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雲の中のマンゴー|#13 事業譲渡
この物語は、自動車部品メーカーを営む中小企業の若き経営者「沢村 登」が様々な問題に直面しながら、企業グループの新しい未来づくりを模索し新事業に挑戦する「実話を軸にしたフィクション」ストーリーである。
Novel model Mango Kawamura
Author Toshikazu Goto
第13話 「第3章~その1~」
「まあまあ、落ち着いてください。」
ハウスのオーナーは、登のはやる気持ちを鎮める。
「方々に相談しているといっても農業ですからね、関心を示す方はそれほど多くはありませんよ。それに、それなりに資金も必要になるかと思います。玄さんから沢村さんが農業進出を検討しているとは伺っていますが
『ほしい!』『はいどうぞ』
というワケにはいきません。なぜ農業なのか、現実的にどう農業を営んでいくのか、などをお聞かせください。本気で農業をやれるのか?まずはそこからの確認です。」
「分かりました。」
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2019年12月
8月にマンゴーハウスに見学に行き、その場で事業を譲り受けることを懇願した登は、オーナーから「本気で農業をやれますか?」と訪ねられた。
「農業法人として、きちんと事業譲渡できるならいいでしょう。良くお考えください。」
と言われそこから2ヵ月。マンゴーハウスのオーナーとの面談を繰り返し、同時に農業を営む法人設立の準備をし、株式会社オリジンを創業させた。そしてさらに2か月後、黒岩とともにマンゴーハウスを訪れ事業譲渡手続きを終えた。
「社長、既に言いましたが、ここから春までがもっとも不安な時期です。」
黒岩がマンゴーハウスに通い始めたのが昨年の3月からだった。仕事の標準化のプロであっても、ほぼ経験がないことを標準化するのは難しい。
「玄さん、それは分かってるよ。我々だけでやらなければならない大事な時期なんだよね。」
登もその覚悟はできている。
「私もお手伝いしたいが、冬になるとさらに体調が不安定になり通院回数も多くなってしまう。大変申し訳ない。。」
オーナーには引き続き、軌道にのるまでの栽培指導を依頼しているがご自身の体調が大事である、心配はかけたくない。
「お気持ちだけでも嬉しいです。どうしてもという時はお電話でも良いので相談に乗っていただけたら嬉しいです。」
「はい、それはもちろん。できる限りのことはしますよ。」
「ありがとうございます。まずはお体を大事にしてください、失礼いたします。」
カチッ、ヒューン、ブロロロローン。
ナナマルのディーゼル音がけたたましく鳴り響く。最初は慣れなかったが、最近は心地よく登の体に沁みる。運転席の黒岩がナルディのハンドルを握り、シフトノブを2速に入れて発進する。レギュレーターハンドルを回し窓を開けながらつぶやいた。
「玄さん、ありがとう。いよいよだね。」
「そうですね。やりますかね。」
#14に続く。
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