見出し画像

岡本太郎『自分の中に毒を持て」(2017年新装版)を読んで。

▮ 読後感について。

もう1か月ほど前になりますが、岡本太郎『自分の中に毒を持て〈新装版〉』(2017年)を読了しました。

今一度、心を奮い起こす言葉が詰まっていたように思います。原書は1993年の発刊。

終盤に政治と経済と芸術の三権分立について論じられています。公共政策にも政治と経済の観点だけではなく芸術が必要だと思います。ここでいう芸術は単なるアートではなく、美や人間性のことだという。岡本太郎の熱量を持って生きていかねばと思いました。この一瞬一瞬に生きがいを持てるか。

▮ 気になった個所(付箋を貼った個所)

・“ぼくだったらこうする”と言うだけだ。それに共感する人、反発する人、それはご自由だ。(p65)

・ぼくは幸福という言葉は大嫌いだ。ぼくはその代わりに“歓喜”という言葉を使う。
危険なこと、辛いこと、つまり死と対面し対決するとき、人間は燃え上がる。それは生きがいであり、そのときわきおこるのがしあわせでなくて“歓喜”なんだ。(p84)

・生きるということを真剣に考えれば、人間は内向的にならざるを得ないのだ。(p90)

・感じうるセンシーブルな人にとって、芸術はまさに血みどろなのだ。
最も人間的な表情を、激しく、深く、豊かに打ち出す。その激しさが美しいのだ。高貴なのだ。美は人間の生き方の最も緊張した瞬間に、戦慄的にたちあらわれる。(p204)

・ひどくユニークで、突飛だと思われるかもしれないが。いま、この世界で必要なことは、芸術・政治・経済の三権分立である。(p207)

・「日本人」は変身しなければならない。
政治家よ、エコノミストよ、官僚よ、もっと人間になってほしい。そして芸術家に。(p212)

・もっと政治が芸術の香気を持ち、経済が無償と思われるような夢に賭ける。
環境問題も大事だし、列島構造も結構だが、容れるものを前提とするより、まず“日本人”が変身し、平気で、ひらけた表情をうち出すべきだ。そして現代の政治・経済がおちこんでいる、あまりにも非人間的なあり方に「人間存在」と息吹をふきいれ、生きがいを奪回すべきなのである。(p213)

・ぼくが芸術というのは生きることそのものである。人間として最も強烈に生きる者、無条件に生命をつき出し爆発する、その生き方こそが芸術なのだということを強調したい。
“芸術は爆発だ”(p215)

・全身全霊が宇宙に向かって無条件にパーッとひらくこと。それが「爆発」だ。人間は本来、瞬間瞬間に、無償、無条件に爆発しつづけるべきだ。いのちのほんとうの在り方だ。(p216)

・ぼくはこう考える。コミュニケーションを拒否するコミュニケーションをこそ人間存在の真ん中に主役としてすえなければならない。情報化社会だからこそ、単なる理解を超えた超情報にもっと敏感に、真剣になるべきだ。ここでとりわけ無目的な情報を提供する呪力を持った「芸術」の意味が大きく浮かびあがってくる。(p228)

・造形はイメージ、「絵ことば」として概念的に意味を伝えることもできるが、それを超えた働きもする。言葉で概念では伝達不能なものを、象徴的に、直接に伝えることができるメディアだ。その役割を大いにとぎすまし、呪力を深めていくべきである。(p230)

・物質的条件の向上もG N Pの拡大も、それが瞬間瞬間にマイナスの面にかえっていくことに、この時点まで、不覚にも気付いていなかったのだ。自分たちが安心して身をゆだね信じた価値の裏側には、ちょうど写真のポジとネガの関係のように、虚の運命がはりついていて、それが、誰の目にも打ち消すことのできない異様な現実感で迫りはじめた。
地球は死につつある。だが今日の機構、体制、考え方、すべてが、進歩・生産・合理主義の方向に統一されてしまっているから、この時点に至って手の打ちようがない、呆然としている感じだ。(p243)

・ぼくがここで問題にしたいのは、人類全体が残るか滅びるかという漠とした遠い想定よりも、今現時点で、人間の一人ひとりはいったいほんとうに生きているだろうかということだ。ほんとうに生きがいをもって、瞬間瞬間に自分をひらいて生きているかどうか。(p244)

◇プロフィール
藤井哲也(ふじい・てつや)
株式会社パブリックX 代表取締役/SOCIALX.inc 共同創業者
1978年10月生まれ、滋賀県出身の43歳。2003年に若年者就業支援に取り組む会社を設立。2011年に政治行政領域に活動の幅を広げ、地方議員として地域課題・社会課題に取り組む。3期目は立候補せず2020年に京都で第二創業。2021年からSOCIALXの事業に共同創業者として参画。現在、社会課題解決のために官民共創の橋渡しをしています。
京都大学公共政策大学院修了(MPP)。京都芸術大学大学院学際デザイン領域に在籍中。日本労務学会所属。議会マニフェスト大賞グランプリ受賞。グッドデザイン賞受賞。著書いくつか。


いいなと思ったら応援しよう!