オフコース 秋の気配 50才を過ぎて気づくクズ男の歌
悪いのはどっち?
仕事中にラジオから懐かしい曲が流れた。「秋の気配」をこんなにストレートに聞くのって何年ぶりだろう。かみしめながら聴いているとふと、歌詞の一部が耳に残った。
あの歌だけは他の誰にも歌わないでね
「ただそれだけ」
え?これ、誰が言ってる?
大いなる川のように時は流れ
戻るすべもない
僕があの歌を他の誰かに歌っちゃって
やっちゃったことは戻せないってこと?
それで彼女が怒ってる?
えええ!
ってことは
あなたの声が小さくなる
僕は黙って外を見てる
目を閉じて息をとめて遡るほんの一時
港が見下ろせる小高い公園のそばの喫茶店で
彼女が僕のやらかしを責め立てている。
そのガミガミ声に辟易してる僕は「外を見て」現実逃避のために脳内でフェイドアウトしつつ、しかも目を閉じて息もとめてほんの一時情報を遮断しているってこと!?
こんなことは今までなかった
僕があなたから離れて行く
彼女に対する言い訳を考えてみても
その姿もその声も僕の気持ちも
小さくなって遠ざかるだけで何も出てこない
こんなことは今までなかった
別れの言葉を探してる
本当に悪いと思うなら土下座しても良さそうなシチュエーションに別れの台詞ばかり考えている僕は単なる逆切れ男状態だ。
他の女にちょっと歌ったくらいでたったそれだけじゃねーかよ
しかももはや美しい情景描写ばかりしてて心ここに有らず状態だ。
あぁ、嘘でもいいから微笑む振りをして
おいおい!これは心の中の言葉か?
それとも心の声を口に出しちゃってるんか?
僕の精一杯の優しさを
あなたは受け止めるはずもない
もしこの言葉を彼女に言っちゃったら
それが精一杯の優しさなんて思ってたら
まさに逆ギレそのものだ。
もし、僕が微笑む振りをしたなら
嘘でもいいからと言う表現にはならない
僕の精一杯の優しさで微笑む振りをした
になるはずだ。彼女にしてみたら嘘でも微笑むなんてできるわけ無い。
だって彼はミュージシャンで、他の女にもお前だけ~って歌ってる訳でしょ。浮気の証拠も無しにそこまで怒るはずがない。
逆のパターンを想定する。
彼女が僕に対して
嘘でもいいから微笑む振りをして!
と懇願したとする。
そこで僕の精一杯の優しさをあなたは受け止めるはずもない
懇願しておいて受け止められないなんて一体僕は彼女に対してどんな顔してたんだ?
誠意の欠片もない顔をしておいて僕の優しさってどれだけクズなんでしょう
こんなことに気づくのに40年近くかかってしまった。
中学生の私は「外を見てる」の言葉を見落として、聞き落としていたのだ。この二人は港の見える丘公園を歩いていると思い込んでたのだ。我ながら何という節穴だ。
彼女があの歌を私のためだけに歌って!と縛るのも悪いかも知れない。でもその後の対応は男の方が明らかに良くない。
この男は彼女が責め立てている間、脳内ではあ~あ~あ~とノイズ音で彼女の言葉をかき消し窓の外の流れる雲を見ながら次の歌を考えている状態なのだ。
そこで浮かんだメロディーが名曲となり
長年愛される曲となったのなら、彼女も諦め納得せざるを得ないだろう
オフコースの二人に共通する歌詞に
「縛る」「縛られる」「縛られたくない」
が頻繁に出てくる。当時の私には理解したくてもなかなか理解できなかった言葉だった。
もちろん今ならめちゃめちゃよくわかる。
クズの気持ちが手に取るようにわかるようになるなんて
吾もまた葛の茂みにはまりけりしみじみ思う秋の夕暮れ。
#オフコース #小田和正 #秋の気配