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余談『ガル学。』を振り返って

今から二年前――2019年の夏の終りになる。
代々木八幡の駅近くのカフェにアニメ制作会社の年下のプロデューサーに呼び出されると、そこにはおはスタのプロデューサーもいた。
「おはスタで三分くらいのアニメを作ってほしいんですけど、この子たちをメインにして作ってほしい」
そうして資料を渡されたのがGirls²の子たちの資料だった。
資料といってもWEBの記事の引き写しだったり、好き嫌いなどが書かれたメモだったり、あとは彼女たちが書いたマスコットキャラクターのようなイラストが提示されたりもした。

そうした資料をたたき台に、三分間でできることなどたかが知れており、おはスタといえば小学生未就学児童から見る朝の番組だ。
頭の中ではどこかギャグアニメなどのイメージが浮かび、ウゴウゴルーガ的な謎の生命たちと彼女たちが学校で学んでいるという不条理系のコミカルなアニメにしてみては提案し、最初の企画提案書を作り上げる。

それから三ヶ月――。

返事もなく、まあいつものように企画が流れたのだろうと思っていたところに突然の連絡。
あの企画をスタートさせたいので打ち合わせを組みたい――。
最初はアニメの制作会社で顔合わせをしたような気もするが、最終的なキックオフのMTGの場所はLDHさんとなった。

Girls²はパフォーマンスグループである。
だからこそ歌とダンスは盛り込みたい。
そして感動できること。
そんなオーダーをそこで受けたと思う。

三分アニメでどうやって感動させるのだ?

登場人物は9人もいる。
皆がメインである。
だがそこは感動というキーワードがある以上、ドラマを作らねばならず、誰かひとりに気持ちを乗せる必要がある。
だからこそ「主人公をひとり決めたい」と事務所のプロデューサーに確認し、トアが主人公となった。
(もう少し前から主人公は誰か説でいろいろ紆余曲折はあったがこの会議で決まったのは間違いない)

そこからキャラクターのキーカラーや、髪型、衣装などいろいろと具体的なアイデアを出し合い、自分は一年間毎週放送で50話、一話あたり二分くらい(OP/EDいれて三分)のアニメを作ることになった。

分数だけで言えば、一回あたり2分~2分半のアニメで、全50話。
尺だけでいえば1000分前後ということで、普通の30分枠のTVアニメでいえば5話分相当(実尺20分)。
半年もあればひとりで書ける分量ではある。
しかし――。

「放映は今度の4月からなんで」
「待て。放映開始まで三ヶ月しかねえだろ」
ということで構成を急いできりつつ、ドラマを考えつつ、同時に足りない要素などを洗い出し、一気に物語を書いていく。

とはいえ当時、他の仕事もそこそこ抱えていたので
1・自分がプロットを書く。
2・アシスタントがそれを元に草稿を書く。
3・自分が直す。
4・本読みにかける。
――そして修正という繰り返し。
会社で受けたからこそできる上司と部下の連携によるパワープレイであった。

そんな感じで構成と脚本を同時並行で進めていき、
放映前の3月には構成が固まり曲の発注数なども見えていた。
脚本も40話くらいまでに着手していて、クリスマスのあのマフラーシーンとかも書いていた。

最初は軽い気持ちで受けた仕事なので、すぐに終わらせて次の仕事に移ろうと思っていたりもした。
けれど――、
Girls²としての活動が新型コロナの自粛生活の流れを受けて色々と中止に。
そんな厳しい時期だからこそ、このアニメで少しでも彼女たちの力になってやれればと思うようになっていた。

今、振り返れば本読みは音楽プロデューサーに「こんなに曲入れて大丈夫っすか?」というのと同時に「こんなにダンスシーンあって大丈夫?」とアニメのプロデューサーの顔色を伺う感じで進んでいたような気もする。
正直いうと、もっと軽い仕事だと思っていたの、いつしか自分の仕事の真ん中になっていたのも事実。
そして脚本打ちでは音楽プロデューサーとミサキ、ヨウカのやり取りで盛り上がり、ふたりでそれっぽく手を握り合い、見つめ合い、演技をしてみることもあった。
それぐらい熱が入り始めてもいた。

そしてその中でデモ曲などを聞いて、映像のイメージを膨らませ、曲中の台詞などを練り上げ、脚本を完成させていったのである。

収録もできる限り立ち会って、台詞や芝居の確認をして、彼女たちが成長していく様をガラス越しに見ることができたのは、とてもいい思い出である。

そしてアニメの仕事も終わり、放映を楽しく見、気がつけば毎朝、おはスタを見るようになってしまっていた。
というかあの時間に起きる体になってしまっていた。

そして気がつけば、ガル学アニメライブ2021の構成台本も作らせていただき、アニメとリアルの連動を図るという他ではできないことをやらせてもらえたのは自分にとっても大きな経験だったかもしれない。
リハで彼女たちがパフォーマンスで汗を流す姿――、

まさに真剣そのもの。

自分はそこまで仕事に真剣に向き合っているだろうか――などと自問自答したりもした。
あの瞬間に立ち会えたのは、自分にとって意味のあるものだったかもしれない。

ライブの収録で演技パートの指導をしたりしつつ、これでGirls²たちとの仕事も終わりか――と思っていたところに、
「実写でドラマやります」
という話を持ちかけられ
「脚本は藤咲さんしかいないと思うんで」と声をかけられたまではいいものの
「いつから撮るの?」
「GW明けにクランクインです」
と言われたので、ほんと仕事は突然ふってくるよな――と思った次第。

このドラマのことは以前にも書いたと思うので割愛しますが、それでも楽しい仕事でした。


そんな『ガル学。』、まさか出るとは思っていなかったBlu-rayが発売されたので、なんかここ最近、一番うれしい出来事だった気がします。

そしてこの続編にあたる
『ガル学。Ⅱ ~Lucky Stars~』も2022年1月10日から『おはスタ』にて毎朝放送開始なので、実に楽しみです。こちらも脚本つとめております。

お楽しみに。
(なぜか番宣みたいになってしまった)



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