![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/156756948/rectangle_large_type_2_0ec3413c7a63cc7374e72a3a0dc5eb2c.png?width=1200)
TSUTAYA偏愛アルバム
CDが最早レトロ趣味の一角となったこの大サブスク時代に生きる皆様方には理解し難いだろうが、当時音楽を安価に聞く手段といえばTSUTAYAのレンタルだった。
それがいい時代だったかと言われれば難しいが、とにかく当時はそれしかなかったのだから仕方ない。俺は音楽雑誌で気になるアーティストをメモしてTSUTAYAへ向かい、今自分が聴くべきと感じた5枚を厳選しレンタルし、音楽への造詣を深めていった。
ただ、サブスクとTSUTAYAの大きな違いは「名盤がわからない」というところだ。
サブスクにも色々あるが大抵名盤と呼ばれるものはどれかアーティストのページに飛べば明記されてる。絶対に外れがない、そのアーティストの黄金期の大名盤をセレクトしてくれる。
たた、TSUTAYAではそうはいかない。数あるCDの中からジャケットを見て、少し視聴する程度でそのアーティストの最初の一枚を選ばなければならない。
それによって何が起こるかというと、一見すると「なんでこれを…」と言ったアルバムから入ってしまうことだと思う。
例えば、俺はビートルズで初めて聴いたアルバムはビートルズフォーセールだった。
ビートルズといえばどの曲を聴いても大抵何かしらCMやらなんやらで聴き覚えがあるでお馴染みだが、ビートルズフォーセールの曲は一曲も聴いたことなかった。
今ではビートルズが大好きなので、フォークなビートルズが聴ける異色作として定期的に聴き直すが、当時はこれしか知らなかったので俺の中でのビートルズはフォークバンドだった。
もちろん、「ヘルプ」や「ハードデイズナイト」などの曲名を知らなかったわけではなかった。それなのになぜビートルズフォーセールを選んだのかと言うと俺は「フォーセール」と言うくらいなのだからベスト盤だと思っていたのだ。今でも俺は悪くないと思う。
また、レッドツェッペリンもhouse of holyから入ってしまった。これはジャケがカッコ良すぎた。「きっとヴァンヘイレンのようなかっこいいギターが聴けるのだろう」と思っていた。当時は家で初めてツェッペリンを聴いて、「ハードロックと言ってもあんまり歪まないんだなぁ」と思っていた記憶がある。「あのおじさんが薪を背負ってるアルバムはきっともっと暗いアコギ曲が多いんだろうな」と思ってⅣになど見向きもしなかった。
このような出会いの仕方は洋楽に止まらない。
ゆらゆら帝国も俺はスウィートスポットから入った。
「空洞です」や「ミーのカー」から入れば素直に「やべー!かっけー!」となっただろうに高校生藤箱にはスウィートスポットは早すぎたのでわけがわからなかった。「なんじゃこりゃ」と思いながら聴いていた。ただ、「ロックが好き」と豪語するならゆらゆら帝国を好きじゃなきゃならないという思いもあり、頑張って聞いた。お金払っちゃったし。
ジャズに関してもマイルスやらアートブレイキーやらアーティストの名前を一切知らない状態で、とりあえずTSUTAYAにあるやつから「なんかギターで有名な人のやつ」で選んだので、初めてのジャズで聴いたアルバムがジムホールのアランフェス協奏曲という通好みのアルバムになってしまった。そのせいでジャズ倶楽部入部当初は逆に「めちゃくちゃ詳しい1年生が入ってきた…」と無駄にざわざわさせてしまった。その後すぐに「まいるすでいびすって誰ですか?」と聞いたことで一気におさまった。
このように、俺はTSUTAYAのせいで色んなアーティストを異色作から聴くことになってしまった。
ただ、俺はこの出会に感謝している。何故ならあの時に初めに出会ったからこそたくさん聞いたし、今でもどれも好きなアルバムだからだ。
世間的な評判と逆らって、自分なりの偏愛アルバムが出来たというのは当時ならではだよなーと思う。