雲の中のマンゴー |#7 農業との関わり
この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。
Novel model Mango Kawamura
Author Toshikazu Goto
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第7話「第1章~その6~」
「ああ、施設栽培だ。」
あれ?なんだろう。親父は農業のことをよくわかっているような感じがする。登は一の話しぶりから疑問を感じた。
「詳しいんだな、農業のこと。」
「まあそうでもないが。実はな、計測機器の製造をやる前は爺さんが農業をやっていたんだ。話したことなかったな。」
一は、登が今まで聞いたことがない農業とのかかわりを話し始めた。
「ワシが生まれ育った場所、静岡の牧之原地区の南部は干し芋発祥の地、御前崎に近いこともあり、小学生ぐらいまではサツマイモを中心とした根菜類を作る農家だったんだ。
子供のころは畑仕事の手伝いをよくやった。あのこ頃はそれが普通だった、近所の子供らもみんな畑仕事を手伝っていた。お袋がつくる干し芋がうまくてなあ、懐かしい。」
「へえ~お義父さん、干し芋ですか?私も好き、お茶を淹れたのでどうぞ。」
子供たちを寝かしつけた美恵が中国茶を淹れてくれた。
「美恵さん、ありがとう。気を使わなくていいから、あなたもゆっくり休みなさい。」
「ありがとうございます。それでは、明日の帰国の準備をしてから休ませていただきます。おやすみなさい。」
「ありがとう。俺の荷物は自分でやるからいいよ。おやすみ。」
「爺さんは発明家だったからな。農業に使う特殊な道具は自分で作っていた。サワムラが計測機器を製造していたのも、農業をやっていた時代に爺さんが発明した天秤ばかりを改良した特殊機械を地域の農家さんに作ってあげることがキッカケだったんだ。それから畑は、近隣の農家さんに貸し出していた。今は、その畑をサワムラの役員を引退した弟が管理している。
あいつ、自分で畑をやりたいと言い出してな。最初はいろいろな作物を家庭菜園延長のレベルでやっていた。それから簡易的なビニールハウスでアスパラガスを栽培しはじめて、今では頑丈なグリーンハウスを建てて小規模だが施設栽培でしっかりしたものを近くのスーパーに卸すことができるまでになっているんだ。
露地栽培は自然との闘いだ。子供のころに畑の手伝いをしていたからと言って、工業出の我々では身も心も折れやすい。その点、施設栽培ならある程度の工程を管理することが可能だ。そして予測が立てやすい。」
「なるほど、もともと農業には縁があったんだな。そして、施設栽培とは、よく見るビニールハウスなどで栽培する農業のことなんだな。」
「そうだ。まあそんな甘いものではないがな。用意周到が身上の玄のことだ、いろいろな考えと準備があるのだろう。」
「玄さんに程さん...か。正直だいぶ痛いなあ。。」
「登、変わるときかもしれないな。」
#8に続く。