<第1稿 2025年2月8日 遺族年金の話>

社会保険労務士の藤井貞男です。滋賀県で障害年金請求や中小企業向けの社員募集採用定着を得意としています。お得な情報満載のメールマガジンを配信しています。下記よりお申し込みください。

1.初めに
2.三種の公的年金給付
3.モデルを想定した受給額試算
4.保険料未納が招く悲劇
5.最後に

1.初めに
 タレント小島瑠璃子の夫で、サウナ事業などを手がけるHabitat株式会社の社長、北村功太さんが4日に死去したことが、同社のホームページに掲載された。
 「当社創業者であり代表取締役社長 北村功太は、2025年2月4日、享年29歳で永眠いたしました」と報告。(中略)
 小島とは2023年に結婚。小島は、同年8月には第1子妊娠を発表し、その後に出産していた。
(デイリースポーツの記事より引用)
 
 大切な家族を失った小島瑠璃子さんの心痛如何ばかりかと思うと言葉が出ない。北村功太さんの訃報に際し懇ろにご回向申し上げる。

2.三種の公的年金給付
 公的年金給付は三種類あり、保険事故(何が原因で年金が支給されるか)により分類される。

①    長寿リスクをカバーする老齢年金

②    心身に現れた障害に対して所得補償する障害年金

③    家族が亡くなった場合に遺族の生活を補償する遺族年金

である。今回は小島さんとお子様の場合を想定して、受給できる遺族年金について考えたい。

 本稿で遺族年金について論じるにあたり、遺族は配偶者と1人の子(現在1歳として)をモデルとし、残された家族への遺族年金が(a)誰に支給されるのか、(b)その支給額とその考え方はどうなるのか、(c)支給対象から外れるとどうなるかについて論じたい。

 遺族年金は遺族の生活を金銭的にサポートする制度である。遺族年金を規定した法律は国民年金法、厚生年金保険法、そして労働者災害補償保険法(以下、労災保険法)がある。労災保険法には業務中または通勤中の事故により生じた死亡に対して支払われる遺族(補償)年金がある。今回は、業務由来ではない傷病として国民年金法にもとづく遺族基礎年金と厚生年金保険法にもとづく遺族厚生年金(以下二者をあわせて、遺族年金)について考える。

 本稿では亡くなった本人が保険料納付要件(きちんと年金保険料を支払っていたかということ)については満足していることと、遺族となった配偶者の年収は850万円未満であることを前提として論ずる。

【遺族基礎年金】
(a)子のある配偶者または子(但し、子は18歳到達年度の末日までの子、または20歳未満で一定の障害の状態にあることが必要)に支給される 
→ ※子がいない配偶者や、子がいても18歳以上の子であれば支給されない

(b)支給額(単位:円、令和6年度価額)
①    受給権者が配偶者の場合(※現行法では男女格差が存在するがないものとする)
816,000+子の加算額 が年金額である。具体的には、
816,000+234,800=1,050,800円が遺族基礎年金として配偶者に届けられる。

②    受給権者が子の場合
 子の親が離婚して婚姻関係が解消していた場合は、死亡した本人の配偶者は法的に存在しないことになるので子が受給権者になる。子のみに支給されるので子の加算額がなくなる。具体的には、
816,000円が遺族基礎年金として子に届けられる。

(c)支給対象から外れるとどうなるか
 子が18歳に達するとその年度末で当該子は遺族年金支給対象でなくなる。配偶者は子のある配偶者でなくなるため、遺族基礎年金は支給されなくなる(失権という)。子に対する遺族基礎年金も同様である。
 すなわち、遺族基礎年金は子の年齢に依存する有期年金である。

3.モデルを想定した受給額試算
 死亡当時に配偶者に残された子供が1歳とすれば、
1,050,800×17年=17,863,600円となる。あくまでも概算ではあるが、子が18歳に達する17年間で1,800万円弱の遺族基礎年金があることは、遺族である配偶者と子にとって経済的に非常に大きく強い支えになることは間違いない。

4.保険料未納が招く悲劇
 しかし、保険料を支払っておらず未納期間が長い場合で保険料納付要件を満たしていなければ遺族基礎年金が支払われることはない。実際にそうなってしまった悲劇の当事者の話を聞いたことがある。だから、保険料をきっちり支払おう。無理ならば免除という手段もある。

5.最後に
 「公的年金制度が破綻して老齢年金がもらえなくなる」などの馬鹿な噂を信じて保険料を納付しないと間違いなく大損する。具体的には、老齢年金がもらえなくなるまたは少なくなる、心身に一定以上の障害が生じたことによる障害年金がもらえない、遺族年金がもらえない、ということだ。自身と家族を守るためにきちんと保険料納付をしてほしい。その時になって後悔する愚か者になってほしくないからだ。

 他に受けることができる遺族年金として遺族厚生年金があるが、これについては後日あらためて論及したい。

以上

社員の募集・採用・定着のご相談はこちらからどうぞ。
EL AGUAコンサルティング合同会社


いいなと思ったら応援しよう!