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パルミトイルエタノールアミド−ポリダチン微粉末の間質性膀胱炎・膀胱痛症候群改善効果
微粉化された「パルミトイルエタノールアミド−ポリダチン(m-PEAPoL)」による間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の痛み・頻尿・尿意切迫感の改善効果が報告されています。m-PEAPoL治療に起因する副作用は認められず、治療効果が一定期間持続することも確認されています。イタリアで実施された試験の概要をご紹介します。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群に対するPEAの有効性を検証
学術顧問の望月です。間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の研究は、国内外で進められています。前回の記事では、肥満細胞から放出されるヒスタミンという炎症誘発物質と間質性膀胱炎の関係を整理しました。今回は、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群に対する効果が報告された“新規錠剤”の情報をご紹介します。
新規錠剤というのは、微粉化された「パルミトイルエタノールアミド−ポリダチン(m-PEAPoL)」を含む単一の錠剤のことです。m-PEAPoLには、鎮痛作用・抗炎症作用のある「パルミトイルエタノールアミド(PEA)」と抗酸化作用・抗炎症作用がある「ポリダチン(PoL)」という成分が、それぞれ400mg、40mg含まれています。
微粉化、超微粉化したPEAには、骨盤の慢性痛を和らげる効果があることが報告されています。また、PEAは、これまで解説してきた肥満細胞とも密接に関わっており、PEAの摂取によって肥満細胞の活性化が阻害され、ヒスタミンなどの炎症性メディエーターの放出が抑制されます。さらに、PEAの薬理作用はPoLの存在下で増強されることがわかっています。
イタリアでは2010〜2013年、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の痛み・頻尿・尿意切迫感などに対するm-PEAPoLの有効性が検証されました(※)。結論からいうと、m-PEAPoLの経口投与で、従来の治療法では効果が得られなかった間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんの症状の改善が認められています。
サンカルロディナンシー病院とマリアデッリアンジェリ病院で行われた試験には、18歳以上で51±12.8歳の男女32人(男性2人・女性30人。21〜30歳:2人、31〜40歳:5人、41〜50歳:9人、51〜60歳:8人、61〜73歳:6人、71〜73歳:2人)の間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんが参加。恥骨・骨盤・尿道・膣または会陰部の痛みが6ヵ月以上続き、従来の治療を受けたものの効果が得られなかった患者さんが試験の対象となっています(対象・除外の条件は細かく設定されていますが、ここでは省略します)。
試験参加者はm-PEAPoLを1日2回、3ヵ月間飲み、その後、頻度を1日1回に減らした上で、さらに3ヵ月間、m-PEAPoLを継続して摂取しました。試験期間中は、痛みなどの症状を記録するアンケートや排尿日誌が配布されています。6ヵ月後、男性2人を含む27人から適切に記入されたレポートが返ってきました。27人のうち24人は、治療を終えてから2ヵ月後の病状についてもチェックを受けています。
2ヵ月後から症状が改善して治療後も効果は持続
研究チームが結果を取りまとめたところ、試験前に6.9±0.4だった痛みの強さは、6ヵ月後には4.6±0.4に軽減。痛みの改善には、有意差が認められたそうです。年齢や性別による効果の違いはありませんでした。経過を細かく見ていくと、2ヵ月後、4ヵ月後と痛みの程度が有意に下がり、その後は緩やかな改善が続いたとのこと。なお、治療を終えてから2ヵ月後のスコアは4.2±0.5で、治療終了時と統計的に違いはないという結果が得られました。
痛みのほか、頻尿・尿意切迫感についても有意な改善が認められています。治療を終えてから2ヵ月後の症状は痛みと同様、治療終了時と統計的に差はなく、m-PEAPoL治療に起因する副作用など有害事象の報告もありませんでした。
PEAは、末梢神経系および中枢神経系の炎症反応を調整するとされています。研究チームは、「間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の症状の軽減は、パルミトイルエタノールアミド(PEA)が、脊髄に存在するミクログリアという細胞と膀胱の肥満細胞の活性化を局所的に抑制し、慢性的な炎症や痛みを引き起こす物質の放出を抑制した結果であると考えられる」としています。
今回の試験では、長期間の摂取による耐性によってPEAの効果が弱まらないことも示しています。飲んでから効果が現れるまでの期間がわかり、治療効果も一定期間続くという結果は、患者さんの心理的負担の軽減にもつながるのではないでしょうか。一方で、論文にも記されていますが、今後はプラセボ群を設けたより大きな規模での二重盲検臨床試験による効果の検証が期待されています。
※1 「Micronized Palmitoylethanolamide-Polydatin Reduces the Painful Symptomatology in Patients with Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome」M. Cervigni , L. Nasta, C. Schievano, N. Lampropoulou, and E. Ostardo