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知識ゼロからわかる! - 「21世紀の資本論」で学ぶ、未来を変えるお金のヒミツ

トマ・ピケティってどんな人?

フランス出身の経済学者トマ・ピケティさんは、世界のあちこちの国々で「人々のお金の分配がどう変化してきたか」を歴史的に調べました。たとえば「100年前のフランスでは、国全体のお金のうち、どれくらいがお金持ちの手にあったのか?」とか「アメリカでは、富裕層(お金や財産が豊富にある人たち)が過去と比べてどれだけ増えたのか?」といったテーマを、大量のデータを集めて分析したわけです。

この研究はとても大変です。なぜなら、お金持ちがどれだけ資産を持っているか、正確に調べるのは難しいからです。税務署などのデータを頼りにするのですが、それも全部が全部正確な数字とは限りませんし、国ごとに仕組みやルールが違います。そんななか、ピケティさんはできるだけ正確なデータをかき集めてきて、綿密に分析しました。その結果わかったことは、大雑把に言えば「時代が進むと、お金持ちはますますお金持ちになっている」という事実でした。


資本論ってそもそも何?

「資本論」と聞くと、カール・マルクス(19世紀の経済学者、社会主義の理論を打ち立てた人)が書いた『資本論』を思い浮かべる人もいるかもしれません。ピケティさんは、そういった経済学の大先輩たちが残した研究を継承しつつ、現代版の「資本論」を作り上げようとしました。だからタイトルに「21世紀の資本論」とつけたのです。

ここで言う「資本」とは、「お金を生むために使われる財産」のことを指します。たとえば

  • 銀行に預けたお金

  • 株(企業に出資し、配当や値上がり益を狙うもの)

  • 不動産(土地や建物)

  • 絵画や骨とう品など、値上がりの期待ができる資産

などなど、いわゆる「持っているだけで、ある程度の収益が入ってくるかもしれないもの」が資本です。ピケティさんは、この「資本」がいかに格差の元になっているのかを問題提起しているんですね。


ピケティの主張を一言で表すなら「r > g」

ピケティさんの研究で有名なのが「r > g」というキーワード。ここで出てくる

  • r:資本収益率(持っている資本から生まれるお金の伸び率)

  • g:経済成長率(国全体の経済がどれくらい成長しているかの率)

というものです。

簡単な例をあげましょう。

4.1 r と g のイメージ

  • g(経済成長率):社会全体がどれくらい豊かになるかのペース。たとえば毎年3%ずつ経済が成長すると、10年後にはかなり国全体の生産量や所得が増えているわけです。

  • r(資本収益率):持っているお金(資本)がどれだけのペースで増えるか。たとえば銀行にお金を預けて毎年5%の利子(利息)をもらえるとしたら、資本収益率は5%になります。

ピケティさんが分析した結果、「歴史的に見ると、だいたいどの時代も r(資本収益率)のほうが g(経済成長率)よりも大きくなりがち である」という傾向が見られたのです。どういうことか、もう少し具体的に考えてみましょう。

4.2 身近な例え話

  • みなさんが銀行に100万円を預けたとします。1年間で金利(銀行に預けるとつく利息の割合)が5%つくとしたら、1年後には105万円になっていますよね。これは r = 5% です。

  • 一方で、日本全体の経済が1年間で2%成長したとします。すると給与や物価は平均で2%しか上がっていない。これは g = 2% です。

この場合、r = 5% > g = 2% になります。つまり「銀行にお金を預けるだけでも、社会全体の経済成長より速く資産が増えていく」ということなんですね。

もちろん世の中、金利が5%なんて夢のような時代はなかなかありません。けれど株や不動産など、うまく運用できれば「5%以上」で増やすことは十分ありえます。そうなると、もともと大きな資本を持っている人ほど、どんどん資産が増えていくわけです。


なぜ「r > g」が問題になるのか?

