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血圧に対する発酵黒ニンニク抽出物の効果 低用量で最大血圧・最小血圧が改善

発酵黒ニンニクには、降圧作用がある生のニンニクよりも多くの有機硫⻩化合物やポリフェノールが含まれています。熟成の工程で増える機能性成分の一つが、S-アリル-L-システインです。近年、発酵黒ニンニク抽出物を用いて、血圧に対する低用量のS-アリル-L-システインの効果も検証されています。副作用なく、継続して発酵黒ニンニクを摂取できることが明らかになりつつあります。

12週間の継続摂取の効果を検証

学術顧問の望月です。2024年、最初の投稿です。本年もよろしくお願いします。今回の記事では前回同様、ニンニクの研究情報をご紹介します。ニンニクには、アリイン、アリシン、S-アリルシステイン、ジアリルトリスルフィドといった硫⻩含有生理活性化合物が含まれています。不二バイオファームで販売しているアスタニンの主要成分の一つである「滅菌乾燥ニンニクスプラウトパウダー」は、生のニンニクよりも「S-アリルシステイン」や「ジアリルトリスルフィド」などを豊富に含んでいます。

今回は、2023年に『Nutrients』に掲載された「Antihypertensive Effects of an Optimized Aged Garlic Extract in Subjects with Grade I Hypertension and Antihypertensive Drug Therapy: A Randomized, Triple-Blind Controlled Trial」という論文に注目しました。この論文では、治療中の人を含む高血圧の患者さんの血圧に対する熟成黒ニンニク抽出物の効果が検証されています。

ニンニクには、高い血圧を下げる働きがあります。一例となりますが、最大血圧140、最小血圧90ミリHgを超える高血圧の患者さんがニンニクを摂取すると、最大血圧と最小血圧がいずれも約9〜6ミリHgほど下がると報告されています。これは、強力な抗炎症作用、抗酸化作用、血管拡張作用を持つアリイン、アリシン、S-アリル-L-システインなどによる効果です。

一方、生のニンニク、調理したニンニクなど、ニンニクの適正な摂取量は明らかになっていません。生のニンニクや調理したニンニクを大量に摂取したり、ニンニクのサプリメントを高用量で摂取したりすると、人体に悪影響が出る可能性があると指摘されているのです。

今回の試験では、生のニンニクよりも有機硫⻩化合物が多く、生のニンニクには見られないポリフェノールが含まれている熟成黒ニンニクを研究の対象としています。熟成によって増加したS-アリルシステインやメラノイジンなどを含む熟成黒ニンニクは血流を改善して、酸化ストレスを軽減すると考えられています。

試験に参加したのは、グレードIに該当する軽度の高血圧(最大血圧140〜159ミリ Hg、最小血圧90〜99ミリHg)の患者さん89人です。三重盲検、プラセボ対照、ランダム化並行研究として実施された試験は、「導入期間」「実験期」の2つの期間で構成されています。

導入期間では、参加者全員がプラセボを摂取して2週間の血圧の推移を測定。実験期では、参加者を熟成黒ニンニク群とプラセボ群にランダムに分け、それぞれに起床後から朝食の前までに熟成黒ニンニク(熟成黒ニンニク抽出物250mg、うちS-アリルシステイン0.25mg)、プラセボ(マルチデキストリン250mg)を12週間飲んでもらい、血圧の推移を測定しました。なお、試験では、血管内皮機能、一酸化窒素、抗酸化力、炎症性サイトカイン、アンジオテンシン変換酵素活性なども分析されています。

最大血圧・最小血圧のいずれも改善

導入期間を経て、実験期の分析対象となったのは81人でした。血圧はベースラインとなる試験開始時と12週間後にオフィスで測定。さらに、参加者には自宅で毎日血圧を測定してもらいました。

その結果、熟成黒ニンニク群では、自宅で測定した最大血圧と最小血圧がそれぞれ1.8ミリHg、1.5ミリHg低下していました。一方、オフィスで測定した血圧については両群ともに試験前後で大きな変化は認められませんでした。

血管内皮機能の値は、どちらのグループでも変化は観察されませんでした。同様に、血中脂質にも有意な差は認められていません。他方、事後分析では、熟成黒ニンニク群において、一酸化窒素、抗酸化能力の値、インターフェロンγ誘導性サイトカイン(IP-10)が増加し、アンジオテンシン変換酵素活性と血中尿酸レベルが低下したことが示唆されています。

本研究における熟成黒ニンニクの降圧効果は、過去に報告されてきたメタ分析やレビューに比べると小さな変化にとどまっています。著者らは、過去のメタ分析やレビューの対象となった臨床試験の選定に問題がある可能性にふれています。具体的には、試験に使用したニンニクの種類や調理法・加工法などにばらつきがあること、ニンニクの摂取に加えてダイエットなどの追加介入のある研究が分析対象となっていることが挙げられます。

今回の試験のポイントは、0.25mgという低容量のS-アリルシステインの継続摂取によって、副作用や人体への悪影響を引き起こすことなく降圧効果が得られたことです。例えば、硫⻩含有化合物は血液抗凝固作用および抗血小板作用に関与している可能性が指摘されており、手術前の人や抗凝固剤治療を受けている人のニンニクの大量摂取は控えるべきとされています。本研究では、血液凝固に対する影響はないことも確認されています。

効果を検証する難しさも指摘されています。試験では、参加者が服用している薬に違いがありました。これは、熟成黒ニンニクと薬の種類および数の間の相互作用の判断を難しくする一因です。今後、外来での血圧測定を増やして、24時間、さまざまな投与量、投与時間での効果を検証していくことで、熟成黒ニンニク単独の効果が明らかになっていくものと思われます。

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