外国人材受け入れを考える
10月19日の日経新聞で「外国人材受け入れの新制度 就労1年超で転職可」及び「「選ばれる国」へ新制度 外国人材、長期就労しやすく 賃金など待遇改善急務」というタイトルの記事が掲載されました。以前から問題点が指摘されていた外国人材受入の制度について、今後の展開を示唆している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
専門家の指摘の通り、これで満点というわけではないと思いますが、前進する動きだと言えそうです。
普段仕事を通していろいろな企業の方にお会いしますが、中小企業の方から「これまでは偶発的な採用にとどまっていた外国人労働者について、本腰入れて受け入れに取り組もうかと考えている。留意点や好事例などはあるか」といった質問を受けることが増えてきました。労働者数が減って日本人の採用に限界があり、外国人採用に活路を見出す必要がある環境も後押ししているようです。
外国人受け入れに詳しい知人による意見も参考にしながら、上記のような質問を受けた際、私なりにまず申しあげることは次の3点です。
・日本人の採用以上に費用がかかると考えるべき
・受け入れの目的を明確にするべき
・1人ひとりを個別に見るべき
同一労働同一賃金の考え方は、当然ながら外国人にも適用されるべきです。日本人と同じ仕事をする人材に対しては、その日本人と同額の賃金を払うべきです。しかしながら、いまだに「外国人を安く雇って、日本人がその賃金ではやってくれない仕事をやってもらいたい」と考えている一部の経営者がいます。この時代錯誤の考え方は、淘汰されるべきです。
また、そもそも今の日本企業の賃金水準では、魅力がなくなっているという事実を認識する必要があります。東南アジアの人材にとっては、シンガポールや韓国のほうが、日本より行きやすく受け入れられやすく、高賃金の国になっています。日本企業が日本人に対して払っている賃金以下のオファーでは、見向きもされないと考えるべきでしょう。
そして、日本人と同等の賃金を払ったうえで、追加で必要となる費用が発生します。日本語教育のための費用や、勝手がわからない生活や企業内の慣習について説明・フォローなどをする時間の発生などです。渡航・来日までの採用活動も、日本国内にいる日本人向け以上の費用になるはずです。これらを勘案すると、雇用するのに日本人以上のコストがかかるとまず認識するべきだと思います。
受け入れの目的について、例えば「国籍に関係なく自社の理念に共鳴してくれる多様な人材に活躍してもらい、事業を発展させる」「将来的に進出予定のある国から人材を受け入れ、進出についてのヒントを得ながら懸け橋となる人材の層をつくる」など、自社なりに明確にすることで、コストが単なる経費ではなく、投資になってきます。
目的が不明確で、受け入れの意図がなんとなくの人材補充にとどまってしまうと、受け入れた人材に関わる人の間で温度差となります。当然、適切に対応することができません。関係者の間で採用する目的意識を統一して、適切な対応に当たっていく。これは、日本人の採用においても同じだと思います。
そして、外国人材をひとくくりにせず、1人ひとり個別に対応することです。
個人が抱えている事情や将来のキャリアビジョンは様々です。例えば、いずれは出身国に帰って生活基盤を立てたいというキャリアビジョンの持ち主であれば、数年後に国に帰る前提で採用することにするのか。あるいは、日本での永住を目指している人材であれば、その気になれば自社で同人材が望むようなキャリアステップが踏める環境がつくれるのか。
宗教的な慣習なども、人によって異なります。そのような配慮と対応を個別にできることが、受け入れに必要な要素のひとつになってきます。
以前の投稿「「宮崎モデル」を考える」では、バングラデシュからのIT人材受け入れを成功させている宮崎県と関連企業の事例について取り上げました。宮崎モデルは、上記の視点をすべて網羅した取り組みになっていると言えるのではないかと思います。こうしたモデルが、このテーマで目指すべきイメージなのだと考えます。
<まとめ>
外国人材受け入れは、相手目線で行う。