「資本を持っている人が、お金を増やしやすいのは当たり前じゃないか」と思うかもしれません。確かにそうです。お金を持っている人がさらにお金を増やせる仕組みは、資本主義(経済の仕組みの一つ。私的に財産を持って自由にビジネスし、利益を追求できる)の基本とも言えます。

しかし問題なのは「格差が大きくなりすぎると、社会全体に悪影響が出るかもしれない」という点です。具体的には、こんな悪影響が考えられています。

  1. 富の偏りが固定化する

    • お金をいっぱい持っている家系や家族が、その資産を次の世代へ相続することで、子孫がさらに資本を増やしていける。

    • そうすると、元々あまり資本を持っていない家庭との間で、格差が埋まらないばかりか、どんどん広がり続ける。

  2. 社会の活力が落ちる可能性

    • お金のある人だけが良質な教育を受けられ、良い仕事につけるようになると、新しいアイデアやビジネスが生まれにくくなる。

    • お金のない家庭の子どもたちは、せっかく優秀でも大学進学や起業が難しくなる。結果、社会全体のチャンスが減り、経済のダイナミズム(活力、変化する力)が失われる。

  3. 政治や法律が特定の富裕層の都合で動きやすくなる

    • 資本がある人は政治に影響力を及ぼしやすく、税制(税金に関する仕組み)や法律を自分たちに有利に変更してもらえるかもしれない。

    • そうなると格差はますます広がり、一般の人たちは不満を抱え、社会は不安定になる。

ピケティさんが特に強調するのは、こうした格差が「運が良かった一部の人」の子孫だけに集中してしまうことで、世の中の不平等がさらに強まる可能性です。そこで、彼は何かしらの対策が必要だと考えます。


ピケティさんの提案:「グローバル資本税」のアイデア

ピケティさんは、このまま放っておくと「資本を持っている人」がますます強くなり、「持っていない人」との格差が拡大する一方だと警告しています。そのうえで、対策として「グローバル資本税」のような仕組みを提案しています。グローバル資本税とは、世界的に連携して、富裕層が持つ資本に対して一定の税率をかける制度です。

たとえば、「超大金持ちには毎年○%の資本税を課す」というルールを全世界的に設ける。そうすると、その税金を社会保障(医療、年金、失業対策など)や教育投資などに回せるわけです。そうすることで、格差があまりにも拡大するのを防ごう、というアイデアなんですね。

しかしながら、この「グローバル資本税」は実際に導入するのが非常に難しいとされています。なぜなら、世界にはたくさんの国があり、国ごとに政治体制も違えば利害関係も違うからです。ある国が「富裕層に税金をかけよう」としても、別の国が「じゃあうちは税金をかけません」と言い始めれば、お金持ちはその税金の安い国へ移ってしまいます。いわゆる「タックスヘイブン(税率が極端に低い国や地域)」と呼ばれる場所がそうした例です。


「21世紀の資本論」のインパクト

「21世紀の資本論」は、発売されると世界中で大きな反響がありました。普通の経済学の本は専門家や大学生が読む程度のものが多いのですが、ピケティさんの著書は一般の人にも注目され、各国でベストセラーになりました。その理由としては、

