愛宕山に今も生きる修験
寒くなってきたし、近郊でお手軽登山をしようと京都の愛宕山をえらんだ。学生時代に登って以来だ。
阪急嵐山駅前を10時14分にでるバスで清滝へ。
ここは神護寺を訪れるために7月にきたばかりだった。
川沿いに木造の古びた旅館がならぶ。神護寺とは逆方向に川をさかのぼり、愛宕山の表参道ではなく、月輪寺をまわる山道をたどった。
30分ほどあるくと、信楽の狸がならぶ分岐がある。左の細い谷を300メートルほどのぼると、古い倉庫や古民家があらわれ、鳥居をくぐると目の前に滝があらわれた。周囲には石仏やこわれた仏像、棒状の石柱、不動明王などがまつられている。
滝の高さは12メートルほど。絹糸のようなうつくしい水が落ちている。滝の中程の崖のくぼみに不動明王が安置されている。
おじさんがひとり滝の周辺を掃き清め、滝の手前のろうそく台に灯をともし、何度も何度も手をたたいて祈っている。滝に打たれにきた人だった。
もとの分岐にもどり、急な山道を40分のぼると月輪寺(標高560メートル)だ。桂川など京都南部のまちなみが見わたせる。
平安時代の千手観音像や聖観音像をおさめた宝物館があり、本堂の本尊阿弥陀如来像は平安時代の僧源信の作という。
車道がないのに人がすんでいるようで、風呂もある。だが「消防法により薪を焚くと火の粉が出るため危険にき、年中(冬季平均温度マイナス10度以下)でも水風呂」と記されている。
風呂というより修行だな。「龍奇水」という井戸の底からゲゲゲという水の音がきこえる。ふたの上にはカエルの置物がならんでいる。10メートル四方にひろがる巨大なホンシャクナゲは明智光秀のお手植えで樹齢500年という。
ふもとの空也の滝や、山頂の愛宕神社と一体となった修験の寺なのだ。車もはいれない氷点下10度の山にすみつづけているのがすごい。
途中の山道で弁当をたべてホットウイスキーであたたまる。休憩をふくめて1時間ほどで愛宕神社の石段下にたどりついた。
200段か300段の石段をのぼりつめると頂上(924メートル)の愛宕神社だ。大宝年間(701~704)に、修験道の祖とされる役行者と白山の開祖の泰澄がひらき、その後、和気清麻呂が山頂に白雲寺を建立し鎮護国家の道場にしたとされ、9世紀ごろには比叡山とならぶ山岳修行の霊場になっていたという。明治の神仏分離で白雲寺は廃絶され愛宕神社になった。
想像以上に立派な神社だ。気温は4度。薪ストーブをたいた休憩室がありがたい。
木々の間からは京都タワーや御所、大文字などが一望できる。さらに奥にそびえるのは比良山系だろう。
1時間ちょっとかけて急な道を一気に水尾の集落にくだった。
水尾は清和天皇陵があり、柚栽培の発祥地、という説もあるらしい。柚風呂にはいって鶏すきをたべられるという。柚胡椒や柚シロップ、柚ポン酢などを売る手作り感ばつぐんの自販機もある。
水尾自治会が運行するマイクロバスは出発したばかりだから、保津峡駅まで1時間かけてあるいたが、登山者をのせたバスに追い抜かれた。
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