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間質性膀胱炎の適切な治療を!実態調査で見えてきたハンナ病変確認の重要性

間質性膀胱炎の診断では、ハンナ病変の確認が重要とされています。2019年に改訂された日本の診療ガイドラインでは、ハンナ病変があれば間質性膀胱炎、なければ膀胱痛症候群と診断されることになりました。診断が異なると、患者さんは適切な治療を受けることができません。ハンナ病変を正確に捉えることができるように、医師たちは情報の共有や技術の改善を進めています。“間質性膀胱炎診断の現状”を、不二バイオファーム研究顧問の望月英典が解説します。

診断の決め手は「ハンナ病変」

あなたは、頻尿や膀胱痛に悩まされていませんか。これらの症状をきっかけに泌尿器科を受診した患者さんからは、間質性膀胱炎や膀胱痛症候群といった難病が見つかる可能性があります。医師たちは膀胱内を調べた後、診断名をつけています。

頻尿や膀胱痛を訴える患者さんのうち、膀胱にハンナ病変があれば間質性膀胱炎、ハンナ病変がなければ膀胱痛症候群と診断されます(詳細は、診療ガイドライン参照)。どちらの異変も見つからない場合、ほかの泌尿器疾患の可能性が疑われます。2019年に『間質性膀胱炎診療ガイドライン』が改訂されるまでは、ハンナ病変があればハンナ型、なければ非ハンナ型の間質性膀胱炎という病名がついていました。

各国でガイドラインは異なりますが、日本で現在、間質性膀胱炎の診断の決め手となっているのはハンナ病変です。ハンナ病変は、“膀胱のただれ”と例えられることがあります。膀胱内視鏡を使ってハンナ病変の構造をくわしく観察すると、もつれた毛細血管が異常に増加しています。間質性膀胱炎と膀胱痛症候群は治療法が異なるため、ハンナ病変の見落としには注意が必要です。

診療ガイドラインが改訂された背景には、2014年に実施された「間質性膀胱炎の診療の実態調査」があります。ガイドラインの作成委員長を務める日本赤十字社医療センターの本間之夫院長先生らが、間質性膀胱炎研究会に所属する62ヵ所の医療施設の協力のもと、当時の定義で間質性膀胱炎と診断された患者さんのうち、ハンナ型が占める割合を取りまとめました(※1)。

その結果、ハンナ型が占める割合は45%でした。ハンナ型の割合を医療機関ごとに20%未満・20〜39%・40〜59%・60%〜79%・80%以上といった区分に分類したところ、20%未満の施設は23ヵ所、20〜39%は14ヵ所、40〜59%は16ヵ所、60〜79%は4ヵ所、80%以上は4ヵ所という結果が得られました。

正確な診断に向けて改訂されたガイドライン

間質性膀胱炎の患者数に占めるハンナ型の割合は医療施設ごとに大きく異なることがわかり、本間先生らはハンナ病変の確定診断の難しさを指摘しました。診断基準はあるものの、現場の医師の見解の違いによって見落とされていたハンナ病変があったかもしれないということです。

本間先生らの報告を受け、改訂後の『間質性膀胱炎診療ガイドライン』には診断の精度を上げるための内容がいくつか追加されています。ハンナ病変の多様な種類がわかる内視鏡写真は、一つの例です。また、間質性膀胱炎研究会では、膀胱内視鏡を使ってハンナ病変を観察したときの動画を共有することで、さらなる共通認識の構築が試みられています(※2)。

診療ガイドラインが改訂されたほか、診断法も進歩しています。毛細血管の異常を強調した画像を表示できる「狭帯域光画像強調イメージング」という技術を活用した膀胱内視鏡を使うことで、ハンナ病変の発見率改善が期待できるとのことです(※3)。

参考文献

※1 ジャーナル誌『Translational Andrology and Urology』2015年 「A survey on clinical practice of interstitial cystitis in Japan.」  Yukio Yamada, Akira Nomiya, Aya Niimi, Yasuhiko Igawa, Takaaki Ito, Hikaru Tomoe, Mineo Takei, Tomohiro Ueda, and Yukio Homma

※2 学会誌『間質性膀胱炎研究会誌』2019年1月 「第18回日本間質性膀胱炎研究会 シンポジウム ~HIC vs NHIC~ 2.診断及び鑑別」新美文彩

※3 書籍『間質性膀胱炎・膀胱痛症候群診療ガイドライン』2019年4月 日本間質性膀胱炎研究会、日本泌尿器科学会

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