アイドルになった後輩
知らない間に大学の後輩がアイドルになっていた。
アイドルといってももちろん有名どころではないし、まだ研究生という扱いのようだ。
それでも側から見れば、アイドルである。
誰がこのnoteを目にするかわからないので、詳細を書くのは控えるが、大学の頃の彼女はどちらかと言えば地味目だった。
同郷のよしみでそれなりに話す仲でもあったが、派手からは遠い存在だったと思う。
しかし、その後輩が大学を卒業してからその姿は一変した。
カラコンばっちりの金髪姿で度々、Instagramのストーリーに登場するようになった。
そんなスタイルで働ける会社があるのかと思うぐらいの派手さになっていた。
東京が彼女を変えてしまった。
あの純粋そうだった彼女はどこかへ消え去った。
派手な彼女とたまに出てくるダメなホスト風の男。
彼女は染まってしまったようだった。
大学デビューで東京に染まってしまう話はよくあるが、まさか社会人になってそうなる人に出くわすとは思わなかった。
ましてやそんな人がすぐそばにいたとは驚きが隠せなかった。
そして、次第に彼女のストーリーはTikTokの謎のダンス動画一色になった。
見るのがつらくなったが、一応付き合いがあった以上、フォローを外すのも憚られるので、ミュートしておくことにした。
それから年月が経ち、ある日のことだった。
いつもと同じようにInstagramも開き、眺めていると知らない人がストーリーにいる。
「こんな人フォローしてたっけ?」
タップしてみるとそこには知っている顔の知らないアイドルがいた。
後輩はアイドルになっていた。
そんな彼女を見て、僕は終始「うわ…キッツ…」と思っていた。
いい大人が何をやっているのだろうと。
大学の頃の彼女を知っていたからなのかもしれない。
そのギャップと持ち前の負け組精神のおかげで、その現実を直視するのは難しかった。
僕が彼女に対して拒否反応を示す一方で、彼女のファンは歓迎していた。
彼女の過去ごと愛さんとするばかりの熱量だ。
彼女がアイドルとして活動をし、それを求めるファンがいる。
こんなこそこそと冷ややかなnoteを書いている僕よりよっぽど社会的に意義のある存在だ。
彼女はそれを望んでいたかは知らないが、より求められる人間へと変貌しつつある。
その一歩が彼女だけではなく、周りの人の人生を変えるそんな瞬間を目にしたのかもしれない。
アイドルになった後輩。
僕の理解はまだ及んでいないが、
彼女の人生に幸あれ。
では、また。