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自分を偽り続けると疲れる。「できない」自分も認めたい。

約10年前、某企業に勤めていたとき、上司からグループ会社への常駐を突然告げられた。

仕事内容は「ラウンダー」といって、既存顧客先を訪問して、商材の拡販活動をするもの。営業に近い仕事だ。

人と話すことが苦手だったので、かなり困った。しかも、常駐先は男性従業員ばかり…。

「クライアントを訪問して拡販活動…。常駐先は男性ばかりって、絶対体育会系の人たくさんいるよなぁ…。飲み会とか多そう…。どうコミュニケーション取ったらいいんだろう…」

でも当時、勤めていた会社での仕事や人間関係にすごく悩んでいたので、その環境から抜け出せると思って不安になりながらも常駐の話を受け入れることに。

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勤めていた会社に、男女問わず好かれていて、上司やクライアントからの評判もいい先輩がいた。

上品で明るく、ネガティブなことは言わず、話していて楽しい人だった。

「おとなしいよねー」と言われてばかりだった私は、そんな先輩に憧れていた。先輩みたいな性格だったら人がたくさん寄ってきて、楽しい毎日を送れそう!と。

ある日、その先輩と食事に行く機会があった。

食事のときの先輩は、普段の明るい先輩とは違い、落ち着いていた。

そして、真顔でこう言ってきた。

「飲み会で先輩や上司と話すのって、すごい疲れるんだよねー。ワチャワチャした飲み会とか、本当は嫌なんだー」

驚いた。先輩は、いつも楽しそうに人と接しているのに…。

でも、先輩が言った「疲れるんだよねー」の意味を常駐先で身に染みることになる。


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ラウンダーという仕事をこなし、常駐先の人ともうまくやっていくために憧れの先輩になりきってみることにした。

苦手なコミュニケーションの取り方や話し方、先輩のいいと思うところをとにかく真似した。

すると、常駐先の人から「あなたと話していると楽しいよ!」とか、所属先の人からも「明るくなったね」と言われるように。

ラウンダーの仕事も、たくさん失敗もしたけど何とかこなせた。

飲み会に誘われることも多くなり、毎日が楽しくなってきた。


でも、ある日、よく分からない疲れがどっと押し寄せてきた。突然、「人と関わりたくない」と思ってしまったのだ。

「毎日楽しくなってきたはずなのに、なんでだろう…?」

しばらく理由が分からなかった。

でも、自分と正反対の先輩になりきって、本当の自分を偽り続けたから疲れてきたのかもしれない、と後々になって思った。

もしかしたら、仕事のときに見せていた先輩の「表」の明るい顔も、彼女の「本当の自分」じゃなかったのかもしれない。


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私が好きなイラストレーター・エッセイイスト、益田ミリさんという方の『ふつうな私のゆるゆる作家生活』という本を読んだとき、心が動いた内容がある。

人前で意見を言うのが苦手だった益田さんは、スピーチ教室に通うことを決意し、その授業の一環で受講性の前でスピーチすることになったとき、とても嫌だなと思ったそう。

「人前で話せるようになることは、自分にとって良いことなのか?できない自分も自分。それでいいではないか」と考えたそうだ。


自分の性格で「あんなところを直したい」とか、憧れの人を見て自分に足りないところを見つけて「あんな風になりたい」と思うのはいいことだと思う。

でも、改善したいところや足りないところを直し続けて、完璧な人間になったり、憧れの人になったりすると「自分らしさ」が消えてしまう気がする。

完璧な人間になったって、憧れの人になりきったって「すごいね!」とか「いいね!」と言われる機会は多くなるかもしれないけど、全ての人から必ずしもその完璧さやステキな部分を評価されるわけではない。

改善したいところや足りないところがある「できない自分」も自分。

「できない自分」も認めて、自分らしくいたい。

そして、周りに合わせて自分を偽って付き合い続けるのではなく、「できない自分」を含めて私を良いと言ってくれる人と、付き合っていきたい。

益田さんの本を読んで、そんな風に思った。

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ふじあさ
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