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星作りと跳ねうさぎ亭⑥(完)

 太陽が半ば昇りはじめて夜が明けるころ、星作りはやっとのことで起き上がりました。

「大丈夫ですか?」

「うん。もう大丈夫だ」

 しかし、彼からはここ数日でつけた栄養がすっかり抜き取られてしまったように感じられました。

 星作りはまた白く透明になりかけた月を見上げて立ち上がりました。それから並べた石たちをひとつひとつ拾い集めはじめました。

 チムニーも手伝って、半端ものの星たちはすべて星作りの鞄におさめられました。石たちの光は夜が明けるとともにすっかり鳴りをひそめていました。

「さて。もう行かないと」

 チムニーは驚いて目を見開きました。

「もう行ってしまうんですか?」

「うん。ラパン・アジルのご主人にも、もう挨拶を済ませてきた」

「そうですか」

 チムニーはさみしそうにうつむきました。そしてポケットを探って、ちょっと名残惜しそうに布に包んだあの石を両手で差し出しました。

 星作りは微笑して首を横に振りました。

 チムニーは首をかしげました。

 すると男がぽん、と石の上に手を置き、チムニーのほうへそれを押し戻しました。

「ぼくに?」

 男は笑ってうなずきます。

「でも、ぼく、もらえません。こんな、大切なもの」

「私が持っていてもしかたがないんだよ」

「だって」

「言っただろう。それはまだ終わっていない」

 

 チムニーは戸惑いながら石を見下ろし、星作りを見上げてたずねました。

「どうすればいいの?」

「そのうち決心がついたら、よく晴れた夜に、軽くでいい、願いを込めて息を吹きかけて。そして思い切り夜空へ飛ばすんだ。するとその石は高く高く昇っていって、あなたの守り星になる。やがてあなたの願いが叶ったら、その星も役目を終えて流れていくよ」

 チムニーは包みを開いて改めて石を見つめました。今はただの冷えた硬い石ころにしか見えません。でもそれはたしかに、星作りの息が吹き込まれた石でした。

「願いの叶う石なの?」

「さあ、どうだろう。作った私にも、まだよくわからない。ただ」

「ただ?」

「今の私の技量では、よくて三等星が精一杯なんだ。それも飛ばしてみるまでその視等級はわからない。それを星にしたら、よく夜空を探してみてくれ。ここは星がよく見えるし、飛ばした本人にならきっとわかるだろう」

「星作りさんにもわかる?」

 星作りの男は微笑みました。

「よく探してみるよ」

 チムニーはうなずき、また石を包んでポケットに大切にしまいました。

「どうもありがとう。星作りさん」

「こちらこそありがとう。チムニー」

「またいつか、この町に来てくれますか?」

「いつかね。それじゃあ、元気で」

「元気で」

 こうして星作りは去っていきました。

 明けかけた空の下雪の道を踏みしめて遠ざかっていく男を、チムニーの小さな姿が、いつまでも見送っていました。


おしまい

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