雲の中のマンゴー|#14 斉藤さんと望月さん
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第14話 「第3章~その2~」
「そうだ、玄さん。ずっと保留にしていたけどさぁ、この展開でおかしな話なんだが。。 」
登は話しづらいというよりも、なんとなく可笑しくなり言葉を詰まらせた。
「なんですか?ハッキリ言ってくださいよ!」
「これってさぁ、継続雇用になるのかなぁ~。ふっふっふっふっふっふっ、ハッハッハッハッハッハッハッ ww」
「あっ!ふっふっふっ、ハッハッハッハッ!ハッハッハッハッハッハッ!どうなんですかね、ハッハッハッハッハッハッ ww」
二人は笑った。
登は、事業譲渡の手続きと関係者との調整をしながら、自身の働き方・時間の使い方を考え直し、少しずつマンゴー農園に費やせる時間を確保してきた。社員の理解は十分ではないと感じ取れるところもあるが、未来のために進むしかないと強く思い断行した。
黒岩も、数年前から鍛えてきた部下の成長を感じながら、年末まで最後の引継ぎ作業に没頭した。年明けからは有休と週末を使いながら週5日はマンゴーハウスに出向くことにしている。
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2020年1月
前オーナーからの紹介で、二人の女性と面接をすることになった。二人は、マンゴー収穫の夏の時期にパートとして農場を手伝ってきた経験がある。
今、彼女たちは、他の農場で働いている。
斎藤明子さんは、露地栽培のレタス農家で農作業の全般の手伝いをしている。レタスは冬の静岡の産物として有名だ。
望月美佐子さんは、秋から春にかけトマト農家さんで収穫の手伝いをしている。トマトは夏野菜のイメージであるが、冬から春にかけてのトマトが最高に美味しいと登は思っている。
二人とも、自然や畑仕事が好きで農作物のことにも詳しい。そして何よりも気さくである。また、富士岡で育てられたマンゴーを多くの人に知ってもらいたいという共通の想いも話してくれた。話は盛り上がり、日が落ち始めたころに「子供たちの晩御飯の支度をしなくっちゃ。」と言いハウスを出ていった。ありがたいことである。できれば、周年を通して彼女たちに農場で働いてもらいたい。
ブルブルブル バタンッ。
市役所から帰ってきた黒岩がハウスに戻ってきた。
「玄さんお帰り。会ったよ、斉藤さんと望月さん。」
「どうでした?」
「二人とも農作物への関わりがとても深いんだね。マンゴーのことも、とても大事に想っていてくれていることが良く分かったよ。なんとか二人と一緒に仕事ができるようにしたいなぁ。」
「そうですね。昨年の夏に一緒に働く機会がありましたが、とても仕事熱心で、親切にも厳しくもしてくれましたよ。」
「今は他の農場でバリバリに働いているようなので、可能であれば最短でこの春から、仕事をお願いできなか頼んでみようと思っている。いいかな?」
「できることなら今からでも来てもらいたいぐらいですが、彼女たちのことだから他の農場でも頼りにされているでしょう。社長の考えでお願いします!」
#15に続く。
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