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タイタニック 海底の記憶
映画タイタニックで泣けるのは最後のローズおばあちゃんのシーンという人も多いのではないでしょうか(それまでの大立ち回りでも素晴らしくアクションやラブロマンスとしても楽しめますが)。特にラストシーン、臨終のローズが一番美しく輝いていた時の姿で大勢のタイタニック号乗客の前でジャックと再開する場面には心の深い部分が揺り動かされます。
この映画の重要なテーマは記憶でしょう。そもそも深く海底に沈んだタイタニック号自体が巨大な記憶の塊、メタファーです。
連続し蓄積され続けた記憶こそが自分が自分であることの根拠であり本質だと思います。例えば全ての記憶を無くしたらそれは今の自分とは違うもはや他人でしょう。そういう本質的で重大な記憶というもの(またはそのメタファー)を眼前に見せられると人は心が動かされます。
そう言えば、全編に流れるアイリッシュミュージックにも失われたケルトの記憶を連想させられます。タイタニック号と同様、歴史の深奥に沈んだ記憶を呼び起こす風のような音楽でした。
あと、そもそも最初と最後以外のほぼ全編がローズの思い出、記憶でした。
タイタニックは深く海底に沈んだ、深く心の底に沈んだ記憶の映画です。