外国人定着率「5年後4割」を考える
5月31日の日経新聞で「日本、外国人定着率高く 5年後4割 OECDなど報告「人口比率向上へ雇用規制緩和を」」というタイトルの記事が掲載されました。日本での外国人定着率が比較的高いということを紹介している内容で、興味深く読みました。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事も参照すると、外国人定着率の高さ=日本における外国人就業環境の良さではない、ということが認識できます。むしろ、もともとわかりくく、選ばれにくい受入制度の中であえて日本を選ぶということは、最初からそれを承知で定着を視野に入れて来日している人の割合が高くなる(もちろん全員ではありませんが)、すなわち定着率が高く出る可能性がある、というわけです。
これが、より使い勝手がよく受入環境も充実した制度になることで、これまでとは異なる層も幅広く対象となっていけば、定着率は今より下がるのかもしれません。そのことを割り引いて考えても、外国人労働者の日本での定着率が比較的高いということは、今後の外国人人材活用を考えるうえで期待感も高まる事象ではないかと考えます。
そして、総人口における外国人の割合は、他国と比較しても依然として低いままです。日本以上に速いスピードで少子化と人口減少が進む韓国では、総人口における外国人の割合は4%を超えています。外国人労働者による労働力人口の確保にも力を入れていることで知られています。
どれぐらいの割合が適切なのかに正解はなく、社会的な受入インフラ、合意形成の経過次第だと思いますが、いずれにしても日本でも受け入れ拡大余地はまだあると言えそうです。
注目したいのは、「5年で4割」というのは、日本人の場合とほぼ変わらないということです。
「入社後3年間で約1/3が会社を辞める」という話をよく聞きます。この割合は、長年変わっていません。
入社後5年間での勤続率がどれぐらいか、Chat GPT-4に聞いてみたところ、(特定の調査やデータに基づくものであり、一般化させてくれるなという前提で)「一部の調査によると新卒での入社の場合約60%~70%、中途での入社の場合約30%~50%」という回答でした。「5年で4割」は、新卒と比較するとやや下回りますが、中途と比較するとほぼ同じです。
しかも、外国人受入にあたっては、「来日前に聞いていた条件等の説明と、実態が全然違う」といったトラブルも多く聞きます(技人国などの在留資格の場合、こうしたトラブルはそれほど多くはないのかもしれませんが)。もしこうしたトラブルを回避できるとするならば、職場によっては日本人の場合の勤続率とほぼ同じか、場合によっては上回るということさえあるのかもしれません。
時々企業関係者と話していると、「外国人従業員も採用しているが(あるいは採用したいが)、いずれ辞めてしまうから・・」と聞くことがあります。しかしながら、上記を踏まえると離職率はたいして日本人と変わらない、課題は入社する人材の側というより受入体制にあるかもしれないということも認識できます。
印象先行で物事をとらえていないか、振り返ってみるひとつの好例ではないかと思いました。
<まとめ>
外国人従業員の5年後定着率は、日本人とほぼ同じのようである。