  1. 格差の拡大を裏付ける大量のデータを提示

    • ピケティさんはフランス革命以前や19世紀、20世紀など長い歴史のデータを比較し、「いまの状況は歴史的にも特別なのか、それとも昔からそうなのか」を示した。

    • その分析の綿密さに、多くの読者が「これはただの意見ではなく、実際の統計に基づいている」と納得した。

  2. 「r > g」というシンプルでわかりやすい表現

    • 経済学では難しい数式やグラフが使われることが多いですが、ピケティさんは「資本収益率が経済成長率を上回る傾向がある」という一行で本質を示した。

    • そのシンプルさゆえ、広く話題になった。

  3. いまの社会的テーマと合致した

    • インターネットが発達し、SNSで情報を得やすくなった現代。大企業の経営者や投資家の莫大な資産が目立ち、一般の人々との落差が問題視されていた。

    • ピケティさんの本は、この「格差社会」の背景を丁寧に解説し、解決策の一端を示したことが大きかった。


反対意見もある

もちろん、ピケティさんの主張に対しては批判や反対意見もあります。たとえば、

  • 「データの取り方に偏りがあるのでは?」

    • 国ごとに経済成長率や富裕層の定義が違う。単純に「r > g」と言い切れないのではないか。

  • 「規制が強すぎると経済の活力が落ちる」

    • 富裕層に重い税金をかけすぎると、投資意欲が失われ、経済全体が停滞する可能性がある。

  • 「世界で統一した税制は実現が難しい」

    • さっき述べたように、どこか税金の安い国がある限り、富裕層はそちらに資産を移してしまうため、グローバル資本税を世界全体で実行するのは非現実的だ。

しかしピケティさんの狙いは「じゃあどうやって世界で協力して、格差拡大を放置しない社会を作れるか」という議論を深めることにあったようにも見えます。理想論に近いアイデアでも、議論のきっかけとしては大きな意味を持つわけです。


ピケティ理論をもっと身近に感じるために

「資本家」とか「富裕層」という言葉は、なんだか別世界のように聞こえるかもしれませんが、日本でも似たような話題がニュースで取り上げられることがあります。

たとえば「相続税(親や祖父母が亡くなったとき、受け継ぐ財産にかかる税金)をもっと高くすべきだ」という意見があります。これはピケティさんの「資本は代々受け継がれるので格差が固定化しやすいから、そこに税金をかけよう」という考え方と近いですね。

また、「所得税(働いて得た収入にかかる税金)よりも、資産に対する税金を重視すべきだ」という意見も出ています。働いて得るお金(サラリーマンの給料など)よりも、株や不動産などの資本から得る利益にもっと税金をかけたほうが、不平等が緩和されるのでは、という考え方です。


「21世紀の資本論」から学べること

ここまで読んで、ピケティさんの本に興味が湧いたでしょうか? もし「いや、まだちょっと難しそうだな……」と感じていても安心してください。実は「21世紀の資本論」は非常に分厚く、専門用語もたくさん出てくるため、最初から最後まで読むのは確かに大変です。でも本質は「資本主義の下では、資本を持つ人が有利になりがちである。だから格差が広がりやすい。どうバランスを取るか?」という問いかけです。

この問いは、現代を生きる私たちみんなに関わるテーマです。なぜなら、私たちも銀行や証券会社にお金を預けたり、株を買ったり、住宅ローンを組んだりする生活の中で「資本」と無縁ではいられないからです。将来のために投資をするという動きは、今や多くの人にとって身近になってきました。

  • 「NISA(ニーサ:少額投資非課税制度。一定額まで株や投資信託の利益が非課税になる制度)を利用してみよう」

  • 「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金。自分で積み立てる年金)で将来に備えよう」

など、資本を作るチャンスは以前より増えてきているとはいえ、もともとまとまったお金がない人はなかなか投資もできません。そうなると、やはり資本がある人とない人との違いがどんどん開くことも想像できますよね。


ピケティの理論を踏まえた私の意見と提案

それでは、「21世紀の資本論」を踏まえて、私からの意見や提案をいくつかお伝えしますね。あくまで一つの考え方ですが、みなさんの日々のニュースの見方をちょっと変えるヒントになればと思います。

  1. 自分なりの“資本”を見直してみる

    • 「資本」というのはお金だけではありません。知識や技術、人脈なども長い目で見れば“資本”の一種です。

    • ピケティさんの本を読んで「金持ちになるためには莫大な資本が必要」と落ち込むのではなく、「じゃあ自分は何か人にはないスキルやネットワークを持っているだろうか?」と考えてみると、ポジティブになれるかもしれません。

