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外国人従業員の登用を考える

5月10日の日経新聞で、「〈小さくても勝てる〉外国人材、中小で管理職に 海外からの調達リード、留学生の採用でも活躍」というタイトルの記事が掲載されました。外国人の人材を管理職として登用している事例について取り上げたものです。

同記事の一部を抜粋してみます。

中小企業で外国人が管理職として活躍する例が目立ち始めた。語学力や人脈を生かし海外調達や販路拡大での活躍を見込んで登用する例が多い。

「品質を下げずにコストを削減できると、会社に貢献したとやりがいを感じる」。バルブ製造の極東製作所(北九州市)で、材料などの調達を担う張智洙(ジャン・ジス、44)購買課長は力を込める。

鉄鋼大手のポスコや現代製鉄といった韓国企業との取引が増えるなかで採用された張氏。正確な仕事ぶりが椛山秀樹社長の目にとまり、2017年に当時は5人しかいなかった本社の課長に抜てきされた。

以前は長年の取引先にこだわるあまり海外調達に消極的だった。張氏は古巣の営業課と連携し、顧客の鉄鋼大手などの理解を得ることで海外調達を大幅に増やした。ここ数年、鉄や銅などの価格が高騰しており「売上高に占める原材料費の比率を極力上げずに済んでいる」と椛山氏は張氏の働きぶりを評価する。

途上国の経済発展を担う「人づくり」を理念とする技能実習で来日した外国人材が、そのまま日本に残りキャリアアップする例もある。金属加工の三栄金属製作所(大阪市)は国内に9カ所ある工場の2カ所で、ベトナム人を工場長に起用している。

うち1人が、田島工場(大阪市)で約10人の部下を持つチャン・バン・トゥン氏(30)。技能実習生として来日し、今は人手不足対策の在留資格「特定技能1号」に切り替え働く。最長5年の1号に対し、在留資格を何度でも延長できる「特定技能2号」に移行すれば事実上無期限で働けるうえ家族も帯同できる。トゥン氏は、資格取得のため10月の試験に挑戦する考えだ。「いずれは日本に家族を呼び寄せ、永住権も取りたい」と意気込む。

三栄金属は100人いる社員の約半分がベトナム人。文敬作社長は「これから若い社員はほとんどが外国人になるはず。頑張ればステップアップできるという目標になってほしい」と期待する。

人材関連のビッグデータ分析や人工知能(AI)開発のゴーリスト(東京・千代田)では近く、インド出身のアミルカンタワル・ビベック・シャンカルラオ氏(31)が取締役に就任する。新規事業であるエンジニア評価システム開発の責任者となる。

インドの日系企業で働いていたが、日本勤務を望み18年に転職した。大学で培った高い技術力が認められ、21年に子会社の最高技術責任者(CTO)に就任。海外拠点も含め約30人のエンジニアを統率してきた。

ゴーリストはエンジニアの7割が外国人で会議は原則英語。それでも込み入ったやりとりになると言葉の壁が立ちはだかる。加藤龍代表は「日本語も英語も流ちょうな彼が意思疎通を滑らかにしてくれる」と評価する。

留学生や外国人材の採用で面接を担当するほか、内定者の相談にも乗る。増える外国人材と日本人社員をつなぐ「ブリッジ人材」として活躍する。

先日ある中小企業様から、人事評価制度を刷新したいので協力してほしいというご依頼がありました。

従来の人事評価制度は制度疲労を起こしています。これからの企業戦略を実現させ、従業員にも積極的に参画してもらう上で、大幅にリニューアルが必要というわけです。現行制度を共有していただきましたが、確かに大幅な刷新が相応しいという印象です。

加えて、同社様では外国人従業員も積極的に採用しています。今回のリニューアルを通して、外国人従業員に対する適切な評価・登用ができるようにすることも、目的のひとつという背景です。「自社で勤め上げることで自分がどのようになれるのか、なんとなくではなく、明確に認識してもらえる環境にしたい。国籍に関係なく」と同社様の社長は言います。

同社様のような例は、中小企業の中ではまだ少ないというのが実感値です。外国人従業員に対する適切な評価の仕組みがない(あるいは外国人従業員以前に日本人従業員に対しても適切な評価の仕組みがない、過去につくった仕組みが今の環境下で機能していないなど)、仕組みがあっても外国人従業員を役職登用した例がない、などです。

あるいは例えば、職能資格等級で昇格に必要な滞留年数で長い設定があって、高パフォーマーの人材であっても長期間滞留しないと昇格できないなどのルールで、外国人従業員がその会社でのキャリアの展望に見切りをつけてしまう例も多く聞きます。

「なぜそのような評価のルールになっているのですか」「なぜこの評価結果なのですか」と質問を受けて、もし的確に答えられないとするならば、そのルールや慣習はおそらく機能していないということになります。そして、外国人従業員による現状に対する素朴な疑問や主張は、日本人従業員の目線に立っても当てはまることが多いものです。

・これからの企業戦略に合う制度やルールに見直す

・国籍などの要素に左右されず、同じ考え方の制度やルールで評価、処遇、登用、育成の取り組みを行う

・そのうえで、1人ひとりの持ち味や強みを個別に見て、活用する

・そうした流れで見いだされたリーダーに対しては、バックグラウンドに関係なく他のメンバーはフォロワーシップを発揮して盛り立てる

同記事の事例からも、改めてこれらのことがポイントであると考えます。

また、同記事では、以前は海外調達に消極的だった企業文化が、外国人管理職の取り組みにより海外調達という発想を現実化させた事例が紹介されています。先日「多様性ある組織」をテーマに考えましたが、この事例などは、まさに多様性を生かすことで活路が広がった例のひとつではないかと思います。

<まとめ>
制度やルールに沿った公平な運用もそうだが、環境に合わない制度やルールの見直しも必要。

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