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線維筋痛症を併発した間質性膀胱炎の高気圧酸素療法、治療効果はいかに 海外の報告から

間質性膀胱炎の治療法の一つとして、「高気圧酸素治療」が注目されつつあります。大気圧より高い気圧のもと、口鼻腔マスクをつけて呼吸用の酸素を取り入れて病態の改善を図るもので、炎症に対する防御作用を高めたり、新しい血管の形成を促進したりする働きがあるといわれています。間質性膀胱炎に対する有効性など、現在、どこまでわかっているのでしょうか──。海外の研究情報をご紹介します。

診断・治療の難しい間質性膀胱炎と線維筋痛症の併発

不二バイオファーム学術顧問の望月です。間質性膀胱炎の一部の患者さんは、線維筋痛症や慢性疲労症候群、過敏性腸症候群などの症状を併発しているという報告があります。痛覚過敏を含む全身の慢性痛、睡眠障害、疲労感などが症状として現れる線維筋痛症は間質性膀胱炎と同様、似た症状を持つほかの病気と見分けるのが難しいといわれています。さまざまな不調が生じる慢性疲労症候群や過敏性腸症候群も同じで、診断は簡単ではありません。

このうち線維筋痛症に対する治療効果が示唆されているのが、「高気圧酸素療法」です。高気圧酸素療法とは、大気圧より高い気圧のもと、口鼻腔マスクをつけて呼吸用の酸素を取り入れて病態の改善を図る治療法です。炎症に対する防御作用を高めたり、血流の改善などによって新しい血管の形成を促進したりする働きがあると考えられています。

最近では、間質性膀胱炎に対する高気圧酸素療法の有効性も海外では報告されつつあります。例えば、動物実験では、過酸化水素によって誘発されたマウスの膀胱の炎症、浮腫、線維化が高気圧酸素療法で改善したことが確認されています。

今回の記事では、「Clinical and morphological effects of hyperbaric oxygen therapy in patients with interstitial cystitis associated with fibromyalgia」という論文をもとに、間質性膀胱炎との関連を見ていきましょう。高気圧酸素療法は、線維筋痛症と間質性膀胱炎といった個別の疾患に対する一定の有効性は報告されていました。しかし、線維筋痛症と間質性膀胱炎を併発している患者さんを対象とした研究は、これまで行われていませんでした。Gerardo Bosco医師らは、線維筋痛症の症状を自覚しており、通常の治療の効果が見られない間質性膀胱炎の患者を対象として、高気圧酸素療法の有効性を検証する研究を進めています。

高気圧酸素療法で水圧拡張耐性が改善

2019年に投稿された同論文では、12人の患者さんを対象とした試験の結果が報告されています。12人の内訳は、男性1人、女性11人、平均年齢は57±10.57歳。いずれの病気にも性差があり、男性より女性の罹患率のほうが高いことがわかっていますので、このような男女構成になっているものと考えられます。試験では、試験実施前と実施後6ヵ月の生活の質(QOL)、痛み、膀胱内視鏡、尿(力学的パターン)などが評価されました。

2絶対気圧のもと、呼吸用100%酸素を90分間取り入れる高気圧酸素療法を1週間に5日間、計20回くり返して行った結果、治療前に平均409.2 mlだった水圧拡張耐性は489.2 mlと有意に改善していたそうです。また、膀胱内視鏡検査では、点状出血の減少およびハンナ型潰瘍の改善が見られた症例が確認されています。一方、ほかの項目について有意差は認められませんでした。

こうした結果には間質性膀胱炎のタイプが関係している可能性があると、Gerardo Bosco医師らは指摘しています。試験に参加した患者さん12人のうち11人は、非潰瘍型の間質性膀胱炎でした。間質性膀胱炎の患者さんを対象とした先行研究では、非潰瘍型に対する高気圧酸素療法の効果は低いことが報告されているのです。

Gerardo Bosco医師らは、対象者を増やした上、患者さんの食事や心理状態などにも気をつけながら、将来的に再び試験を実施する意義を記しています。病気の診断や対照群の設定など、効果の検証には難しい点が多くあると思いますが、今後、より詳細なデータが増えていくことを期待しています。

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