間質性膀胱炎・膀胱痛症候群のバイオマーカー 病態との関連を示す指標が明らかに
尿中サイトカインとケモカインを分析
学術顧問の望月です。今回の記事では、『Biomedicines』に2022年に掲載された「Use of Urinary Cytokine and Chemokine Levels for Identifying Bladder Conditions and Predicting Treatment Outcomes in Patients with Interstitial Cystitis/Bladder Pain Syndrome」をご紹介します。この論文では、膀胱の状態をはじめ、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の診断や治療効果の検証に必要となる尿中バイオマーカーについて評価されています。
間質性膀胱炎は、膀胱の尿路下層における肥満細胞の異常な活性化、膀胱尿路上皮のグリコサミノグリカン層の損傷、神経性炎症、粘膜下層の微小血管の異常、自己免疫の暴走、感染性などが原因で起こる難病です。激しい膀胱痛や頻尿が、特徴的な症状として知られています。最近は、ハンナ病変があれば間質性膀胱炎、ハンナ病変がなければ膀胱痛症候群として分類されています。
今回の研究論文は、男性48人、女性261人、計309人(平均年齢53.1±13.4歳)の間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんと対照群の女性30人(平均年齢57.7±10.1歳)の尿サンプルをもとに、免疫や炎症反応に関わる「サイトカイン」や、サイトカインの一種で白血球の遊走を誘導する「ケモカイン」と病態の関連を分析した結果を整理したものです。2010年2から2021年12月までの患者さんのデータを集めたもので、感度の高い尿中マーカーが明らかになりつつあります。
研究対象となった309人の患者さんは、はじめにハンナ病変の有無、間質性膀胱炎の症状指数(ICSI)、問題指数(ICPI)などが評価されました。ハンナ病変のない患者さんについては、最大膀胱容量などをもとに重症度が4つの区分に分類。ハンナ病変ありの患者さんを含めた計5つのグループと、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群に該当しない対照群のデータを比較していったというわけです。研究期間中、患者さんにはそれぞれに必要な治療を続けてもらっています。
尿中バイオマーカーは重症度とも関連
性別やグループ間の尿中マーカーを比較していった結果、さまざまな違いが見えてきました。ここではポイントだけ抜粋していきましょう。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の患者さんは対照群と比べて、「MCP -1」「エオタキシン」「TNF -α」「プロスタグランジンE2」のレベルが有意に高いことがわかりました。さらに、ハンナ病変のある患者さんは、ハンナ病変のない患者さんや対照群よりも「IL-8」「CXCL10」「脳由来神経栄養因子」「エオタキシン」「RANTES(CCL5)」の発現および分泌が有意に高いという結果が確認されています。これらは酸化や炎症に関わっているサイトカインやケモカインです。
最も高い感度を持つと評価されたのが「TNF-α」でした。今回の研究で特異性の認められたTNF-αは、これまでの記事でも取り上げてきた炎症反応のキーマンといえます。そのほか、最大膀胱容量と各種バイオマーカーレベルの有意な相関関係も確認されています。これは、重症度や治療効果の評価に尿中バイオマーカーが役立つ可能性を示唆しています。なお、男性と女性の患者さんの尿中バイオマーカーの比較では、性別による違いがあったのは3つのサイトカインのみで、性差を明確にするには至りませんでした。
結論となりますが、簡単にいうと、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群では尿中のサイトカインとケモカインのレベルが高くなり、これらは重症度や最大膀胱容量などとも関連していました。さらに、間質性膀胱炎の患者さんでは、膀胱痛症候群の患者さんに比較し、IL-8、CXCL10、RANTES(CCL5)などの酸化や炎症に関わるサイトカインやケモカインレベルが高いことが分かりました。不二バイオファームでは、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群でつらい思いをしている患者さんのために、発芽そば発酵エキスの研究を続けています。今回の論文を読んで、尿中バイオマーカーのデータも今後蓄積していきたいと思いました。
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