外国人従業員の登用を考える
5月10日の日経新聞で、「〈小さくても勝てる〉外国人材、中小で管理職に 海外からの調達リード、留学生の採用でも活躍」というタイトルの記事が掲載されました。外国人の人材を管理職として登用している事例について取り上げたものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
先日ある中小企業様から、人事評価制度を刷新したいので協力してほしいというご依頼がありました。
従来の人事評価制度は制度疲労を起こしています。これからの企業戦略を実現させ、従業員にも積極的に参画してもらう上で、大幅にリニューアルが必要というわけです。現行制度を共有していただきましたが、確かに大幅な刷新が相応しいという印象です。
加えて、同社様では外国人従業員も積極的に採用しています。今回のリニューアルを通して、外国人従業員に対する適切な評価・登用ができるようにすることも、目的のひとつという背景です。「自社で勤め上げることで自分がどのようになれるのか、なんとなくではなく、明確に認識してもらえる環境にしたい。国籍に関係なく」と同社様の社長は言います。
同社様のような例は、中小企業の中ではまだ少ないというのが実感値です。外国人従業員に対する適切な評価の仕組みがない(あるいは外国人従業員以前に日本人従業員に対しても適切な評価の仕組みがない、過去につくった仕組みが今の環境下で機能していないなど)、仕組みがあっても外国人従業員を役職登用した例がない、などです。
あるいは例えば、職能資格等級で昇格に必要な滞留年数で長い設定があって、高パフォーマーの人材であっても長期間滞留しないと昇格できないなどのルールで、外国人従業員がその会社でのキャリアの展望に見切りをつけてしまう例も多く聞きます。
「なぜそのような評価のルールになっているのですか」「なぜこの評価結果なのですか」と質問を受けて、もし的確に答えられないとするならば、そのルールや慣習はおそらく機能していないということになります。そして、外国人従業員による現状に対する素朴な疑問や主張は、日本人従業員の目線に立っても当てはまることが多いものです。
・これからの企業戦略に合う制度やルールに見直す
・国籍などの要素に左右されず、同じ考え方の制度やルールで評価、処遇、登用、育成の取り組みを行う
・そのうえで、1人ひとりの持ち味や強みを個別に見て、活用する
・そうした流れで見いだされたリーダーに対しては、バックグラウンドに関係なく他のメンバーはフォロワーシップを発揮して盛り立てる
同記事の事例からも、改めてこれらのことがポイントであると考えます。
また、同記事では、以前は海外調達に消極的だった企業文化が、外国人管理職の取り組みにより海外調達という発想を現実化させた事例が紹介されています。先日「多様性ある組織」をテーマに考えましたが、この事例などは、まさに多様性を生かすことで活路が広がった例のひとつではないかと思います。
<まとめ>
制度やルールに沿った公平な運用もそうだが、環境に合わない制度やルールの見直しも必要。