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外国人材受け入れを考える

10月19日の日経新聞で「外国人材受け入れの新制度 就労1年超で転職可」及び「「選ばれる国」へ新制度 外国人材、長期就労しやすく 賃金など待遇改善急務」というタイトルの記事が掲載されました。以前から問題点が指摘されていた外国人材受入の制度について、今後の展開を示唆している内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

政府の外国人労働者のあり方を巡る有識者会議は18日、11月中にもまとめる外国人労働者受け入れの新制度に関する最終報告の素案を提示した。技能実習の事実上の廃止に伴い、未熟練労働者が1年超就労し、日本語能力などの条件を満たせば転職を可能とする案を示した。

人材確保のため外国人労働者の長期就労の道を開く。転職は同じ業務分野内でのみ可能とする。現行の技能実習は原則転職を認めていない。来日直後などの育成にかかる負担が転職前企業に集中しないための方策も盛った。転職先の企業が転職前の企業に「移籍金」のような形で代価を支払う案を検討している。

新しい制度は3年間の就労を基本とし、日本語・技能試験に合格を条件に一定の技能を持つ労働者の資格である「特定技能」に移行できる。技能実習は国際貢献を名目としたため就労後の帰国を前提とした。一方、新制度は日本でのキャリアアップを想定するため、試験に不合格だった場合でも救済措置として最長1年間の在留を許可する。

受け入れ人数は業界ごとに上限を設定する。経済情勢の変化に応じて有識者会議が意見を出し、政府が決定する。外国人の人権保護の観点から来日前に借金を背負わないように、受け入れ企業が来日前の手数料を負担する仕組みの導入を検討する。

出入国在留管理庁によると、2023年6月末で技能実習生は35万8159人いる。22年には9006人が失踪した。17年の技能実習法の施行以降、18年の9052人に次いで過去2番目の多さとなった。

失踪者が増える要因の一つは借金苦だ。来日前に本国の悪質なブローカーに多額の手数料を支払うなどして借金を抱えた状態で就労するケースがある。借金を返すため、高賃金の働き口を求めて失踪し、不法就労するケースがある。

新制度は条件付きで転職を認める。労働基準法は長期の労働契約でも就労開始から1年経過すれば、いつでも退職できると定めており、これに準じる。借金を抱えないように来日前の手数料を受け入れる企業が負担する仕組みの導入も目指す。人材の受け入れ役を担う「監理団体」の要件も厳格にする。

受け入れ企業が「安価な労働力」との認識のままでは長く働いてもらえない。技能・日本語能力の向上支援や待遇改善を進められるかどうかも論点になる。

円安が進んだことで新興・途上国の人材にとって日本の賃金水準の魅力は下がっている。中国や韓国といったアジアの国々も少子高齢化が進み、外国人材の需要は高まる。「安いニッポン」のままでは各国との競争で劣後しかねない。

国士舘大の鈴木江理子教授は「人材確保の目的を明確にした点は評価できる」と話す。一方で「人材育成を理由に転籍に条件をつけたのは問題だ」とも指摘。家族帯同を含めた生活環境の整備や「共生」に向けた意識変革が重要だと強調した。

専門家の指摘の通り、これで満点というわけではないと思いますが、前進する動きだと言えそうです。

普段仕事を通していろいろな企業の方にお会いしますが、中小企業の方から「これまでは偶発的な採用にとどまっていた外国人労働者について、本腰入れて受け入れに取り組もうかと考えている。留意点や好事例などはあるか」といった質問を受けることが増えてきました。労働者数が減って日本人の採用に限界があり、外国人採用に活路を見出す必要がある環境も後押ししているようです。

外国人受け入れに詳しい知人による意見も参考にしながら、上記のような質問を受けた際、私なりにまず申しあげることは次の3点です。

・日本人の採用以上に費用がかかると考えるべき
・受け入れの目的を明確にするべき
・1人ひとりを個別に見るべき

同一労働同一賃金の考え方は、当然ながら外国人にも適用されるべきです。日本人と同じ仕事をする人材に対しては、その日本人と同額の賃金を払うべきです。しかしながら、いまだに「外国人を安く雇って、日本人がその賃金ではやってくれない仕事をやってもらいたい」と考えている一部の経営者がいます。この時代錯誤の考え方は、淘汰されるべきです。

また、そもそも今の日本企業の賃金水準では、魅力がなくなっているという事実を認識する必要があります。東南アジアの人材にとっては、シンガポールや韓国のほうが、日本より行きやすく受け入れられやすく、高賃金の国になっています。日本企業が日本人に対して払っている賃金以下のオファーでは、見向きもされないと考えるべきでしょう。

そして、日本人と同等の賃金を払ったうえで、追加で必要となる費用が発生します。日本語教育のための費用や、勝手がわからない生活や企業内の慣習について説明・フォローなどをする時間の発生などです。渡航・来日までの採用活動も、日本国内にいる日本人向け以上の費用になるはずです。これらを勘案すると、雇用するのに日本人以上のコストがかかるとまず認識するべきだと思います。

受け入れの目的について、例えば「国籍に関係なく自社の理念に共鳴してくれる多様な人材に活躍してもらい、事業を発展させる」「将来的に進出予定のある国から人材を受け入れ、進出についてのヒントを得ながら懸け橋となる人材の層をつくる」など、自社なりに明確にすることで、コストが単なる経費ではなく、投資になってきます。

目的が不明確で、受け入れの意図がなんとなくの人材補充にとどまってしまうと、受け入れた人材に関わる人の間で温度差となります。当然、適切に対応することができません。関係者の間で採用する目的意識を統一して、適切な対応に当たっていく。これは、日本人の採用においても同じだと思います。

そして、外国人材をひとくくりにせず、1人ひとり個別に対応することです。

個人が抱えている事情や将来のキャリアビジョンは様々です。例えば、いずれは出身国に帰って生活基盤を立てたいというキャリアビジョンの持ち主であれば、数年後に国に帰る前提で採用することにするのか。あるいは、日本での永住を目指している人材であれば、その気になれば自社で同人材が望むようなキャリアステップが踏める環境がつくれるのか。

宗教的な慣習なども、人によって異なります。そのような配慮と対応を個別にできることが、受け入れに必要な要素のひとつになってきます。

以前の投稿「「宮崎モデル」を考える」では、バングラデシュからのIT人材受け入れを成功させている宮崎県と関連企業の事例について取り上げました。宮崎モデルは、上記の視点をすべて網羅した取り組みになっていると言えるのではないかと思います。こうしたモデルが、このテーマで目指すべきイメージなのだと考えます。

<まとめ>
外国人材受け入れは、相手目線で行う。

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