本で印象に残ったところ「一口メモ」

日本人の勝算 人口減少×高齢化×資本主義』デービッド・アトキンソン著、東洋経済新報社、2019.1.24発行。読んだ本の中で印象的に残った箇所を記録することで次の研修に役立てたいと考える。P171・172

生産性と最低賃金

 最低賃金を引き上げているに国は、ある共通点の特徴があります。それは、今後大きな人口の伸びが期待できないことです。つまり、人口が増えることによって経済が成長することはもう期待できないので、かわりに生産性を向上させることに対して、強い関心を抱いているのです。

 これらの国では生産性の向上に関して、企業より国のほうがはるかに強い関心を持っています。むしろ、企業任せにしていると生産性の向上は進まないと考えている節があり、最低賃金を上げることによって、企業を生産性向上に向かわせているのです。

 最低賃金が注目されている理由はもう一つあります。経済への影響度合い、普及率です。最低賃金は非上場企業を含めて、すべての企業に影響を及ぼします。だから政策として使うのに都合がいいと考えられているのです。最低賃金を上げれば、企業は労働者にそれまでより高い賃金をはらうことになります。当然、人件費が上がります。企業は高くなった人件費を何らかの形で穴埋めしなくてはいけなくなります。これが生産性を高めるための動機となれば、国が狙っていた結果になるという、そういうからくりです。

※国政選挙である衆議院選挙が先月末行われたが、著者がいうような理論で選挙活動をしていた候補者はいなかったように思う。著者のデービッド・アトキンソン氏は現在小西美術工藝社社長であるが、1965年イギリスに生まれ、オックスフォード大学「日本学」を専攻し日本在住30年という経歴の持ち主である。

 その彼が高齢化が最も進んでいる日本の経済を先進国並みに成長させるには人件費を国策として上げる必要があると主張している。とくに大企業が少ない日本では中小企業が圧倒的に多いことを考えれば最低賃金を現在の2倍にすると成長率が上がると述べている。様々な外国の資料を丁寧に分析し、とても分かり易く説明しているこの本は政治家の先生方に読んでもらいたいものだ。

 コロナの関係で従来の仕事の仕方を継続するのではなく、根本的に見直しを図り、それと共に生産性を高めるにはどのようなことをすれば良いのか一人ひとり考える必要がある。定年・再任用を終了した者としては改めて生きるために何ができるか、生産性の向上のために何ができるか考えてみたいと思った。

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