雲の中のマンゴー|#15 あなたも農家さん
この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。
Novel model Mango Kawamura
Author Toshikazu Goto
第15話 「第3章~その3~」
『玄さん!この鉢に水入れたの?あれ!?ここも、この列の鉢に水が浸透してないよ。』
『社長、水はまだです!もう少し先です。暖房のスイッチも少し待ってください。』
『ちょっと!水不足で花が咲かなくなったらどうすんだよ!』
『登くん!!まだ休眠中なんだよ。逆に花が咲かなくなるぞ、しっかりしてくれよ!』
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「あなた、ちょっと。あなた!」
美恵は隣でうなされる登の体を強く揺すった。
登の体がビクついたと同時に
「あれ、今日は何日だ?」
と寝ぼけ声を出す。
「今日は1月13日ですよ。」
「そうか... 加温のタイミングまであと2日か。。嫌な夢をみた。。」
マンゴーの樹木への休眠中のストレスの与え方、その後の水管理と加温のタイミングについて、それが花の開花に大きく影響することを前オーナーから指導してもらっていた。
「農家さんてスゴイなぁ。日々様々な変化を感じながら、栽培管理を淡々とやるんだぜ。そして何度も自然災害に打ちのめされても、受け入れてまたやるんだ。」
「何言っているの、あなたも農家さんになったんでしょ。」
「まぁ、そうだけど。マンゴーハウスに出会ってから法人を立ち上げるまでは、様々な思いと時にはスゴイ妄想をして夢ばかりが膨らんでいたんだがさ。しかし実際に農業を始めてからは、いろいろな作業とプレッシャーで押しつぶされそうだよ ...」
登は、本音を美恵に吐露した。
「ねぇ。先日、程さんが遊びにきた時に言ってたわよ。『社ッ長は強いよ。中国で頑張ッタ。』って。程さんの真似したけど似ているかな ..笑」
「そうか、ありがとう。」
それから1ヶ月。2月も中旬となり斉藤明子が合流してきた。彼女はマンゴーハウスの事情を、既に手伝っていたレタス農家さんに話してくれ、こちらに早々に参戦できるように調整してくれたのだ。
そのレタス農家さんは、春休みに入った学生アルバイトの求人枠を増やし対応してくれた。お礼に伺った時には『これからの農業は人材と情報の共有も大事ですよ』と言ってくれた。そしてレタスをお土産に頂いた。
登は美恵にレタスを渡しながら、その農家さんのことを話した。
「太っ腹な農家さんなのね。」
「ホント、オレもあんな風にその地域の農業全体のことを考えて行動できるようになれたらイイのだけど。。今はとてもじゃないな。」
「おい社ッ長、がんばれ!! ..笑」
#16に続く。
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