■ 図解総研さんに制作いただいた『逆プロポ』の構造
複雑な社会課題やビジネススキームを、わかりやすく図解で説明することに取り組んでおられる「図解総研」さんが、『逆プロポ』の仕組みを、図解にしていただきました。ありがとうございます。
『逆プロポ』は、今も多くの企業や自治体からお問い合わせを頂戴するソーシャルXの基幹サービスです。かなり認知度や仕組みは知られてきていると思っています。
基本的な仕組みは、民間企業が取り組みたい社会課題を世の中に問うて、一緒に取り組みたい自治体が公募にエントリーするというシンプルなものです。しかし、実際にこれを運用しようとしても、多分普通に難しいと思います。このサービスをローンチしてから3年ほどが経とうとしてますが、独自のノウハウが運営には必要だと感じています。
ではどんなノウハウが必要なのか?
図解総研さんの図で言えば、右にある「社会課題解決につながる適切な問いを立てる」というところだと思います。アインシュタインは、問いと解決にどれくらい時間を費やすかと聞かれたときに、60分あるとすれば55分を問いの立て方に費やし、残り5分を解決策の検討に費やすみたいなことを述べたそうです。その感覚だと思います。
先日一冊の本を読みました。盲目の学者・アイエンガー氏の「THINK BIGGER」。
今年読んだ本の中では、山口周さんの「クリティカル・ビジネス・パラダイム」と並ぶ良書です。
このアイエンガー氏の著書に、「逆プロポ」で実際にどのようなことをしているのか、そのヒントが多数散りばめられているような気がしました。
以下、書評と重なりますが、抜粋をしながら感想を書いていきたいと思います。
■ 「逆プロポ」に通じるアイエンガー著「THINK BIGGER」!
「逆プロポ」で取り組んでいるのは社会課題解決です。行政が持つアセットと、民間企業が持つアセットを組み合わせて、新しいイノベーションを生もうとするものです。ただ、自治体と民間企業が組み合わさっても、実際にはうまくいっていないケースも散見されます。それは両者が噛み合っていないことや、なんの加工も加えずに、単にマッチングさせているからに他なりません。
そうなんですよね。
ここで述べられるように、やはり解決したい価値ある課題を発見できるか、それが社会課題解決の最大のキーポイントではないかと思います。
好奇心というのは本当に大切。この後、書かれていることにもつながっていきますが、既存のものと異なるものを組み合わせるのは、いわば好奇心がなせる技ではないかと思います。
本書には何度か書かれているのですが、たくさんの人数で問いを立てても、創造的なことは考えられないということが述べられます。少人数でありかつ、多様な深い経験を積んでいる人が集まる必要性です。
官民共創がうまくいかない理由としては、「ピースの質」が悪いというのがあるかもしれません。そもそも「ピース」がない場合もあります。
この辺り、「逆プロポ」で課題設定する際は、重要なポイントな気がします。
デザイン思考で超えられない壁については最近様々なところで聴くようになりました。逆プロポも顧客中心主義でありながら、この「発想」については、Think Biggerの考え方に沿って進めているように感じます。
そうなんですよね。自治体にとってはその社会課題の課題の「内側」にいて、企業にとってもその社会課題は課題の「内側」にいるのだと思います。だからその課題の捉え方がどうしても限られてくるのだろうと感じます。
そうなんです。社会課題を解決しようとするとき、私たちは領域外を探索しようとしているのです。だから「逆プロポ」という仕組みだけコピペしたとしても、絶対にうまくいかないように思います。
多様な人でディスカッションすることが重要。鳥の目、虫の目に加えて、岡目八目が必要なのだと。そしてその岡目八目には、多様な経験に裏打ちされた本棚が必要。「逆プロポ」は長年、属人的なサービスであったものの、ここにきて、ノウハウや経験のデータベース的なものができたことにより、サービスの品質が高い水準で安定的になってきているように思っています。
この辺りは、確かにそうだなと本書を読んで感じるようになりました。失敗の本質っていう本もありますが(それは素晴らしいと思いつつ)、失敗から学べることは「失敗の仕方」。そうではなく、成功するためには、「成功の体験」を学ぶことが何よりも重要だと思います。本書では、無人島の事例を用いてわかりやすく説明が加えられています。すごく納得。
これはここ最近つとに感じることが増えています。発想がすごいな、と思う方はいるのですが、それは自分の記憶の棚にきれいに畳んでしまっている、その仕方が素晴らしいのだろうなと感じることが多いのです。そしてその記憶から引っ張り出してきた知恵を用いて、新規かつ有用な方法で組み合わせる。そこが閃めきなんでしょうけど。それさえも経験で、鍛えられるものなんだろうと思います。
かけ離れた分野からの組み合わせ!
本書は優れた社会課題解決のためのスキームを紹介した本であり、私たちが提供している「逆プロポ」で実施している思考と実践をわかりやすく解説しているような本でもある。(私自身もこの本を読むことで、「逆プロポ」ではどのようなことをやっているのか、言語化に近い体験をすることができた)
どういうメカニズムで社会課題を解決すべきか非常に示唆に富んだ内容だと思います。
◇筆者プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/SOCIALX.inc 共同創業者
1978年10月生まれ、滋賀県出身の45歳。2003年に若年者就業支援に取り組む会社を設立。2011年に政治行政領域に活動の幅を広げ、地方議員として地域課題・社会課題に取り組む。2020年に京都で第二創業。2021年からSOCIALXを共同創業。
京都大学公共政策大学院修了(MPP)。吉備国際大学非常勤講師。日本労務学会所属。議会マニフェスト大賞グランプリ受賞。グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。
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