不動産競売 入札編①物件明細書
不動産競売の一番の基礎。3点セット。
今回はこの3点セットの中でも
「物件明細書」についてみていきます。
■物件明細書とは?
入札して、落札できた場合にどのような「おまけ」があるのかないのか?
■一般の不動産取引で不動産を購入する場合は、
①投資用不動産であれば、賃借人(お部屋を借りている人)が住んでいる、住んでいない。などや
②一般の住宅でご自身らが住む家の場合は、空家で取引する。
大きく分けるとこの二つに分かれます。
競売で購入する場合でも買った後はどのようなことになるのか?
それを物件明細書に記載されているのです。
それでは、物件明細書に書かれている内容を見ていきましょう。
まず、ここに書かれている内容は
1.不動産の表示
2.売却により成立する法定地上権の概要
3.買受人が負担することとなる他人の権利
4.物件の占有状況等に関する特記事項
5.その他買受の参考となる事項
上記の5項目によって書かれています。
一般的な記載は下記内容です。
初めて入札される方は、下記の内容の物であれば比較的ややこしくはないです。但し、物件明細書だけでの判断なので、それ以外の内容によっては確認するポイントもありますのでご注意ください。
【一般的な記載例】
1.不動産の表示
【物件番号1,2】
別紙物件目録記載のとおり
※上記の番号は入札される不動産の数によって変動あります。
2.売却により成立する法定地上権の概要
なし
※一般的な物件では「なし」になっています。
3.買受人が負担することとなる他人の権利
【物件番号1,2】
なし
※上記の番号は1の不動産の表示と同じです。
4.物件の占有状況等に関する特記事項
【物件番号1,2】
本件所有者が占有している。
※上記の番号は1の不動産の表示と同じです。但し、所有者が占有していない場合は記載が異なります。
5.その他買受の参考となる事項
なし
この内容が一般的な物件の内容です。まずはこの内容の入札物件から見てみると良いでしょう。
■それではそれぞれの項目を詳しく見てきます。
1.不動産の表示
※ここは、今回入札される不動産の情報が書いています。
買った人に対して何かあるようなことは書いていません。買うお家の情報のことを伝えています。
2.売却により成立する法定地上権の概要
※法定地上権(ほうていちじょうけん)
簡単に言うと、お家を買う場合は、「土地」と「建物」二つの不動産があります。
そのうちの「土地」のみ購入して、「建物」は他人のお家の場合。
土地だけは自分の物になりますが、建物は自分の物になりません。建物に住んでいる人からしたら、土地の持ち主が代わって出て行けと言われても困りますよね。
なので、建物の人は「法定地上権」で守られることになります。
ここで、「法定地上権あり」と、なっていたら、土地と建物を一緒に自分の好きに使えませんよ。ってことが書かれています。
3.買受人が負担することとなる他人の権利
こちらで記載されるのが
①地役権(ちえきけん)の設定
入札される不動産に他人の権利として、通行する権利や高圧電線が通るために設定されたりします。
家で住むためには何ら支障はありませんが、地役権が設定されている箇所につき制限がされたりします。
②最先の賃借権(さいせんのちんしゃくけん)
落札した後も賃借人(家や建物などを借りている人)は住み続ける、使用し続けることができます。そのため、落札しても退去(家などから出て行ってくださいと言えない)してもらうことができません。
ご自身が住みたいと思っている家であれば、入札は不向きです。
収益不動産として貸し出しされる場合は逆に向いています。
※上記以外にもありますが、代表的なものを記載しました。
4.物件の占有状況等に関する特記事項
所有者以外の人が占有している、賃借している場合に記載されます。
例えば、
①使用借権(しようしゃくけん)
無償で借りている人がいる場合。
②6か月猶予
落札後、残代金を支払ったあと、6か月間は住むことができる賃借人がいる場合に記載されます。
※上記以外にもありますが、代表的なものを記載しました。
5.その他買受けの参考となる事項
記載される文言を記載します。
①本件土地の一部は通路(私道)として利用されている。売却対象外の土地を通行のため利用している。
※自分の土地を他人が通行のため利用してます。また、家に住んでいる人も他人の土地を利用して通行しています。
②占有者○○が改装費及び造作費を支出した旨を主張している。
自身が支出した改装費の支払いを求めてくる可能性がある。
③本件土地上に現存しない建物の登記が存在する。
建物はないけど、登記簿には建物が存在していることになっています。この場合は建物の抹消登記を行うことがでてきます。
④物件○○を承役地(しょうえきち)とする地役権設定登記がある。
承役地は他人がその土地を利用することで使い勝手がよくなる時に使います。なので、ここでは自分のためではなくて、他人のために土地を利用させている場合をいいます。
⑤本件建物のために、その敷地につき借地権が存する。買受人は、地主の承諾又は裁判等を要する。
借地権の場合、原則、地主の承諾(許可)を得て利用できるようになります。なので、地主が承諾してくれなければ利用することができません。地主の承諾が出ない場合は、裁判所へ申し立てをして地主の承諾に代わる許可をもらうことになります。
⑥管理費等の滞納有
マンションであれば、マンションの管理費などが必要となります。その支払がされていない場合、落札した人が所有者に代わって支払うことになります。
以上、こちらも代表的なものを記載しました。
割とこの項目は色々と記載されていることが多いので、要チェックです。
お時間あれば、色々な3点セットを覗いてみるとおもしろいです。
様々なことがかかれていますし、それに対する執行官の意見もあります。
次回は現況調査報告書について説明していきます。
※筆者の紹介
前職の会社で約2年半で競売物件60件程度の落札、占有者交渉、リフォームプランニング、売却を手掛ける。
勤め先の会社では強制執行をしなくても良いように占有者との交渉で対話を重ねる。結果、自身担当での強制執行は0件。現地調査、裁判所記録閲覧、3点資料の読み込みにより写真から占有者の性格等を読み込み、入札する、しないなどを選別する。反社会的勢力の所有が疑わしい物件を写真から判断。そして現地管理人へのヒアリングで確認すると的中するように至る。
やり方がわかれば簡単です。何か難しそうであったり、落札後のリスクが読めないため入札を躊躇される方も多くいらっしゃると思います。ですが、しっかりと注意点を抑えていけば何も難しくもなく参加できるので、安く買いたいとお考えの方は一度競売を考えてみてはいかがでしょう?
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