星作りへの幻想
濃紺の色水に、小さな電球をひとつひとつそっと浮かべていく。
電球は明滅しながら、暗いけれど透き通る水面を少し揺らして、やがて静かに定まると、しんと静かに地上のものを照らし出す。
あの星は誰が作り出したのだろう?
わたしは目が悪い。どんなに目を凝らしても今は一等星しか見つけることが出来ない。
だけど、夜空には見えないだけで一面に小さな光が散りばめられているという。
そのひとつひとつは誰が浮かべた?
気の遠くなるほどの歳月をかけて、あの星空は誰が創造したのだろう?
今、空には三日月が淡く滲んでいる。
地上の空気は冷たく澄んでいて、だけど国道を走っていくいくつもの車のヘッドライトが煩雑で、帰宅の時間、すれ違う人々もごみごみしたように感じる。
とてもここからは手の届かない夜空の星明かりの静謐な美しさに、地面に張り付いている何ものもかなわない。
でも、それだけがわたしの生きていく世界だ。
気の遠くなるような遠い昔から、もしかすると現在に至るまで。
あの星は誰が作ったと思う?
神様?
いや、違う。
誰も数えられないほどの年月、命を削り続けて無数のあれらを空に浮かべてきた人がいる。
彼を知っている?
その唯一無二の仕事に名前をつけるとしたら、そうだな。
「星作り」。
そう、彼の仕事、そしてそのまま彼を呼びかける時はそう口にする。
あの夜空をたった一人で作り上げきたのは、「星作り」。
わたしはそう呼んだんだ。