無料で参加できるよりライトなコンテンツ)」の4階で「空の写真展(中村さんの空展)」というコンテンツがあった。
尼崎在住で、91歳になる中村さんは、数年前から毎日空の写真を撮りためている。元々はそれを自身のブログで発信していた。だけど最近、その発信が止まった。理由は「だれも見てくれていないような気がするから」。そういうことだった。
それならば、ということで立ち上がったのが「まごころ茶屋」という尼崎にある調剤薬局が運営するコミュニティスペースだ。そこの代表である福田さんが、中村さんにお声かけをして開催したのが「中村さんの空展」という写真展だった。
ぼくは、中村さんの写真展のことを知って、今回の「生き方見本市」への出展を打診した。それは若者ばかりだけでつくるのではない、新しい「生き方見本市」への入り口を開くためだった。そしてそれはほかでもない、高齢になっても新しいことにチャレンジする中村さんに感銘を受けたからだった。
実は、ぼくはこの時点で中村さんにまだお会いしていなかった。SNSの中で写真展で笑う中村さんと、彼の撮った空の写真を見るばかりだった。
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「生き方見本市」の当日の朝、4階スペースで設営をされていたのは、福田さんだった。まだ中村さんは来ていなかった。福田さんが教えてくれた。
「実は、中村さんは今、末期のガンなんです」と。
ぼくはまったく知らなかった。
福田さんは、続けて話してくれた。
「でも、生き方見本市への出展が決まって、復活したんです。元気になったんです。今日も後から来られます。若い人やみなさんに会えるのを、楽しみにしています」
イベントがはじまる前に、そういう話を聞いた。
けれど、ぼくは11時からのオープニング、12時からセッションのコーディネーター、そして14時、16時、17時、とずっと担当するセッションがあった。まったく4階に降りることができずに、結局、その日中村さんにお会いすることはできなかった。
ぼくは、ずっと思っていた。
どんな表情で、今日の時間を過ごされていたのだろう。
どんな気持ちになって、帰っていったのだろう。
これからどんな風に、生きていかれるんだろう。
なにを、もって帰ってもらえるだろう。
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中村さんのこの話は「生き方見本市」としては、あまりに可視化されづらい出来事だったかもしれない。きっと、みんな知らないこと。それは、8階で開催されていたゲストセッションが「メインコンテンツ(生き方見本市としてのメインストーリー)」だからだ(登壇者の人生は、主流から外れたりしていてとっても最高なんだけど)。
だけど、ぼくは、全体の統括をしながらどうしてもこういった出来事、事柄に関心がいってしまう。つい、取りこぼしてしまいそうな部分に宿る価値をみんなに共有したいと思ってしまう。
ぼくは、社会の隅に追いやられてしまったように感じられる個々のサブストーリーの中にこそ、揺るがない本物の価値があるんだって思ってるんです。これが「正しい生き方だよ」というメッセージに対して、明確なノーを出したいと思ってるんです。「生き方見本市」は、そんな気持ちでやっています。
表現しつくせないほどにいろんなことがある、いろんなことがあったその人の生き方の圧倒的なリアリティが、わたしとあなたをつなげてくれる。肩書きや、年齢や、所属や、国籍や、障がいの有無を超えてつながることができる。そこに価値がある。そう信じたいなと思うんです。
「みんな」には、興味がない。ただ、あなたの、あなただけの人生のストーリーを聞かせてほしい。メインとかサブとかを超えて。そういうものが自由に表現されうる社会であってほしい。ぼくは、そういう社会に生きていたい。
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ぼくは明日、中村さんに会ってきます。
どんな話ができるんだろう。
中村さん、待っててね。
藤本は「生き方見本市」をやって、よかったです。
◯生き方見本市KANSAI
https://www.facebook.com/ikikatamihonichikansai/
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