  2. 社会の仕組みに関心を持ち、選挙などで意見を表明する

    • ピケティさんが説いたように、格差の拡大は政治や法律の問題とも深く結びついています。

    • 「自分には関係ない」と思わずに、選挙でどんな政策を掲げる政党や候補者がいるのかをチェックしてみるのも大切です。

    • もし重い税金を課すことに反対なら「それはなぜか」を整理し、賛成なら賛成で「どんな効果があるか」を考えると、社会のしくみがクリアに見えてきます。

  3. 投資や資産運用の勉強を少しずつ始めてみる

    • 資本から得られる収益がどのように働くかを体感するには、小さくてもいいから自分で投資をしてみるのが一番わかりやすいかもしれません。

    • ただし投資にはリスク(危険性)も伴います。証券会社の口座をつくる前に、投資信託や株、債券(国や企業が発行する借金の証書のようなもの)などの仕組みをちゃんと理解してから始めることが大切です。

  4. 今後の世界の流れに注目する

    • 格差の問題は、デジタル技術の発展やグローバル化でさらに複雑になっていきます。

    • ピケティさんの提案通りにグローバル資本税が実現する可能性は低いかもしれませんが、各国で富裕層に対する税率の見直しや、ベーシックインカム(最低限の生活費を全員に支給する制度)の導入など、さまざまな社会実験が行われるかもしれません。


ステップバイステップで「21世紀の資本論」を理解する手順のおさらい

ここで、一連の説明を簡単にまとめておきましょう。

  1. ピケティさんの背景を知る

    • フランスの経済学者。歴史的なデータをたくさん分析し、格差の実態を明らかにした。

  2. 「資本論」というタイトルの意味を知る

    • マルクスの『資本論』を意識しつつ、現代版の資本論を作り上げようとした。

  3. 「r > g」の本質を理解する

    • 資本収益率 (r) が経済成長率 (g) よりも高い歴史的傾向があり、結果としてお金持ちがますます資産を増やしやすくなる。

  4. 格差拡大の問題点を把握する

    • 富の偏り、社会の活力低下、政治のゆがみなどにつながる可能性がある。

  5. ピケティさんの提案を知る

    • グローバル資本税などを活用して、極端な格差の拡大を抑える方法を提示した。ただし実現は困難。

  6. 反対意見や批判を理解する

    • 税制の難しさ、投資意欲の低下への懸念などがある。

  7. 自分ごととして考える

    • 投資や資本という考え方は決して遠い話ではなく、誰でも少しずつ関わっている。

    • 社会の仕組みを理解し、選挙や日々の行動につなげることが大切。


まとめ:自分の視野を広げるきっかけに

ここまでで、なんとなく「21世紀の資本論」の全体像がつかめましたか? もし読みながら「へえ、そういうことだったのか」と思っていただけたら嬉しいです。

ピケティさんの議論は簡単にいうと、「過去の長い歴史を調べると、お金持ちがますますリッチになりやすい傾向が見て取れる。だから社会として格差対策が必要なんじゃないか」 というもの。そしてその裏には「r > g」という強力な分析モデルがあります。

もちろん、全員がお金持ちになれるわけではありませんし、富裕層を悪者にして税金をどんどん上げれば解決というほど単純でもありません。しかし、多くの人がこのテーマを気にかけないと、社会の仕組みは変わりません。少なくとも「なんであの人たちはあんなにお金を持っていて、自分はこんなに苦しいんだろう?」という疑問の背景を理解するうえでは、ピケティさんの本は非常に参考になります。


最後に

もし、この文章を読んで少しでも「ピケティの話、ちょっと読んでみようかな」という気になったら、いきなり分厚い原著ではなく、日本語の解説書や要約本からでも十分です。また、ピケティさん自身がインタビューで語っている動画や記事などもネットで見つけられます。そういったものからスタートしてみるのもいいでしょう。

みなさんが、この「21世紀の資本論」をきっかけに、「格差ってなんだろう?」「税金ってどんな仕組みなんだろう?」「将来の自分のお金はどう増やせばいいんだろう?」という疑問を少しでも解決し、日常生活での選択肢を広げるお手伝いができたら、とても嬉しいです。

もしほかにも「ここがよくわからなかった」「もっと詳しく知りたい」という点があれば、遠慮なく声をかけてくださいね。みなさんがこの文章を読んで飽きずに最後まで楽しめたなら幸いです。

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藤川忠彦
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