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3Dプリンターのススメ

この記事は、群馬高専 Advent Calendar 2024 9日目の記事です。
(9日に公開されていないことは気にしないでください)
執筆を失念しておりました。大変申し訳ないです。

記事の概要

 本記事は、理系の学生に3D造形の魅力を伝えたい、という動機で書いています。3Dプリンターの概要や界隈の近況などを軽~くまとめていきます。


挨拶と本記事作成の動機

 初めましてこんにちは、ふじこlpと申します。今回が初投稿です。私は課外で、ロボットの設計をしています(していました)。23,24年は高専ロボコンの出場機体の設計製作メンバーでした。
 
 さて、高専ロボコンなどに出場するロボットのフレームは、たいていアルミを主材として設計します。比強度が高いアルミ材は、荷重のかかるフレームの材質としては非常に優秀です。一方、複雑な構造になりがちな機構部分など、形状の自由度が求められる部品の製作において、3Dプリンターは重宝される機械です。私が3Dプリンターをいじり始めたのもロボットの製作に使用するためでした。ですが日常生活でも活用できる利便性ゆえ、意を決して家用に1台購入しました。めちゃ便利です。

 いい機会をいただいたので、この記事で3Dプリンターの良さを布教すべく本記事を書くことにしました。ぜひ最後までお付き合いいただけますと幸いです。

どんな機械なのか?


 3次元空間で物体を造形できる機械ということは言うまでもないのですが、もう少し動作原理を掘り下げたいと思います。

 まず、ユーザー側は3Dモデルのデータを用意します。代表的なファイル形式はSTLやOBJあたりです。3Dデータを用意するにあたり、3DCADやモデリングソフトを使用してデータを作成する、あるいはインターネットから既存のモデルデータを入手するなどの方法が存在します。
 
 用意した3Dモデルデータをスライサーと呼ばれるソフトウェアに通し、最終的に造形オプション等の諸情報を加えた実行ファイル(G-codeなど)を3Dプリンターに投げると、そのデータ通りに造形作業を行う、というわけです。

造形までのデータのフロー

 3Dプリンターのマシンが造形を行うメカニズムは、代表的なものに

・熱溶解方式(FDM): 樹脂フィラメントを高温で溶かし、ノズルで押し出す
・光造形方式(SLA): レジン(液体樹脂)にレーザーを当て硬化させる
・粉末焼結方式(SLS): 金属粉末にレーザーを照射し焼き固める

があります。造形手法は、主に造形物の材質の違いにより多岐にわたる一方で、それら手法の殆どは「積層」という共通原理に基づいています。各層は平面上に形成された厚さ数10~数100μm程度の2次元パターンで、パターンの形状を少しずつ変えながら、Z方向に一定の間隔(=層の厚さ)で数十~数百層重ねることで、任意形状の立体を造形できるという仕組みです。

FDM(熱溶解積層)方式の造形物

3Dプリンター界隈の近況

 先述のとおり、3Dプリンターによる造形は、薄い層をひたすら重ねる作業です。1層ずつパターンを形成するため、造形作業には長い時間が掛かります。

 ですが、3Dプリンター市場は競争が激しく(特に家庭用)、ここ数年で製品の性能が飛躍的に向上しています。例えば最もメジャーな熱溶解積層方式では、5万円程度で入手できる家庭用プリンターの樹脂の押し出し速度(=造形速度)は、およそ5年ほど前には150mm/s程度が限界でした。

 しかし2024年現在、市場には同程度の価格で最高造形速度600mm/sを謳う機種が出回っています。単純計算では造形時間が1/4程度まで短縮されたことになります。

 私が所持しているFDM式の機種もそれに該当するのですが、実際にその速度は伊達ではなく、およそ±0.2mm程度の寸法誤差で上記速度での造形が実現しています。Benchyとよばれるベンチマーク用の船の配布モデルは、15分かからずに造形が完了しました。

15分弱で造形完了した船のモデル


 実際には600mm/sでの造形はフィラメント側の限界もあり、写真でもわかるとおり品質が荒れやすいので、普段の造形時は最大400mm/s程度に設定して運用していますが。

 性能向上は造形速度に留まりません。かつてFDM方式のプリンターにおいて、代表的なメンテナンス作業としてZ軸(高さ)調整がよく挙げられていました。これを怠っていると造形が全然成功しないので必須作業なんですが、手作業では面倒な上に感覚の慣れが必要なので厄介です。しかし、現在発売されている機種はZ軸調整をすべて自動でやってくれるものが多いです。そういった面で、3Dプリンターの「扱いやすさ」もここ数年で向上しています。

ススメ 

 3Dプリンターを活用すれば、自分で考えたデザインを現実の立体に起こすことができます。趣味としての利用はもちろん、小物類やインテリア、壊れた家財の修理などにも活用できます。

 先に述べた3Dプリンター自体の性能向上ももちろんですが、3Dモデルの作成に使用するソフトウェアなどに関しても、無料ないし安価で使用できるものが増えています。例えば、3DモデリングソフトであればBlenderが、3DCADであれば、Autodesk社のFusionが無料で使用できます。どちらもUIがわかりやすく、操作もさほど難しくないです。

 こうした背景もあり、3Dプリンターはいまや「一家に一台」購入するに相応しいレベルまで手軽に扱えるものになってきたといって過言ではないと思います。安いものだと2万円台で入手できるものもあるので、ぜひ購入を検討してみてはいかがでしょうか。
 
 また、わざわざ買うほどでもないけれど触れてみたいという方は、学内にあるトライアルファクトリに3Dプリンターを使用できる環境が整っています。申し込みさえすればいつでも利用できるので、ぜひ一度使ってみることをおすすめします。

ということで、最後までご覧いただきありがとうございました!!

 

 


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